応募書類と面接の質問の点検|集めてはいけない情報をAIで探し、社長が直す
この記事で変わる経営指標
この記事では、面接は自由に聞くより決めた質問で|採用のミスマッチを防ぐ評価基準の「面接で聞いてはいけないことも、前もって外しておく」を、応募書類と面接の質問を点検する手順にして説明します。
一言でいうと、担当が、自社の応募用紙、エントリーシート、面接の質問の一覧を集める。AIが、集めてはいけない情報に当たりそうな欄や質問に印を付ける。社長が、印の所を消すか直すかを決める。担当が書類を直し、面接官にも伝える。採否の判断は人が行うという形です。
経営への効果は、応募者の信頼を失わず、法令違反を防ぐこと
小さな会社では、昔から使っている応募用紙やエントリーシートを、見直さないまま使っていることがあります。家族の欄や、本籍、尊敬する人物を書かせる欄が残っていると、応募者は不安を感じ、応募をやめてしまうかもしれません。
書類と質問を一度点検しておけば、法令に反する集め方を防げるうえ、応募者に安心して応募してもらえます。人手が足りない時代に、応募者から選ばれる会社であることは大きな強みです。
職業安定法で、集めてよいのは業務の目的に必要な範囲
e-Gov法令検索で職業安定法を確かめると、第5条の5で、人を募集する会社は、応募者の個人情報を集め、保管し、使うときは、業務の目的の達成に必要な範囲で、目的を明らかにして集め、その目的の範囲で保管し使わなければならないとされています。本人の同意がある場合や、その他の正当な理由がある場合は除かれます。個人情報を適正に管理する措置もとらなければなりません。
島根労働局の資料によると、この法律に基づく指針(平成11年労働省告示第141号)で、次の個人情報は原則として集めてはならないとされています。
| 区分 | 例 |
|---|---|
| 社会的差別の原因になるおそれのある事項 | 人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地、家族の職業や収入、本人の資産など |
| 思想と信条 | 人生観、生活信条、支持政党、購読新聞や雑誌、愛読書など |
| 労働組合への加入状況 | 労働運動、学生運動、消費者運動などに関する情報 |
違反すると、職業安定法に基づく改善命令が出されることがあると、資料に書かれています。2026年10月時点の情報です。
応募書類は、国の様式例に寄せると迷いが減る
島根労働局の資料では、適正な応募書類として、一般の求職者には「厚生労働省履歴書様式例」を挙げています。新卒の中学生や高校生には、決まった用紙以外の書類を出させないよう求めています。
自社で独自の応募用紙やエントリーシートを使う場合は、国の様式例にない欄が入っていないかを見ます。ない欄があれば、その欄が業務の目的に本当に必要かを考えます。資料では、採用選考のときの健康診断も、適性と能力を判断するうえで合理的かつ客観的に必要な場合を除いて行わないよう求めています。
今は、昔の用紙と面接官の思いつきの質問が残っている
小さな会社では、応募用紙を何年も前に作ったまま使っていたり、面接官がその場で思いついた質問をしたりしています。「ご両親は何をされていますか」「尊敬する人は」といった質問は、悪気なく出てしまいます。
書類と質問の一覧をAIに読ませれば、集めてはいけない情報に当たりそうな所に、短い時間で印を付けられます。
集め、AIが照らし、決めて、直す
1 集める(担当)。 応募用紙、エントリーシート、面接の質問の一覧、面接のメモの型を集めます。
2 照らす(AI)。 集めた書類と、集めてはいけない情報の一覧を渡し、当たりそうな欄や質問に印を付けてもらいます。
3 決める(社長)。 印の所を、消すか、聞き方を直すかを決めます。迷う所は労働局に確かめます。
4 直す(担当)。 書類を直し、面接官に「聞かないこと」を伝えます。
AIに渡す一覧は、この4つの区分でそろえる
| 区分 | 印を付ける例 |
|---|---|
| 本人に責任のない事項 | 本籍、出生地、家族の職業や収入、住宅の状況、生活環境 |
| 本来自由であるべき事項 | 宗教、支持政党、人生観、尊敬する人物、思想、購読新聞、愛読書 |
| 労働組合や社会運動 | 労働組合への加入、学生運動 |
| 業務に要るか分からない欄 | 健康の状態、身長や体重、写真の指定 |
最後の区分は、法令に反するとは限りません。業務に本当に要るかを、社長が考えるための印です。
AIへの頼み方と、返ってくる印はこうなる
AIに渡す指示(見本):
下は、当社の応募用紙の欄と、面接で聞く質問の一覧です。それぞれの欄と質問が、下の4つの区分のどれかに当たりそうなら、区分の名前と、なぜそう思うかを一言で書いてください。当たらないものは「なし」と書いてください。法律に反するかどうかの判断は書かないでください。
返ってくる印(見本の一部。内容は架空です):
| 欄・質問 | 区分 | 一言 |
|---|---|---|
| 家族構成と職業 | 本人に責任のない事項 | 家族の職業を書かせている |
| 尊敬する人物は | 本来自由であるべき事項 | 思想や信条にかかわる |
| 志望の理由 | なし |
確かめるときは、見落としと言い換えを見る
AIの印は、手がかりです。最後は社長が書類を読んで決めます。
- AIが「なし」とした欄も、ひととおり読む。 言い方を変えた質問は見落とされることがあります
- 言い換えの質問に気をつける。 「休みの日は何をしていますか」から、宗教や政治の話に広がることがあります
- 面接のメモの型も見る。 面接官が家族のことなどを書き込む欄がないかを確かめます
- 迷う所は、労働局の窓口に確かめる
面接の質問の決め方と評価の目安は、面接の評価シートと記録のまとめ方|面接官ごとの評価のばらつきを直すで説明しています。
応募者のことは、本人から直接、目的を伝えて集める
島根労働局の資料では、個人情報を集めるときは、何に使うかを応募者が想定できる程度に具体的に示し、本人から直接集めるよう求めています。本人以外から集めるときは、本人の同意が要ります。
- 応募用紙に、集めた情報の使い道を書く。 採用選考のためであることなどです
- 前の勤め先や知人に、本人の同意なく問い合わせない
- 応募者のSNSや住んでいる所を調べない。 資料では、こうした調査が就職差別につながるおそれがあるとしています
- 不採用の人の書類の扱いを決めておく。 いつ、誰が、どう処分するかを社長が決め、担当が守ります
- 書類を置く場所と見られる人を決める。 面接官と採用の担当に限ります
点検の型をスキルにし、採否はAIの外に置く
型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、「4つの区分の一覧」「印の付け方の指示」「書いてはいけないこと(法律に反するかの断定、応募者の名前や中身)」をスキルにします。
採否は、AIの外に置く。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、社長が印の所を決めること、迷う所を労働局に確かめること、採否を面接官と社長が決めることがそれに当たります。応募者の書類そのものはAIに渡しません。
費用は、AIの利用料が点検1回で数円
| 費用 | 見込み |
|---|---|
| 書類と質問の点検 | 書類の欄と質問と指示(入力3千トークンほど)から印の表(出力1千トークンほど)を作ると、Claude Sonnet 5.5の料金(入力100万トークンあたり2ドル、出力10ドル、1ドル150円で計算)で1回2円ほど |
| 法人向けプラン | チャットで使うなら1人あたり月数千円 |
| 社長の時間 | 印を見て決めるのに数十分(想定) |
必要な人は2役で、直すかは社長が決める
- 社長:印の所を消すか直すかを決め、面接官に聞かないことを伝える
- 採用の担当:書類と質問を集め、AIに印を付けさせ、書類を直す
1週間で書類と質問が直り、次の募集から使える見込み
- 1日目:応募用紙、エントリーシート、面接の質問、メモの型を集める
- 2日目:AIに印を付けさせ、社長が決める
- 3日目から:書類を直し、厚生労働省履歴書様式例と見比べる
- 次の募集から:面接官に聞かないことを伝え、年に1回点検する
昔の用紙をそのまま使うと失敗する
よくある失敗は次の3つです。
- 何年も前の応募用紙を見直さない。 家族や本籍の欄が残っていることがあります
- 面接官がその場で質問を考える。 悪気なく、聞いてはいけないことを聞いてしまいます
- 応募者の書類そのものをAIに渡す。 点検に要るのは欄と質問の一覧だけです
まとめ
- 職業安定法第5条の5で、応募者の個人情報は、業務の目的の達成に必要な範囲で、目的を明らかにして集め、保管し、使う
- 指針では、本籍や出生地、家族の職業、思想信条、労働組合への加入状況などは、原則として集めてはならない
- 応募書類は厚生労働省履歴書様式例に寄せ、独自の欄は業務に必要かを考える
- AIで書類と質問に印を付け、消すか直すかは社長が決める
- 応募者の書類そのものはAIに渡さず、採否は人が決める