経営課題×AI

銀行に出す事業計画書をAIで下書きする。数字は試算表から計算で出す

この記事で変わる経営指標

この記事では、融資の相談で銀行に出す事業計画書を、社長がAIを使って早く作る方法を説明します。一言でいうと、売上の見込み、費用、資金の使い道、返済の見通しの数字は、試算表と資金繰り表から表計算で出す。AIには、その数字をもとにした計画の説明文と、銀行から聞かれそうな質問への答えの下書きを任せる。最後は社長が自分の言葉に直し、顧問の税理士に確かめてもらうという話です。

AIの価値は、計画の数字を作ることではありません。社長の頭の中にある事業の考えを、数字と整合した文章にすばやく落とし、銀行と話す準備の時間を短くすることです。

経営への効果は、資金の相談が早くなり、説明に詰まらなくなること

事業計画書の作り方は、AIを使うと次のように変わります。

今まで 数字は計算、文章はAI
作るきっかけ お金が足りなくなってから慌てて作る 資金繰り表で足りなくなる月が見えたら、早めに作る
数字 社長の感覚で書く。前の年の数字を少し増やす 試算表と取引先ごとの実績から計算で出す
説明の文章 夜に何日もかけて書く 数字と社長のメモからAIが下書きし、社長が直す
銀行との面談 聞かれた質問にその場で詰まる 聞かれそうな質問と答えを先に用意する
確かめ 社長一人で 顧問の税理士に数字と説明を見てもらう

効果の大きさは、前提を置いて考えます。仮に、事業計画書を作るのに社長が夜と週末で20時間かけていたものが、数字の計算と文章の下書きを分けることで8時間になれば、12時間が浮きます。

ただ、本当に大きいのは時間ではありません。資金の相談は、お金が足りなくなる前に始めるほど、選べる手が増えます。計画書を作る手間が減れば、相談を早めに始められます。また、数字と説明が整っていれば、銀行との面談で詰まらず、話が前に進みやすくなります。

事業計画書に書くのは、売上・費用・資金の使い道・返済の見通し

融資の相談で使う事業計画書には、銀行ごとに決まった様式があることもありますが、多くの場合、次のような中身を書きます。

  • 事業の概要:何を、誰に、どう売っているか。強みは何か
  • これまでの実績:売上と利益の推移
  • これからの計画:売上の見込みと、その根拠(取引先、商品、新しい取り組み)
  • 費用の見込み:仕入れ、人件費、そのほかの費用
  • 資金の使い道:借りたお金を何に使うか(設備、運転資金など)
  • 返済の見通し:毎月いくら返せるか、その根拠

このうち、数字の部分は計算で出し、説明の部分をAIに下書きさせます。自社が相談する銀行や公的な機関に決まった様式があれば、それに沿って作ります。

数字は試算表と表計算で出し、AIに作らせない

事業計画書の作り方。今までは社長が数字も文章も一人で何日もかけて書き、面談で質問に詰まっていた。分けて作るようにしてからは、数字は試算表と資金繰り表から表計算で出し、AIが説明の文章と聞かれそうな質問を下書きし、社長が直して税理士に確かめてもらう
事業計画書の作り方。今までは社長が数字も文章も一人で何日もかけて書き、面談で質問に詰まっていた。分けて作るようにしてからは、数字は試算表と資金繰り表から表計算で出し、AIが説明の文章と聞かれそうな質問を下書きし、社長が直して税理士に確かめてもらう

計算で行うこと。 事業計画書の数字は、すべて表計算で出します。

  • これまでの実績:試算表や決算書から、過去3年の売上と利益を写す
  • 売上の見込み:取引先ごと、商品ごとの実績をもとに、増える見込みと減る見込みを社長が決め、表計算で合計する
  • 費用の見込み:仕入れの率、人件費(人数×1人あたりの費用)、そのほかの費用を、これまでの実績から計算する
  • 資金の使い道:設備の見積や、運転資金が足りなくなる額(資金繰り表から)を写す
  • 返済の見通し:見込みの利益と、減価償却などを足して、毎月返せる額を計算する

AIは、計算を間違えることがあります。また、もっともらしい数字を作ってしまうこともあります。事業計画書の数字をAIに作らせることはしません。AIに渡すのは、表計算で出した数字の表です。

資金繰り表を毎週更新して、足りなくなる月を先に知る方法は、お金が足りなくなる月を先に知る。資金繰り表をAIで毎週更新する方法で説明しています。

説明の文章は、数字の表と社長のメモからAIが下書きする

AIに頼むこと。 表計算で出した数字の表と、社長が話したり書いたりしたメモ(事業の強み、これからの取り組み、売上が増える理由、心配なこと)を渡し、事業計画書の説明の文章を下書きしてもらいます。

人がすること。 社長が、自分の考えと合っているかを確かめ、自分の言葉に直します。数字と文章が合っているか(文章で「売上は2割増える」と書いて、表では1割になっていないか)を確かめます。

何が変わるか。 何日もかけて書いていた文章が、下書きを直す数時間の仕事になります。社長の頭の中の考えが、数字と合った形で文章になります。

AIへの頼み方と、返ってくる下書きはこんな形になる

AIに渡す指示(見本。内容は架空です):

下は、当社の事業計画の数字の表と、社長のメモです。銀行に出す事業計画書の「これからの計画」の説明を、800字ほどで下書きしてください。数字は表にあるものだけを使い、表にない数字は書かないでください。売上が増える理由は、メモに書かれた取り組みだけを使ってください。最後に、文章の中で使った数字を表にし、数字の表のどこから取ったかを書いてください。 数字の表:売上 今期1億2,000万円 → 来期1億3,200万円(既存の取引先 +600万円、新しい取引先 +600万円) 社長のメモ:来期から〇〇工業との取引が始まる。既存の取引先には値上げをお願い済み。工場の機械が古く、受注を断ることがある

返ってくる下書き(一部の見本):

来期の売上は、今期の1億2,000万円から1億3,200万円への増加を見込んでいます。内訳は、既存の取引先からの増加が600万円、新しい取引先からの売上が600万円です。新しい取引先としては、来期から〇〇工業との取引が始まります。既存の取引先には、原材料と人件費の上昇を踏まえた価格の改定をお願いしており……

文中の数字 数字の表のどこから
1億2,000万円 売上 今期
1億3,200万円 売上 来期
600万円(既存) 既存の取引先

社長は、数字の出どころの表を見ながら、文章と数字の表を見比べます。

銀行から聞かれそうな質問は、AIに挙げさせて答えを準備する

AIに頼むこと。 事業計画書の下書きを渡し、銀行の担当者から聞かれそうな質問を挙げてもらいます。たとえば、「新しい取引先との取引は確定していますか」「機械を入れたら、どれだけ受注が増えますか」「売上が見込みに届かなかったら、返済はどうしますか」といった質問です。 人がすること。 社長が、それぞれの質問に自分で答えを考え、必要な資料(取引先との合意の書類、機械の見積など)をそろえます。 何が変わるか。 面談で詰まらず、聞かれたことにすぐ答えられます。答えられない質問が見つかれば、計画の弱いところが分かります。

答えの下書きをAIに作らせることもできますが、銀行に話すのは社長です。答えは社長の言葉で用意します。融資を受けたあと、計画と実績の差を毎月出して銀行への報告を下書きする仕組みは、事業計画と実績の差を毎月知る。試算表から銀行への報告をAIで下書きする仕組みで説明しています。

計画書の型をスキルにし、数字の整合はAIの外で確かめる

ここまでの使い方は、計画書を作るたびに頼む場合です。毎年作る会社や、補助金の申請などでも同じような書類を作る会社は、もう一段の工夫をしておくと楽になります。作る側から見ると、ここが「AIを使う」と「使いこなす」の差です。

計画書の型と会社の言葉を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、「事業計画書の章立て」「会社の事業の説明と強み(毎回同じもの)」「数字は表にあるものだけを使う決まり」「去年の計画書で銀行に評価された書き方」をスキルにします。

数字の整合は、AIの外で確かめる。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、計画書の文章に出てくる数字を抜き出して数字の表と照らすこと、売上の内訳の合計が売上と合っているかを計算で確かめること、返済の見通しが見込みの利益の範囲に収まっているかを計算で確かめることがそれに当たります。

明日からは、去年の決算と今期の試算表から、数字の表を作ってみる

  1. 去年の決算書と今期の試算表から、過去の売上と利益を表計算に写す
  2. 取引先ごと、商品ごとの売上の実績を並べ、来期に増えるもの、減るものを社長が一言ずつ書く
  3. 表計算で、来期の売上と費用の見込みを計算する
  4. 会社で契約した、入力をAIの学習に使わないプランに、上の見本の指示で、説明の文章を下書きさせる
  5. 下書きをもとに、銀行から聞かれそうな質問を挙げさせ、自分の答えを用意する

融資の相談の予定がなくても、一度作っておくと、来期の計画を社内で話すときにも使えます。

計画を決めるのは社長で、数字は税理士に確かめてもらう

  • 売上の見込みを決めるのは社長。 AIに「来期の売上はいくらになりそうか」と聞いても、根拠のある答えは返ってきません。見込みは社長が取引先ごとに決めます
  • 数字は顧問の税理士に確かめてもらう。 試算表から写した数字や、返済の見通しの計算が合っているかを、銀行に出す前に見てもらいます
  • できないことを書かない。 銀行に良く見せようとして、根拠のない売上の伸びを書くと、あとで説明がつかなくなります。AIの下書きが大きく書きすぎていたら、社長が直します
  • 会社の情報の扱いを決める。 試算表や取引先の情報は、会社の大事な情報です。会社で契約した、入力をAIの学習に使わないプランで扱います。社内ルールの決め方は社員が安心してAIを使える会社にする、A4で1枚の社内ルールにまとめています

顧問の税理士や会計事務所の側から、試算表をもとに報告を作る方法は、試算表からAIが月次報告を書き、顧問先に選ばれ続ける方法で説明しています。

まとめ

  • 事業計画書の数字(実績、売上と費用の見込み、資金の使い道、返済の見通し)は、試算表と資金繰り表から表計算で出す。AIに数字を作らせない
  • 説明の文章は、数字の表と社長のメモからAIが下書きし、社長が自分の言葉に直す。文章で使った数字の出どころの表を付けさせ、表と見比べる
  • 銀行から聞かれそうな質問をAIに挙げさせ、答えと資料は社長が用意する
  • 計画書の型と会社の言葉はスキルにし、数字の整合は計算で確かめる
  • 売上の見込みを決めるのは社長。銀行に出す前に、顧問の税理士に数字を確かめてもらう

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