狂犬病の予防注射の案内|4月から6月の時期を前に飼い主へ届ける
この記事では、動物病院のAI活用|説明の紙と予防の案内で飼い主の信頼を深めるの「予防の案内は、時期が来た子に送る」のうち、狂犬病の予防注射の案内を、毎年続けられる手順にして説明します。
一言でいうと、受付が、診療の記録から犬の一覧と前の年度の注射日を出す。AIが、4月から6月の時期と手続きを伝える案内の文を下書きする。獣医師が案内の中身を読んで直す。受付が飼い主に送り、来院の予約を受ける。注射をしてよいかの判断は、来院時に獣医師が行うという形です。
経営への効果は、毎年の来院を確かにし、予防の相談につなげること
狂犬病の予防注射は、犬の飼い主が毎年受けさせることになっている注射です。毎年決まった時期に来院してもらえる機会でもあります。
案内が届かないと、飼い主は時期を忘れたり、自治体の集合注射など別の場所で受けたりします。時期の前に案内を届ければ、来院の予約につながり、来院したときに健康の相談やほかの予防の話もできます。
狂犬病予防法で、毎年1回、4月から6月に注射を受けさせる
e-Gov法令検索で狂犬病予防法を確かめると、第5条で、犬の所有者は、その犬に狂犬病の予防注射を毎年1回受けさせなければならないとされています。市町村長は注射を受けた犬の所有者に注射済票を渡し、所有者はそれを犬に着けておきます。
時期は、狂犬病予防法施行規則で決まっています。
| 決まり | 中身(施行規則より) |
|---|---|
| 注射の時期(第11条第1項) | 生後91日以上の犬は、4月1日から6月30日までの間に1回 |
| 新たに飼い始めたとき(第11条第2項) | 前年の3月2日以降に注射を受けていない犬などを飼い始めたときは、飼い始めた日から30日以内 |
| 注射済証と注射済票(第12条) | 獣医師は注射をしたら注射済証を渡し、飼い主は注射済証を市町村長に見せて注射済票を受け取る |
また、法の第4条では、犬を飼い始めたら30日以内(生後90日以内の犬は、生後90日を過ぎた日から30日以内)に、市町村長に登録を申請することになっています。
自治体によっては、注射済票の手続きの方法が違うことがあります。自院の地域の手続きは、市町村の窓口で確かめてください。2026年10月時点の情報です。
今は、案内を出す相手と時期が、年によってばらばら
小さな動物病院では、毎年の案内を、はがきの束から手で選んで送っていることもあります。去年来た犬、今年初めて来た子犬、引っ越していった犬が混ざり、送る相手がばらつきます。
診療の記録から、犬の一覧と前の年度の注射日を出しておけば、案内を送る相手がはっきりします。案内の文は毎年ほぼ同じなので、型を一度作ればくり返し使えます。
抜き出し、AIが下書きし、確かめて、送る
1 抜き出す(受付)。 診療の記録から、犬の一覧と、前の年度に当院で注射した日を表計算で出します。
2 下書きする(AI)。 時期と、注射済証と注射済票の手続き、予約の取り方を伝える案内の文を下書きしてもらいます。
3 確かめる(獣医師)。 案内の中身が決まりと合っているか、注意書きが正しいかを読んで直します。
4 送る(受付)。 3月ごろを目安に飼い主に送り、来院の予約を受けます(時期は想定です。自院の都合に合わせます)。
案内を送る一覧は、この5つの欄で作る
| 欄 | 中身の例(想定) |
|---|---|
| 飼い主 | 記号(名前と連絡先は受付の台帳だけに書く) |
| 犬の名前と生年月日 | 「A」、2023年5月 |
| 前の年度の注射日 | 2026年4月15日 |
| 今年の案内を送った日 | 3月10日 |
| 来院の予約 | 4月12日、未定、ほかで受けた |
「ほかで受けた」の欄は、自治体の集合注射など、ほかの場所で受けた飼い主の答えを書きます。翌年の案内のときの参考になります。
一覧は、受付の台帳と診療の記録の両方から作ります。亡くなった犬や、引っ越した飼い主に案内が届かないよう、一覧を作るときに受付が確かめます。亡くなった犬の飼い主に案内が届くと、つらい思いをさせてしまいます。
AIへの頼み方と、返ってくる案内はこうなる
AIに渡す指示(見本):
当院から犬の飼い主さまに送る、狂犬病の予防注射の案内を下書きしてください。伝えることは、狂犬病予防法で毎年1回の予防注射が決められていること、4月1日から6月30日までが注射の時期であること、注射のあとに当院で注射済証をお渡しし、市町村で注射済票を受け取る手続きがあること、予約の取り方です。体調がすぐれないときは来院時に獣医師が判断する旨も書いてください。ほかの病院と比べる言い方や、割引の話は書かないでください。「〇〇様」「〇〇ちゃん」は空けておいてください。
返ってくる案内(見本。内容は架空です):
〇〇様 〇〇ちゃんの狂犬病の予防注射の時期が近づいてまいりました。狂犬病予防法では、犬に毎年1回、予防注射を受けさせることが決められており、注射の時期は4月1日から6月30日までです。当院で注射を受けられた場合は、注射済証をお渡しします。注射済証を市町村の窓口にお持ちいただくと、注射済票を受け取れます。体調がすぐれないときは、来院時に獣医師が様子を見て判断します。ご予約は、お電話または受付でお申し付けください。
注射をしてよいかは、来院時に獣医師が判断する
案内を送っても、注射をするかどうかは、来院したときの犬の様子で決まります。
- 体調の判断は獣医師が行う。 案内の文で「必ず注射できます」とは書きません
- 持病や前回の反応は、記録から獣医師が確かめる。 注意が要る犬は、案内とは別に、受付が電話で予約の前に話を聞きます
- 注射済証の書き方は、獣医師が決まりに沿って行う
見送ったときは、体調が戻ったあとに改めて来院してもらう日を、その場で決めておきます。
案内の書き方は、獣医療広告の決まりも意識する
すでに来院している飼い主に送る案内でも、SNSで広く知らせる場合は、獣医療広告の決まりにかかわることがあります。農林水産省のガイドラインとQ&Aで、費用だけを強調する書き方や、割引の告知などが広告できない例として挙げられています。考え方は、動物病院のSNS投稿をAIで下書き|獣医療広告の決まりで照らして出すで説明しています。
型をスキルにし、判断はAIの外に置く
型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、「案内の文の型」「新しく飼い始めた子犬の飼い主向けの型」「書いてはいけないこと(注射できるという言い切り、ほかの病院との比較、割引、飼い主の名前)」をスキルにします。
判断は、AIの外に置く。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、送る相手を記録から表計算で出すこと、案内の中身を獣医師が確かめること、注射してよいかを来院時に獣医師が判断することがそれに当たります。
費用は、AIの利用料が1回2円ほど
| 費用 | 見込み |
|---|---|
| 案内の文の下書き | 指示(入力3千トークンほど)から案内の文(出力1千トークンほど)を作ると、Claude Sonnet 5.5の料金(入力100万トークンあたり2ドル、出力10ドル、1ドル150円で計算)で1回2円ほど。型を一度作れば毎年使える |
| 法人向けプラン | チャットで使うなら1人あたり月数千円 |
| 郵送の費用 | はがきで送る場合は、その費用 |
必要な人は2役で、注射を決めるのは獣医師
- 受付:一覧を出し、案内を送り、予約を受け、一覧に答えを書く
- 獣医師(院長):案内の中身を確かめ、来院時に注射してよいかを判断し、注射済証を渡す
毎年2月に一覧を作り、3月に送る習慣にする見込み
- 2月:診療の記録から犬の一覧と前の年度の注射日を出す
- 2月:AIで案内の型を見直し、獣医師が確かめる
- 3月:飼い主に案内を送り、予約を受ける
- 7月:予約と来院の数を数え、「ほかで受けた」の答えを翌年の参考にする
案内を出して終わりにすると失敗する
よくある失敗は次の3つです。
- 子犬を案内から漏らす。 新しく飼い始めた子犬は、30日以内の注射と、登録の手続きも案内します
- 返事のない飼い主を追わない。 5月ごろに、まだ予約のない飼い主に、もう一度だけ案内を送ります
- 注射できると言い切る。 体調によっては見送ることもあると、案内に書いておきます
まとめ
- 狂犬病予防法で、犬の所有者は毎年1回予防注射を受けさせ、施行規則で生後91日以上の犬は4月1日から6月30日までに1回と決まっている
- 獣医師は注射済証を渡し、飼い主はそれを市町村長に見せて注射済票を受け取る
- 受付が記録から犬の一覧と前の注射日を出し、AIに時期と手続きを伝える案内を下書きさせる
- 獣医師が案内の中身を確かめ、注射してよいかは来院時に判断する
- 子犬の案内と登録の手続きも忘れず、返事のない飼い主にはもう一度だけ案内する