スマホで話してAIに整えてもらう|書くのが苦手な社長の始め方
この記事で変わる経営指標
この記事では、キーボードで文章を打つのが苦手な社長に向けて、スマホに話した言葉をAIに文章に整えてもらう始め方を説明します。一言でいうと、スマホの音声入力で、思ったことをそのまま話して文字にする。その文字をAIに渡し、メール、日報、打ち合わせのメモの形に整えてもらう。送る前に、自分で読んで確かめるという話です。
AIの価値は、話したことを勝手に書き足すことではありません。話し言葉の重なりや言い直しを、読める文章に整える手間を引き受け、社長が打つ時間を、考えることと話すことに使えるようにすることです。
経営への効果は、後回しにしていた文章の仕事が片づくこと
| 打って書く | 話してAIに整えてもらう | |
|---|---|---|
| かかる時間 | 打つ速さに左右される | 話す時間と、確かめる時間 |
| 書く場所 | 机とパソコンの前 | 移動の合間、現場、車を止めたとき |
| 後回し | 疲れていると書かない | 思いついたときに話しておける |
| 文の形 | 自分で整える | AIが整え、自分が直す |
小さな会社の社長は、お客さまへのお礼のメール、社員への指示、打ち合わせの記録など、文章の仕事を多く抱えています。打つのが苦手だと、こうした仕事が夜まで残ります。話して残せれば、思いついたその場で片づけられます。
スマホには、話した言葉を文字にする機能がある
GoogleのGboardのヘルプによると、Androidのスマホでは、文字を入力できるアプリでキーボードの上のマイクのマークを押し、「お話しください」と出たら話すと、話した言葉が文字になります。句読点を入れる方法もあります。ただし、一部の言語では使えず、手順の一部はAndroid 7.0以降で動くとされています。
AppleのiPhoneユーザガイドにも、iPhoneでテキストを音声入力する方法が載っています。どちらも、ふだん使っているメモやメールのアプリで使えます。細かな操作は、自分のスマホの機種のヘルプで確かめてください。
音声入力の文字は、言い直しや「えーと」が混ざり、句読点も足りないことがあります。そのままでは人に送れません。ここをAIに整えてもらいます。
最初は、毎日のひとつの文章から始める
いきなり全部の文章を話して作ろうとすると、続きません。毎日くり返す文章を1つ選びます。
- お客さまへのお礼のメール:訪問や打ち合わせのあとに送る
- 社員への連絡:明日の予定や、頼みたいことを伝える
- 打ち合わせのメモ:決まったこと、次にすることを残す
- 自分の日報:今日したこと、気づいたことを残す
1週間、同じ文章で試し、話してから送るまでの時間が、打って書いていたときと比べてどうかを見ます。
話し方は、誰に、何を、いつまでの順で
話した文字がAIに伝わりやすくなる話し方があります。
- 最初に、何の文章かを言う。 「〇〇さんへのお礼のメール」「明日の予定の連絡」のように、最初に話します
- 誰に、何を、いつまでの順で話す。 順番がそろっていると、AIが整えやすくなります
- 数字と名前ははっきり言う。 日にちや金額、人の名前は、聞き間違えやすい所です。ゆっくり言います
- 言い直してもかまわない。 「いや、違った、木曜日」と言い直しても、AIが整えてくれます。そのかわり、確かめるときに見ます
AIへの頼み方と、返ってくる文はこうなる
話した文字をコピーして、会社で契約したAIのチャットに貼り、次のように頼みます。
下は、私がスマホに話した内容を文字にしたものです。〇〇様へのお礼のメールに整えてください。話した内容だけを使い、言い直しや「えーと」は消してください。日にち、金額、人の名前は、話したとおりに書き、聞き取れていないと思う所は【要確認】と書いてください。丁寧すぎず、ふだんの取引先に送る言葉にしてください。
話した文字(見本。内容は架空です):
〇〇さんにお礼のメール、えーと今日はありがとうございました、見積もりは来週の水曜、いや木曜までに出します、それと現場の写真送ってもらえると助かりますって伝えて
返ってくる文(見本):
〇〇様 本日はお時間をいただき、ありがとうございました。 お見積もりは、来週木曜日までにお送りいたします。 あわせて、現場のお写真をお送りいただけますと助かります。 引き続きよろしくお願いいたします。
送る前に、自分で読んで3か所を確かめる
AIに整えてもらった文は、送る前に必ず自分で読みます。特に次の3か所を見ます。
- 日にちと金額。 音声入力の聞き間違いや、AIの書き違いが一番起きやすい所です
- 人の名前と会社名。 漢字が違っていないかを見ます
- 話していないことが足されていないか。 AIが気をきかせて、約束していないことを書き足していないかを見ます
【要確認】と書かれた所は、自分で直してから送ります。
打ち合わせのメモは、終わった直後に1分で話す
打ち合わせの最中にメモを取るのは大変です。終わってすぐ、車に戻ったときや次の予定までの間に、覚えていることを1分ほど話しておきます。
- 決まったことから話す。 「決まったこと」「相手から頼まれたこと」「こちらがすること」「次に会う日」の順に話します
- AIには、この4つの欄で整えてもらう。 欄がそろっていれば、あとで読み返したときにすぐ分かります
- 相手に送るなら、確かめてから。 打ち合わせの内容を相手と確かめるメールにする場合は、相手の言葉を勝手に足していないかを特に見ます
その日のうちに話しておけば、記憶が新しいうちに残せます。翌日にまとめようとすると、細かいことを忘れます。
話したメモから取引先への確認のメールまで作る方法は、打ち合わせのあとの確認メール|話したメモをAIで整え、その日に送るで説明しています。
慣れたら、社員にも同じやり方を広げる
社長が1か月続けて慣れたら、社員にも同じやり方を勧めます。現場に出ることの多い社員ほど、話して残すほうが続きやすいことがあります。
- 社長が作った頼み方の見本を配る。 自分で使ってうまくいった頼み方の文を、そのまま社員に配ります
- 最初は日報から始めてもらう。 毎日くり返す文章で、間違えても社内で直せるものから始めます
- 確かめる所を伝える。 日にち、金額、名前を確かめてから送ることを、社員にも伝えます
入れてよい話と、入れない話を決めておく
- 会社で契約したAIを使う。 入力をAIの学習に使わない、法人向けのプランで使います
- お客さまの大事な情報は話さない。 口座番号や個人の住所などは、話して入力しません
- 周りに人がいる所では話さない。 電車の中や人の多い場所では、聞かれて困る内容は話しません
社内でAIを使うときの決めごとの作り方は、生成AIの社内ルールの作り方|A4で1枚、社員が安心して使える3つの決めごとで説明しています。
よく使う頼み方は、スキルにして毎回の説明をやめる
ここまでの使い方は、そのつどAIのチャットに頼む場合です。毎日同じ文章を作るなら、もう一段の工夫をしておくと安定します。作る側から見ると、ここが「AIを使う」と「使いこなす」の差です。
頼み方を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、「お礼のメールの型」「社員への連絡の型」「自社の言葉づかい」「書いてはいけないこと(話していない約束、聞き取れていない数字の推測)」をスキルにしておくと、話した文字を貼るだけで整った文が返ってきます。
確かめることは、AIの外に置く。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、聞き取れない所を【要確認】と書かせること、送る前に自分で日にちと金額と名前を確かめることがそれに当たります。
費用は、法人向けプランの月数千円から始められる
スマホの音声入力は、スマホに入っている機能で使えます。AIは、会社で契約した法人向けのプランで、1人あたり月数千円です。仕組みとしてAIを使う場合、話した文字(入力1,500トークンほど)から文(出力600トークンほど)を作るのは、Claude Sonnet 5.5の料金(入力100万トークンあたり2ドル、出力10ドル、1ドル150円で計算)で1回1円ほどです。
明日からは、お礼のメールを1通、話して作る
- スマホのメモのアプリで、マイクのマークを探す
- 今日会った人へのお礼のメールを、誰に、何を、いつまでの順で話す
- 話した文字をAIのチャットに貼り、上の見本の頼み方で整えてもらう
- 日にち、金額、名前を確かめて送る
- 1週間続け、打っていたときより早くなったかを見る
AIを初めて使う社長の最初の1週間の進め方は、生成AIの始め方|使ったことがない社長の最初の1週間、1日ずつの手順で説明しています。
まとめ
- スマホの音声入力で話した言葉を文字にし、AIにメールや日報の形に整えてもらう
- 最初は、毎日くり返す文章を1つ選んで始める
- 何の文章かを最初に言い、誰に、何を、いつまでの順で話す
- AIには話した内容だけを使わせ、聞き取れない所は【要確認】と書かせる
- 送る前に、日にち、金額、名前、話していないことの書き足しを自分で確かめる