業務への組み込み例

融資の面談で詰まらない。銀行から聞かれそうな質問をAIが挙げ、社長が答えを準備

この記事で変わる経営指標

この記事では、銀行に出す事業計画書をAIで下書きする。数字は試算表から計算で出すの「銀行から聞かれそうな質問は、AIに挙げさせて答えを準備する」を、手順として説明します。

一言でいうと、融資の相談の前に、事業計画書の下書き、試算表、過去の決算、資金の使い道を集める。毎月の返済額と、売上が見込みより下がったときの返済の余力は表計算で出す。AIが銀行から聞かれそうな質問の一覧と、それぞれに要る資料を下書きする。社長が自分の言葉で答えを準備し、税理士と練習するという形です。面談の場で詰まらず、計画の弱いところを先に見つけるための準備です。

融資の面談では、計画の根拠を社長の口で説明する

親の記事で触れたとおり、融資の相談で使う事業計画書には、事業の概要、これまでの実績、これからの計画とその根拠、費用の見込み、資金の使い道、返済の見通しを書きます。

計画書を出したあとの面談では、銀行の担当者から、その中身について質問を受けるのが一般的です。計画書は税理士の手を借りて作れても、面談で質問に答えるのは社長です。「新しい取引先との取引は確定していますか」と聞かれて、社長が自分の言葉で、根拠となる資料とともに答えられるかどうかで、計画への信頼が変わります。

今は面談の準備が、計画書を読み返すだけで終わっている

多くの小さな会社では、融資の面談の準備が次のようになっています。

  1. 税理士と一緒に計画書を作る
  2. 面談の前に、社長が計画書を読み返す
  3. 面談で、思っていなかった角度から質問され、その場で答えに詰まる
  4. 「確認して後日お答えします」となり、話が先に延びる

計画書を作った本人には、計画の弱いところが見えにくいものです。外から読んだ人が何を疑問に思うかを、先に知っておく必要があります。

集め、数字を出し、AIが質問を挙げ、社長が答える

融資の相談の前に、事業計画書の下書き、試算表、過去の決算、資金の使い道を集め、毎月の返済額と、売上が見込みより下がったときの返済の余力は表計算で出す。AIが銀行から聞かれそうな質問の一覧と、それぞれに要る資料を下書きし、社長が自分の言葉で答えを準備し、税理士と練習する
融資の相談の前に、事業計画書の下書き、試算表、過去の決算、資金の使い道を集め、毎月の返済額と、売上が見込みより下がったときの返済の余力は表計算で出す。AIが銀行から聞かれそうな質問の一覧と、それぞれに要る資料を下書きし、社長が自分の言葉で答えを準備し、税理士と練習する

手順は4つの段でできています。

1. 集める:計画書の下書きと、試算表と決算と、資金の使い道を集める。 面談の前に、次のものを1つにまとめます。

  • 事業計画書の下書き
  • 今期の試算表と、過去の決算書
  • 資金の使い道の明細(設備の見積、運転資金の内訳)
  • 売上の見込みの根拠(取引先との話の状況、受注の見込み)

2. 計算する:返済額と、売上が下がったときの余力を表で出す。 ここは計算の仕事です。AIには数字を出させません。

  • 借りる額と期間と金利の見込みから、毎月の返済額を表計算で出します
  • 計画どおりの売上のとき、売上が見込みより1割、2割下がったときのそれぞれで、返済に回せるお金がいくら残るかを出します
  • 計画書の数字と、試算表や決算書の数字が合っているかを照らします

3. 質問を挙げる:AIが聞かれそうな質問と、要る資料を一覧にする。 AIに、計画書と数字の表を渡し、銀行の担当者の立場で読んだときに出てきそうな質問を挙げてもらいます。あわせて、それぞれの質問に答えるのに要る資料を書かせます。

  • 売上の見込みの根拠に関する質問(取引先、受注の確かさ)
  • 資金の使い道に関する質問(設備でどれだけ売上や費用が変わるか)
  • 返済に関する質問(売上が見込みに届かなかったときにどうするか)
  • これまでの実績に関する質問(売上や利益が大きく動いた年の理由)

4. 準備する:社長が自分の言葉で答えを用意し、税理士と練習する。 社長が、それぞれの質問に自分の言葉で答えを考え、要る資料をそろえます。答えられない質問が見つかったら、それが計画の弱いところです。税理士に銀行の担当者の役をしてもらい、一度練習すると、本番で落ち着いて答えられます。

質問は厳しめに挙げさせ、答えは社長が考える

この手順で役に立つ質問の一覧が出るかどうかは、AIへの頼み方で決まります。

質問は、厳しめに挙げさせる。 「この計画書を、融資を慎重に判断する立場で読み、疑問に思う点を挙げてください。甘い見込みや、根拠が書かれていない点を特に挙げてください」と頼みます。やさしい質問ばかりでは、準備になりません。

答えは、社長が考える。 AIに答えの下書きを作らせることもできますが、銀行に話すのは社長です。AIの答えをそのまま覚えると、少し角度を変えて聞かれたときに詰まります。答えは社長の言葉で用意します。

数字は、表から。 返済額や余力の数字は表計算で出したものを使い、AIには計算させません。AIが質問の中で数字に触れていても、答えの数字は表で確かめます。

過去に融資の面談で実際に聞かれた質問を記録しておけば、次の相談のときに見本として渡せます。見本の渡し方はAIの文が毎回ばらつくなら、良い見本を3つ見せる。言葉で説明するより早いで説明しています。

答えられない質問は、計画を直すきっかけになる

質問の一覧を作ると、社長が答えに詰まる質問が見つかることがあります。たとえば、「新しい取引先との取引は確定していますか」に、確かな答えがない場合です。

これは悪いことではありません。面談の前に見つかれば、計画を直すことができます。

  • 取引が確定していないなら、売上の見込みを確定している分だけにした計画も用意する
  • 設備の効果が説明できないなら、設備を入れたあとの作業の時間や受注の数の見込みを、根拠とともに書き足す
  • 売上が下がったときの返済の余力が小さいなら、借りる額や期間を見直す

計画を直すときは、数字を税理士に確かめてもらいます。

社長の仕事は、答えを考え、計画を見直すことになる

この手順を使うと、面談の準備は次のように変わります(想定です)。

今まで この手順を使ったあと
準備 計画書を読み返すだけ 質問の一覧に答えを用意する
面談 思っていない質問に詰まる 聞かれそうなことに資料と答えがある
返済の説明 計画どおりのときだけ 売上が下がったときの余力も示せる
計画の弱いところ 面談で初めて気づく 面談の前に見つけて直す
練習 しない 税理士と一度練習する

経営への効果は、資金の相談を早く進め、信頼を得ること

この手順は、融資の相談のたびに使うものです。時間で見ると、面談の準備に社長が1日かけていたものが、質問の一覧を見て答えを考える半日になる、といった程度の変化です(想定です)。

大きいのは時間ではありません。面談で根拠とともに答えられれば、「確認して後日お答えします」が減り、相談が早く進みます。資金が必要な時期に間に合うかどうかは、会社にとって大事なことです。そして、計画の弱いところを面談の前に見つけて直せれば、計画そのものの質が上がります。融資を受けたあと、計画と実績の差を毎月出して銀行に報告する仕組みは、事業計画と実績の差を毎月知る。試算表から銀行への報告をAIで下書きする仕組みで説明しています。

費用は小さく、AIの利用料は1回10円ほど

この手順は、会社で契約したAIのチャットで進められます。特別な仕組みを作る必要はありません。

AIの利用料の目安は、次のとおりです。2026年10月7日時点のAnthropic社のClaude(Sonnet 5.5)の公式料金は、読ませる量100万トークン(AIが文字を数える単位)あたり2ドル、書かせる量100万トークンあたり10ドルです。計画書と数字の表で20,000トークンを読ませ、質問の一覧で3,000トークンを書かせると見積もると、0.07ドル、1ドル150円で約10円です。会社で契約したプランのチャットで使うなら、追加の費用はかかりません。

必要な人は2役で、答えるのは社長

役 誰が すること 時間
答えを準備する人 社長 質問に自分の言葉で答えを考え、資料をそろえる 半日
数字を確かめ、練習の相手をする人 税理士 数字を確かめ、銀行の担当者の役で練習の相手をする 1時間

いちばん大事なのは、社長が自分の言葉で答えることです。

1回目の相談で質問の一覧が育ち、次の相談に生きる見込み

目安は次のとおりです。

時期 見込み
1回目の相談 質問の一覧を作り、答えを準備する。面談で実際に聞かれた質問を記録する
2回目以降の相談 記録した質問を見本として渡し、一覧を育てる
融資のあと 計画と実績の差の報告の準備にも、同じ考え方を使う

効果を確かめるには、次の2つを記録します。

  • 面談で「後日お答えします」となった質問の数:少なくなったかを見ます
  • 相談から融資の決定までの日数:早くなったかを見ます

数字や答えをAIに任せると失敗する

よくある失敗は次の4つです。

  • 返済額や余力をAIに計算させる。 数字は表計算で出し、税理士に確かめてもらいます
  • AIの答えをそのまま覚える。 少し角度を変えて聞かれると詰まります。答えは社長の言葉で用意します
  • やさしい質問しか挙げさせない。 厳しめに読む立場で質問を挙げさせます
  • 答えられない質問を放っておく。 計画を直すきっかけにします

決算書や取引先の情報は、外に出してはいけない情報です。会社で契約した、入力をAIの学習に使わないプランで扱い、社内の決まりに書いておきます。決め方は社員が安心してAIを使える会社にする、A4で1枚の社内ルールにまとめています。

まとめ

  • 融資の相談の前に、計画書の下書き、試算表、過去の決算、資金の使い道を集める
  • 毎月の返済額と、売上が見込みより下がったときの返済の余力は表計算で出し、AIには計算させない
  • AIに厳しめの立場で質問を挙げさせ、それぞれに要る資料を一覧にする
  • 社長が自分の言葉で答えを準備し、税理士と一度練習する。答えられない質問は計画を直すきっかけにする
  • AIの利用料は1回10円ほどで、会社で契約したチャットで進められる

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