業務への組み込み例

取引先の切り替え予定を表に集める。確認の文と返事の整理はAIで

この記事で変わる経営指標

この記事では、電話回線の受発注を2027年までに切り替える。一覧は表、案内はAIでの「金額の大きい取引先から確認の文を送り、返事を表に残す」を、取引先が多くても回る仕組みとして作る方法を説明します。

一言でいうと、取引先ごとの今の受発注の方法を1つの表に持つ。取引の金額と期限から、確認する順番を表で決める。AIは、取引先ごとの確認の文を下書きし、届いた返事から表に入れる項目の案を作る。担当者が返事と照らして確かめて表に入れ、まだ返事のない取引先には表から催促するという形です。

補完策の目安は2027年ごろ、取引先の予定を早く知る

NTT東日本と西日本は、INSネットのディジタル通信モードを2024年1月に終え、切り替えが間に合わない利用者には当面の補完策を提供しています。補完策の提供は2027年ごろまでをめどとされています(INTERNET Watch、BUSINESS NETWORKの記事による)。BUSINESS NETWORKの記事は、補完策はINSネットと同じ品質にはならず遅れが出ること、受発注のしくみ(EDI)にはまだ多くの利用者が残っていることを伝えています。

受発注のしくみは、相手があって初めて動きます。自社だけで切り替えを決めることはできず、取引先がいつ、どの方法に切り替えるのかを知ることが、準備の出発点です。補完策の正確な期限は、NTT東西と取引先の最新の案内で確かめてください。2026年10月時点の情報です。

今は、取引先ごとにばらばらに聞き、返事が担当者のメールに埋もれる

多くの小さな会社では、取引先への確認は次のように進みます。

  1. 担当者が、思いついた取引先にメールや電話で予定を聞く
  2. 返事は、担当者のメールや電話のメモに残る
  3. どの取引先から返事が来ていて、どこがまだかが分からない
  4. 大口の取引先の予定を、切り替えの直前に知る

取引先が数十社あると、これでは追いきれません。1つの表に集め、返事が来たら同じ形で入れます。

集めて、表で順番を決め、AIが文と整理の案を書く

取引先ごとの今の受発注の方法を1つの表に集め、取引の金額と期限から確認する順番を表で決める。AIが取引先ごとの確認の文と、届いた返事から表に入れる項目の案を下書きし、担当者が返事と照らして確かめて送る
取引先ごとの今の受発注の方法を1つの表に集め、取引の金額と期限から確認する順番を表で決める。AIが取引先ごとの確認の文と、届いた返事から表に入れる項目の案を下書きし、担当者が返事と照らして確かめて送る

仕組みは4つの段でできています。

1. 集める:取引先ごとの今の方法を表に持つ。 表の列は次のとおりです。

  • 取引先の番号(名前ではなく番号)
  • 今の受発注のしくみと回線(INSネット、インターネット、ファクスなど)
  • 月の受発注の件数と金額
  • 確認の文を送った日、返事が来た日
  • 取引先の切り替えの予定日と新しい方法
  • 試しの受発注の日、本番の切り替え日

2. 計算する:確認する順番と催促の印を表で出す。 ここはAIの仕事ではありません。表の計算で、次のものを出します。

  • 月の金額が大きく、今の回線がINSネットの取引先から順に並べる
  • 確認の文を送ってから、決めた日数(たとえば2週間)を過ぎても返事がない取引先に「催促」の印
  • 取引先の切り替えの予定日が近い取引先に「準備」の印

3. 下書きする:AIが確認の文と、返事の整理の案を書く。 AIに、表の内容(取引先の番号と今の方法)だけを渡し、次のものを下書きさせます。

  • 確認の文:今の方法を確かめ、切り替えの予定と新しい方法の案内を尋ねる文
  • 催促の文:前に送った確認への返事を、丁寧にお願いする文
  • 返事の整理の案:取引先から届いた返事のメールを渡し、表のどの列に何を入れるか(予定日、新しい方法、担当者の連絡先など)の案

4. 送る・確かめる:担当者が照らして入れる。 担当者が、確認の文と催促の文を取引先ごとに確かめて送ります。返事の整理の案は、返事のメールと照らしてから表に入れます。予定日が書かれていない返事は、空欄のままにします。

文と整理の型をスキルにし、順番と催促の計算はAIの外に置く

この仕組みが同じ質で回るかどうかは、AIに渡す決まりと、AIの外の仕組みで決まります。作る側から見ると、ここが「AIを使う」と「使いこなす」の差です。

文と整理の型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、次のものをスキルにします。

  • 確認の文と催促の文の型:尋ねること、返事の期限、問い合わせ先
  • 返事の整理の型:表の列ごとに、返事のどこから取るか。書かれていないものは空欄
  • 書いてはいけないこと:表にない日付や方法、補完策の終了日の断定、取引先の予定の決めつけ、返事にない情報の推しはかり

順番と催促の計算は、AIの外に置く。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、表で順番を決めること、返事の日数を数えて催促の印を付けること、整理の案を返事と照らしてから表に入れることがそれに当たります。AIは返事の読み取りで日付や方法を取り違えることがあるので、表に入れる前に人が確かめます。

返事のない取引先が、表で一目で分かる

この仕組みでいちばん効くのは、返事のない取引先と、予定日の近い取引先が、表の印で一目で分かることです。

  • 確認の文を送った日を入れておけば、返事のない日数が自動で数えられます。催促を忘れません
  • 大口の取引先の予定日が分かれば、自社の試しの受発注の日程を、それに合わせて組めます
  • 取引先の新しい方法がそろってくると、どの方法に切り替える取引先が多いかが見え、自社の準備を絞り込めます

担当者の仕事は、送って、照らして、表に入れることになる

仕組みが入ると、取引先への確認は次のように変わります(想定です)。

今まで 仕組みが入ったあと
聞く順番 思いついた取引先から 金額と回線で表で決める
確認の文 毎回書く 型から下書き
返事 担当者のメールに埋もれる 表の列に入れる
返事のない取引先 分からない 催促の印が付く
予定日の近い取引先 直前に知る 準備の印が付く

経営への効果は、大口の取引先の予定を早く知り、受注を止めないこと

効果は、前提を置いて考えます。

早く知って防げる損 = 受発注が止まったときの受注の取りこぼし + 直前の切り替えで業者に急ぎで頼む費用

止まったときの損は、取引先と取引の大きさで大きく変わるので、ここでは金額を置きません。大事なのは、金額の大きい取引先から確認し、予定を早く知ることです。担当者の時間も、取引先ごとに文を書き、返事を探していた時間が、型から下書きして照らすだけの時間になります。

費用はほとんど要らず、AIの利用料は全体で50円ほど

作る順番と、かかる日数

  1. 取引先ごとの今の方法を表に入れる(会社:担当者とシステムの業者、半日)
  2. 順番と催促の印を計算する表を作る(会社:担当者、1時間。表計算で作れます)
  3. 確認の文、催促の文、返事の整理の型を決める(会社:社長と担当者、1時間)
  4. 型をスキルにする(作る人、0.5人日。会社で契約したAIのチャットに型を保存して使うなら不要)

作る費用

作る費用 = 作る人の日数(人日)× 1日あたりの単価

スキルにする場合で、作る側の目安は0.5人日です。

毎月の費用

費用 中身 想定の会社での目安
AIの利用料 取引先20社の確認の文と、返事の整理20件 全体で約51円(下の計算)
表計算 すでに使っているもの 追加0円の想定
保守 取引先が増えたら行を足す 必要なとき

AIの利用料は、読ませた量と書かせた量で決まります。2026年10月7日時点のAnthropic社のClaude(Sonnet 5.5)の公式料金は、読ませる量100万トークン(AIが文字を数える単位)あたり2ドル、書かせる量100万トークンあたり10ドルです。確認の文1件に、表の内容とスキルで2,000トークンを読ませ、500トークンを書かせると約1.4円、返事の整理1件に2,500トークンを読ませ、300トークンを書かせると約1.2円です。取引先20社で、合わせて約51円です(1ドル150円で計算)。

何か月で取り戻せるか

この仕組みは、切り替えが終わるまでの期間だけ使うものです。AIの利用料はわずかで、かかるのは最初の表づくりの手間です。取引先が数社なら、表だけで十分で、AIは要りません。取引先が多いほど、文の下書きと返事の整理をAIに任せる意味が大きくなります。

必要な人は3役で、方法を決めるのは社長

役 誰が すること 時間
表を保つ人 受発注の担当者 文を確かめて送り、返事を照らして表に入れる 週1時間
決める人 社長 表を見て、切り替えの方法と日程を決める 月30分
手伝う人 システムの業者 今の回線の確認と、新しい方法の準備 契約による

1か月で大口の取引先の予定がそろう見込み

どこまでいけるかは、取引先の返事の早さで決まります。目安は次のとおりです。

時期 見込み
最初の2週間 表がそろい、金額の大きい取引先に確認の文を送る
1か月後 大口の取引先の予定と新しい方法がそろう
3か月後 すべての取引先の予定がそろい、試しの受発注の日程を組む

効果を確かめるには、次の3つを記録します。

  • 返事の来た取引先の割合:週ごとに見ます
  • 催促の回数:多い取引先は、電話で直接聞きます
  • 予定日がそろった取引先の、月の金額の合計:全体のうち、どれだけの受発注の予定が見えたかを見ます

返事の整理をAIの案のまま入れると失敗する

作る側から見て、よくある失敗は次の4つです。

  • 返事の整理の案をそのまま表に入れる。 日付や方法の取り違えがあります。返事と照らしてから入れます
  • 思いついた取引先から聞く。 金額の大きい取引先から順に確かめます
  • 返事のない取引先を放っておく。 表の催促の印で、決めた日数ごとに催促します
  • 補完策の期限を決めつけて伝える。 「2027年ごろ」は目安です。取引先に伝えるときも、目安だと分かる書き方にします

取引先の名前や取引の金額は、大事な取引の情報です。AIに渡すときは取引先の番号を使い、会社で契約した、入力をAIの学習に使わないプランで扱います。決め方は社員が安心してAIを使える会社にする、A4で1枚の社内ルールにまとめています。

まとめ

  • 取引先ごとの今の受発注の方法、件数と金額、確認の日、予定日を1つの表に持つ
  • 取引の金額と回線から確認する順番を、返事のない日数から催促の印を、表で計算する
  • AIは、確認の文と催促の文を下書きし、届いた返事から表に入れる項目の案を作る
  • 担当者が返事と照らして確かめてから表に入れる
  • 大口の取引先の予定を早く知り、受発注を止めずに切り替える

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