解体工事の事前説明の書面|現地調査のメモからAIで下書きする
この記事では、解体工事会社のAI活用|事前説明と近隣への案内で次の工事も頼まれるの「事前説明の書面は、現地調査のメモから下書きする」を、工事ごとに続けられる手順にして説明します。
一言でいうと、担当が現地を調べ、構造と床面積と工程をメモする。AIが、届出の事項ごとの欄に分け、施主に分かる言葉に言い換える。社長が、数字と工程を図面と見積もりと照らす。社長が契約の前に書面を渡して説明する。分別解体の計画と金額は人が決めるという形です。
経営への効果は、施主の納得で契約と着工を早めること
解体を頼む施主の多くは、解体工事を何度も経験していません。何をどの順で壊し、どれだけの廃材が出るのかが分からないまま、見積もりの金額だけを見て判断することになります。
事前説明の書面が分かりやすければ、施主は工事の中身と金額のつながりを理解できます。納得したうえで契約してもらえれば、あとから「聞いていない」という行き違いが減ります。書面を早く作れれば、届出の準備も早く進み、着工の日を守りやすくなります。
法第12条で、契約の前に書面を渡して説明する
e-Gov法令検索で建設リサイクル法(建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律)を確かめると、第12条第1項で、対象の工事を発注しようとする者から直接請け負おうとする建設業者は、発注しようとする者に対し、少なくとも次の事項を書いた書面を渡して説明することになっています。
| 説明する事項(第10条第1項第1号〜第5号) | 解体工事での中身 |
|---|---|
| 第1号 | 解体する建築物等の構造 |
| 第3号 | 工事着手の時期と工程の概要 |
| 第4号 | 分別解体等の計画 |
| 第5号 | 解体する建築物等に用いられた建設資材の量の見込み |
第2号は新築工事などで使う資材の種類なので、解体工事では当てはまりません。これらは、発注者が工事着手の7日前までに都道府県知事に届け出る事項と同じです(第10条)。
第12条第2項では、発注者の承諾を得れば、書面の代わりに電子で渡すこともできます。第3項では、工事を下請に出すときに、届け出た事項を下請の業者に告げることになっています。2026年10月時点の情報です。
分別解体等の計画には、調査の結果と工程の順序を書く
「分別解体等の計画」に何を書くかは、施行規則の第2条に決まりがあります。e-Gov法令検索で確かめた中身は次のとおりです。
- 調べること:建物とその周り、作業する場所、廃材を運び出す経路、敷地に残っている物、吹付け石綿などの付着物の有無
- 計画に書くこと:調べた結果、着工前に行う措置、工程の順序と工程ごとの作業内容と分別解体の方法、廃材の種類ごとの量の見込みと、それが出る建物の部分
- 建築物を壊す順序:建築設備や内装材などの取り外し、屋根ふき材の取り外し、外装材と上の構造の取り壊し、基礎の取り壊しの順
この順序によりがたいときは、その理由も計画に書きます。
東京都の手引では、説明書に別表と図面と工程表を付ける
東京都の「建設リサイクル法書類作成等の手引(民間工事等)」(令和7年6月)には、説明書の参考様式が載っています。説明書の本体には工事の名称と場所を書き、説明の中身は添付資料として、別表、図面、案内図、工程表を付ける形です。解体工事では、建築物の解体工事用の別表を使います。
手引の届出書の書き方には、元請業者から第12条第1項の説明を受けた年月日を書く欄があります。説明が済んでいないと、施主は届出書を書けません。
様式は自治体によって違うことがあり、手引でも提出先の指示に従うよう書かれています。自社の地域の様式は、窓口で確かめてください。
今は、書面を前の工事の使い回しで作っている
小さな解体工事会社では、事前説明の書面を、前の工事の書面を書き換えて作っていることがあります。構造や床面積を書き換え忘れると、届出の中身と食い違います。
また、別表の言葉は専門的で、施主が読んでも分かりにくいものです。説明のときに口で補っても、あとで施主が読み返すと分からなくなります。
調べ、AIが下書きし、照らして、説明する
1 調べる(担当)。 施行規則にある調べることに沿って現地を見て、構造、床面積、作業場所、搬出経路、残っている物をメモします。石綿の調査は、資格を持つ調査者が行います。
2 下書きする(AI)。 メモを渡し、届出の事項ごとの欄に分けてもらいます。あわせて、施主向けの言い換えの文も作らせます。
3 照らす(社長)。 床面積、工程の日付、廃材の量の見込みを、図面と見積もりの記録と1つずつ照らします。
4 説明する(社長)。 契約の前に書面を渡し、施主と一緒に読みながら説明します。説明した日を記録します。
現地調査のメモは、この6つの欄で取る
| 欄 | 中身の例(想定) |
|---|---|
| 構造と床面積 | 木造2階建て、延べ床面積 〇〇㎡ |
| 作業場所 | 重機を置ける場所、隣の建物との距離 |
| 搬出経路 | 前の道路の幅、車両の出入り口 |
| 残っている物 | 家具、家電、物置の中身 |
| 付着物 | 石綿の調査者の結果を写す欄 |
| 工期の希望 | 施主が希望する着工と完了の時期 |
残っている物は、建物の廃材とは別に片付けが要ります。誰が片付けるかを、説明の前に施主と決めておきます。
AIへの頼み方と、返ってくる下書きはこうなる
AIに渡す指示(見本):
下は、解体工事の現地調査のメモです。建設リサイクル法第12条の事前説明の書面の下書きを、「構造」「工事着手の時期と工程の概要」「分別解体等の計画」「建設資材の量の見込み」の欄に分けて作ってください。各欄に、施主向けの言い換えを1〜2文添えてください。数字はメモのとおりに書き、メモにない数字は「〇〇」と空けてください。石綿の有無は書き足さないでください。
返ってくる下書き(見本の一部。内容は架空です):
分別解体等の計画:建築設備・内装材の取り外し(手作業)、屋根ふき材の取り外し(手作業)、外装材と上部構造の取り壊し(手作業と機械)、基礎の取り壊し(手作業と機械)の順に行います。 施主向けの言い換え:家の中の設備や内装から順に手で外し、木やコンクリートを種類ごとに分けて運び出します。最後に基礎を壊します。
照らすときは、床面積と日付と量を図面と見る
AIの下書きは、渡したメモをもとにしています。それでも、言葉を補った部分に、メモにない中身が混ざることがあります。
- 床面積は、図面と照らす。 届出の対象かどうかの判断にもかかわります
- 工程の日付は、工程表と照らす。 着工の7日前までの届出に間に合うかも確かめます
- 廃材の量の見込みは、見積もりの記録と照らす。 金額の根拠と食い違わないようにします
- AIが足した作業や資材がないかを見る
説明の場では、施主と一緒に読み、聞かれたことを残す
書面は、渡すだけでなく、施主と一緒に読むと伝わります。
- 言い換えの文を先に読む。 専門の言葉の欄は、言い換えを読んでから見てもらいます
- 金額との関係を話す。 分別して運び出す手間が、見積もりのどこに入っているかを説明します
- 聞かれたことを記録する。 答えられなかったことは、後日の答えとして社長が書面で返します
説明した日は、施主が届出書に書く日にもなります。施主に伝えておくと、届出の準備が進みます。
下請に出すときは、届け出た事項を告げる
第12条第3項では、元請の業者が工事を下請に出すとき、届け出た事項を下請の業者に告げることになっています。東京都の手引には、告知書の参考様式もあります。
事前説明の書面を作るときの欄をそろえておけば、告知書にも同じ中身を使えます。AIに、説明の書面から告知書の形に写させ、社長が照らしてから渡します。
型をスキルにし、計画と金額はAIの外で決める
型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、「事前説明の書面の欄の型」「施主向けの言い換えの見本」「書いてはいけないこと(メモにない数字、石綿の有無の書き足し、金額)」をスキルにします。
計画と金額は、AIの外で決める。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、メモにない数字を空けさせること、床面積と日付と量を社長が記録と照らすこと、分別解体の計画と金額を社長が決めることがそれに当たります。
費用は、AIの利用料が1回4円ほど
| 費用 | 見込み |
|---|---|
| 書面の下書き | 調査のメモと指示(入力4千トークンほど)から下書き(出力2千トークンほど)を作ると、Claude Sonnet 5.5の料金(入力100万トークンあたり2ドル、出力10ドル、1ドル150円で計算)で1回4円ほど |
| 法人向けプラン | チャットで使うなら1人あたり月数千円 |
| 社長の時間 | 照らし合わせに1件数十分(想定) |
必要な人は2役で、計画と金額は社長が決める
- 担当:現地を調べてメモを取り、AIに下書きさせる
- 社長:分別解体の計画と金額を決め、下書きを照らし、施主に説明する
施主の名前や住所は、AIに渡さず、社長が書面に入れます。
次の工事から、メモの型を使える見込み
- 1週目:現地調査のメモの6つの欄を決める
- 2週目:最近の工事のメモでAIに下書きさせ、前の書面と比べる
- 3週目:欄の型と言い換えの見本をスキルにまとめる
- 4週目以降:次の工事から使い、施主に聞かれたことで言い換えを直す
前の書面の使い回しで、届出と食い違うと失敗する
よくある失敗は次の3つです。
- 構造や床面積を書き換え忘れる。 届出の中身と食い違います
- 契約のあとで説明する。 説明は、請け負おうとする段階で行います
- 残っている物の片付けを決めない。 着工の直前にもめる原因になります
まとめ
- 建設リサイクル法第12条で、直接請け負おうとする業者は、構造、工事着手の時期と工程、分別解体等の計画、資材の量の見込みを書いた書面を渡して説明する
- 分別解体等の計画には、施行規則第2条で、調査の結果、工程の順序と方法、廃材の量の見込みを書く
- 担当が現地を調べ、AIが欄に分けて施主向けに言い換え、社長が図面と見積もりと照らす
- 説明した日は、施主が届出書に書く日になる
- 分別解体の計画と金額、石綿の有無の判断は、人が行う