長いPDFはAIに要約させる前に質問を決める。公募要領や契約書の読み方
この記事で変わる経営指標
この記事では、補助金の公募要領、取引先の契約書や仕様書のような長いPDFを、AIに読ませて仕事に使う方法を説明します。一言でいうと、「要約して」と頼む前に、自社に当てはめた質問を5つ決める。資料は章ごとに分けて渡し、答えには根拠のページ番号を書かせる。人は、そのページを原本で開いて確かめるという形です。
AIの価値は、資料を読む仕事を代わりにすることではありません。何十ページの中から、自社に関係する数ページを早く見つけ、読み落としを減らすことです。
長い資料は、要約させるより質問を決めて渡すほうが役に立つ
長いPDFをAIに渡して「要約して」と頼むと、きれいなまとめが返ってきます。ただ、そのまとめは資料の全体をならしたもので、自社に関係するところが入っているとは限りません。
たとえば補助金の公募要領なら、知りたいのは「この制度の概要」ではなく、「うちの会社は対象になるか」「締切はいつか」「何の書類がいるか」です。取引先の契約書なら、「支払いはいつか」「途中でやめるときの決まりはあるか」「秘密の扱いはどうなっているか」です。
要約を読んでから質問を考えるより、読む前に質問を決めてAIに渡すほうが、早く、漏れなく、必要なところにたどり着けます。
経営への効果は、読む時間より読み落としを減らすこと
長い資料を読む時間が減るのは、目に見える効果です。仮に、50ページの公募要領を社長が2時間かけて読んでいたものが、質問の答えと根拠のページを30分で確かめる形になれば、1回90分が浮きます。
ただ、大きいのは時間ではありません。公募要領の対象の条件を読み落として申請が通らない、契約書の支払いの条件を見落として資金繰りが苦しくなる、仕様書の検査の決まりを見落として手直しが出る。長い資料の読み落としは、あとで大きな損になって返ってきます。質問を決めて読ませ、答えを原本で確かめる手順は、この読み落としを減らします。
AIは、PDFの文字だけでなく表や図も読める
Anthropic社の説明では、ClaudeにPDFを渡すと、各ページの文字を取り出すとともに、ページを画像にして、文字と画像の両方から内容を読みます。そのため、PDFの中の表やグラフ、図についても質問できます。
Claudeのヘルプセンター(2026年10月14日時点)では、チャットに渡すファイルの決まりが次のように書かれています。
- 1回の会話に渡せるファイルは20個まで
- PDFは1000ページまで
- 100ページ以下のPDFは、文字に加えて図や表、画像も読む。101〜1000ページのPDFは文字だけを読み、図や表は読まない
- Wordのような、PDF以外の文書は文字だけを読み、中に貼った画像は読まない
つまり、100ページを超える資料や、図や表に大事な情報がある資料は、章ごとに分けてPDFで渡すほうが確実です。Anthropic社の説明でも、大きな資料は分けて渡すことを勧めています。
質問は、自社に当てはめて答えが決まる形にする
AIに渡す質問は、次の3つを守ると、答えが確かめやすくなります。
- 自社のことを書く。 「対象は誰ですか」ではなく、「従業員20人の製造業の会社は対象になりますか」と聞きます。会社の基本の情報は、毎回会社の説明をしない。AIに会社の資料と決まりを一度だけ渡す方法のように一度まとめておくと、毎回書かずに済みます
- 答えが決まる形にする。 「はい・いいえ・資料に書いていない」のどれかと、その理由で答えてもらいます。「資料に書いていない」と答えてよいと書いておくと、AIが推測で埋めるのを防げます
- 数は5つまでにする。 大事な質問を5つに絞ると、確かめる手間も絞れます。足りなければ、答えを読んでから足します
頼み方の見本は、次のとおりです。
添付の公募要領を読み、次の5つに答えてください。それぞれ「はい・いいえ・資料に書いていない」のどれかと、根拠のページ番号(PDFのページ番号)と、その部分の文をそのまま書いてください。資料に書いていないことは推測しないでください。
- 従業員20人の製造業の会社は対象になりますか
- 申請の締切はいつですか
- 必要な書類は何ですか
- 対象にならない費用は何ですか
- 採択されたあと、報告しなければならないことは何ですか
答えには必ずページ番号を書かせ、原本で確かめる
AIの答えは、もっともらしく間違うことがあります。だから、答えには根拠のページ番号と、その部分の文をそのまま書かせます。 人は、そのページを原本で開き、書いてあることと答えが合っているかを確かめます。
ページ番号は、資料に印刷されている番号ではなく、PDFを開いたときのページの番号で指すのが確実です。Anthropic社の説明とヘルプセンターのどちらにも、ページを指すときはPDFビューアーで表示される番号を使うよう書かれています。表紙や目次がある資料では、印刷されたページ番号とずれるためです。
確かめ方の決まりは、AIの答えの間違いを社員が見つける。仕事で使う前に決める確かめ方にまとめています。
長い資料は章ごとに分け、表のデータは表のまま渡す
資料の渡し方でも、答えの質が変わります。
- 長い資料は章ごとに分ける。 100ページを超える資料は、関係する章だけを切り出して渡します。図や表を読んでもらえるうえ、AIが関係のない章に引っぱられにくくなります
- 表のデータは表のまま渡す。 見積や単価の一覧のような表は、PDFを画像にするより、表計算のファイルのまま渡すほうが数字を読み違えにくくなります
- 古い版を混ぜない。 公募要領は回ごとに中身が変わります。今回の版だけを渡し、ファイル名に版や日付を入れておきます
公募要領なら、対象と締切と必要書類を先に聞く
使い方の例として、補助金の公募要領を読む場合の流れを示します(想定の手順です)。
- 今回の公募要領のPDFを、公式のページから取ってくる
- 対象の条件、締切、必要な書類、対象にならない費用、採択後の報告の5つを質問にする
- AIの答えと根拠のページを、原本で確かめる。対象の条件で「資料に書いていない」と出たものは、窓口や支援してくれる専門家に聞く
- 確かめた答えを、社内の表に1行ずつ残す
補助金の制度そのものの考え方は、AIの導入に補助金は使える?対象になるもの・ならないものを先に知るで説明しています。
契約書は、AIに読ませても判断は人と専門家が行う
取引先の契約書や仕様書も、同じ手順で読めます。支払いの時期、契約を途中で終えるときの決まり、秘密の扱い、損害を負うときの範囲、検査の決まりのように、自社にとって大事な点を質問にします。
ただし、その条件を受け入れてよいかの判断は、AIに任せません。 AIは「どこに何が書いてあるか」を早く見つける道具で、条件が自社に不利かどうか、直してもらうよう頼むかどうかは、社長と、必要なら弁護士のような専門家が決めます。
また、契約書や取引先の資料は、外に出してはいけない情報です。入力をAIの学習に使わない、会社で契約したプランで扱います。選び方はAIを契約する前に確かめること。会社の情報が学習に使われない契約を選ぶにまとめています。
仕組みに組み込むと、1回の読み込みは数十円から
社員がチャットで使う場合は、会社で契約したプランの料金の中で使えます。社内の仕組みに組み込み、決まった種類の資料を毎回同じ質問で読ませる場合は、読ませた量で利用料がかかります。
Anthropic社の説明では、PDFは1ページあたり、文字の分で1,500〜3,000トークン(AIが文字を数える単位)ほどになり、これにページの画像の分が加わります。2026年10月7日時点のClaude(Sonnet 5.5)の公式料金は、読ませる量100万トークンあたり2ドルなので、50ページの資料なら、文字の分だけで1ドル150円として約23〜45円です。仕組みを作るかどうかは、同じ種類の資料を毎月どれだけ読むかで決めます。
頼み方の見本を社内で配り、同じ質問を使い回す
同じ種類の資料を何度も読むなら、質問を見本として残し、社内で使い回します。
- 公募要領の5つの質問
- 取引先の契約書の5つの質問
- 仕様書や発注書の5つの質問
見本があれば、誰が読んでも同じところを確かめられます。新しく見つけた大事な点は、見本に足していきます。
最初の一歩は、手元の長い資料を1つ選んで5つ質問すること
明日からできることは、次の3つです。
- 手元にある、読むのが面倒で後回しにしている長いPDFを1つ選ぶ
- 自社に当てはめた質問を5つ書き、根拠のページ番号と文をそのまま書くよう頼む
- 答えのページを原本で開いて確かめ、合っていたか、読み落としが見つかったかを記録する
1つの資料で手順を試し、うまくいった質問を見本にするところから始めます。
まとめ
- 長い資料は「要約して」と頼む前に、自社に当てはめた質問を5つ決める
- AIはPDFの文字だけでなく表や図も読むが、ヘルプセンターでは100ページを超えると文字だけになるとされる。長い資料は章ごとに分けて渡す
- 答えには根拠のページ番号と文をそのまま書かせ、人が原本のページで確かめる
- 契約書の条件を受け入れるかの判断は、AIに任せず社長と専門家が行う。資料は学習に使われないプランで扱う
- うまくいった質問を見本にして、社内で使い回す