鍼灸院の施術録をAIで整える|施術者のメモを欄に分けて残す
この記事で変わる経営指標
この記事では、鍼灸院のAI活用|施術のあとの説明と次回の案内で通い続けてもらうの「施術の記録は、施術者のメモを整える」を、毎日続けられる手順にして説明します。
一言でいうと、施術者が、施術の直後に声やメモで書き留める。AIが、名前を記号に替えたメモを、施術録の欄に分けて整える。施術者が、書いていないことが足されていないかを見る。受付が、保険を使う施術の施術録をほかと区別して5年間保存する。施術の判断と記録の中身は施術者が決めるという形です。
経営への効果は、閉めたあとの書きものを減らし次に生かすこと
施術が続く日は、記録が施術所を閉めたあとに回りがちです。疲れた頭で一日分をまとめて書くと、細かな様子を忘れたり、書き漏らしたりします。
施術の直後に短く書き留め、AIで欄に分けて整えれば、閉めたあとの書きものが減ります。整った記録があれば、次の来院のときに前回の様子をすぐ読み返せます。患者さんは「前のことを覚えてくれている」と感じ、通い続ける理由になります。
受領委任の施術録は、区別して5年間保存する
保険(療養費)を使う施術では、厚生労働省の「受領委任の取扱規程」に施術録の決まりがあります。最終改正が令和8年6月5日の規程を確かめると、21で次のように決まっています。
| 決まり | 中身(受領委任の取扱規程 21より) |
|---|---|
| 区別して整理する | 受領委任に係る施術の施術録を、そのほかの施術録と区別して整理する |
| 遅滞なく書く | 施術者が施術をしたら、必要な事項を遅滞なく記載させる |
| 5年間保存する | 施術が完結した日から5年間保存する |
| 同意書の写しも残す | 患者に係るすべての同意書等の写しも、施術録と合わせて5年間保存する |
21の2では、療養費の受領などの業務で知った患者さんの個人情報を、適切に扱うことも求められています。施術録の様式は、規程では留意事項を参考にするとされています。
受領委任を扱っていない施術所や、保険を使わない施術の記録も、同じ欄で残しておくと、読み返しやすくなります。受領委任の申し出や細かな取扱いは、地方厚生局のページで規程を確かめてください。2026年10月時点の情報です。
施術の記録には、病歴という慎重に扱う情報が入る
e-Gov法令検索で個人情報保護法を確かめると、第2条第3項で、病歴は「要配慮個人情報」に含まれています。施術録には、主な訴えや持病、通っている医療機関など、慎重に扱う情報が入ります。
そのため、AIに渡すときは次の線を守ります。
- 名前、生年月日、連絡先は渡さない。 患者さんは記号に置き換えます
- 会社で契約したAIを使う。 入力をAIの学習に使わない法人向けのプランを使い、個人のアカウントには入れません
- 整えた記録は、施術所の記録の置き場に移す。 AIの画面に残したままにしません
今は、閉めたあとに一日分をまとめて書いている
小さな施術所では、施術者が院長1人ということも多く、施術の合間に記録を書く時間がとれません。紙のカルテに走り書きしておき、閉めたあとに清書する流れになりがちです。
走り書きは、本人にしか読めないことがあります。ほかの施術者が担当したときや、何か月か後に読み返すときに、前の様子が分からなくなります。
書き留め、AIが整え、確かめて、保存する
1 書き留める(施術者)。 施術の直後に、主な訴え、施術した部位と内容、患者さんの様子を、短いメモか声の入力で残します。
2 整える(AI)。 名前を記号に替えたメモを渡し、施術録の欄に分けて整えてもらいます。
3 確かめる(施術者)。 整った記録を読み、メモにないことが足されていないか、言い換えで意味が変わっていないかを見ます。
4 保存する(受付)。 施術所の記録の置き場に移します。保険を使う施術の記録は、ほかと区別して保存します。
施術録の欄は、この6つにそろえる
| 欄 | 中身の例(想定) |
|---|---|
| 来院日と施術者 | 10月26日、施術者A |
| 主な訴え | 右肩から首にかけての張り(患者さんの言葉で) |
| 施術した部位と内容 | はり(部位)、きゅう(部位)、時間 |
| 施術中と施術後の様子 | 施術後に張りが和らいだと話す |
| 気をつけること | 次回までに伝えたこと、医師にかかるよう勧めたかどうか |
| 次回の予定 | 施術者が決めた次の来院の目安 |
主な訴えは、患者さんの言葉のまま残すと、次の来院で比べやすくなります。保険を使う施術では、留意事項の様式に沿って必要な欄を足します。
AIへの頼み方と、返ってくる記録はこうなる
AIに渡す指示(見本):
下は、施術者が施術の直後に残したメモです。施術録の「主な訴え」「施術した部位と内容」「施術中と施術後の様子」「気をつけること」「次回の予定」の欄に分けて整えてください。メモにないことは書き足さず、分からない欄は「記載なし」としてください。効き目の判断や、病名の推測は書かないでください。
返ってくる記録(見本の一部。内容は架空です):
主な訴え:右肩から首にかけての張り。デスク仕事のあとに強くなるとのこと。 施術後の様子:施術後、張りが少し和らいだと話す。 次回の予定:記載なし
メモに次回の予定がなければ、AIは「記載なし」と返します。空いた欄は、施術者が書き足します。
確かめるときは、足された言葉と変わった意味を見る
AIの整えた文は、渡したメモをもとにしています。それでも、言葉を補う中で、メモにない中身が混ざることがあります。
- メモにない症状や部位が入っていないかを見る
- 「改善した」「治った」のような判断の言葉が入っていないかを見る。 様子は、患者さんの言葉と施術者が見たことで書きます
- 医師にかかるよう勧めたかどうかは、施術者が書く。 AIに推し量らせません
記録は、次の来院の前に読み返して使う
施術録は、書いて保存するだけでは役に立ちません。次の来院の前に読み返すと、施術に生かせます。
- 予約の入った患者さんの前回の記録を、朝に読む。 主な訴えと、前回伝えたことを確かめます
- 前回の訴えと、今日の訴えを比べる。 患者さんの言葉で残しておくと、変わったところが分かります
- 次回の予定と来院の間隔を照らす。 施術者が決めた目安より間が空いていれば、次回の案内の参考にします
何回分かの記録をまとめて読み返したいときも、AIに経過を短くまとめさせることができます。そのときも名前は記号のままにし、まとめを読んだ施術者が、元の記録と照らします。
型をスキルにし、記録の中身は施術者が決める
型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、「施術録の6つの欄の型」「メモから欄への分け方の見本」「書いてはいけないこと(メモにない症状、効き目の判断、病名の推測、患者さんの名前)」をスキルにします。
記録の中身は、AIの外で決める。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、名前を記号に替えてから渡すこと、施術者が記録を読んで確かめること、保存と区別を受付が施術所の決まりで行うことがそれに当たります。
費用は、AIの利用料が1回2円ほど
| 費用 | 見込み |
|---|---|
| 記録の整え | メモと指示(入力2千トークンほど)から記録(出力1千トークンほど)を作ると、Claude Sonnet 5.5の料金(入力100万トークンあたり2ドル、出力10ドル、1ドル150円で計算)で1回2円ほど |
| 法人向けプラン | チャットで使うなら1人あたり月数千円 |
| 施術者の時間 | 書き留めと確かめに1人数分(想定) |
必要な人は2役で、記録の中身は施術者が決める
- 施術者:施術の直後に書き留め、AIの記録を確かめ、空いた欄を書き足す
- 受付:記録を置き場に移し、保険を使う施術の記録を区別して保存する
施術者が院長1人の施術所では、2役とも院長が受け持ちます。
1か月で欄の型ができ、毎日の記録に使える見込み
- 1週目:施術録の6つの欄を決め、保険を使う施術の欄を留意事項の様式と照らす
- 2週目:数人分のメモでAIに整えさせ、施術者が確かめる
- 3週目:欄の型と書いてはいけないことをスキルにまとめる
- 4週目以降:毎日の記録に使い、読み返しにくい欄を直す
閉めたあとにまとめて渡すと失敗する
よくある失敗は次の3つです。
- 一日分をまとめてAIに渡す。 患者さんの記録が混ざるおそれがあります。1人ずつ渡します
- 名前のまま渡す。 病歴は慎重に扱う情報です。記号に替えます
- 確かめずに保存する。 メモにない症状が足されたまま残ると、次の施術の判断を誤らせます
まとめ
- 受領委任の取扱規程では、受領委任に係る施術録をほかと区別し、遅滞なく記載し、施術が完結した日から5年間保存する
- 同意書等の写しも、施術録と合わせて5年間保存する
- 病歴は個人情報保護法の要配慮個人情報なので、名前を記号に替えて会社で契約したAIに渡す
- 施術者が直後に書き留め、AIが6つの欄に整え、施術者が足された言葉を確かめる
- 施術の判断と記録の中身は、施術者が決める