経営課題×AI

電話回線の受発注を2027年までに切り替える。一覧は表、案内はAIで

この記事で変わる経営指標

この記事では、古い電話回線(INSネット)を使った受発注のしくみ(EDI。取引先とデータで注文をやり取りするしくみ)や、銀行の振込のしくみを、今も使っている会社が、仕事を止めずに切り替える方法を説明します。一言でいうと、取引先ごと、しくみごとに、今どの回線と方法で受発注や振込をしているかを表で一覧にする。切り替えの期限と順番も表で決める。AIは、取引先への確認と相談の文、社内向けの説明を下書きする。どの方法に切り替えるかは、社長が取引先とシステムの業者と決めるという話です。

AIの価値は、回線を切り替えることではありません。取引先が多くても、聞くことと伝えることを早く、抜けなくそろえ、受注が止まる事態を前もって避けることです。

経営への効果は、受注と支払いを止めないこと

古い回線の受発注の切り替えは、AIを使うと次のように変わります。

今まで 一覧は表で、案内はAIで
使っている回線としくみ 担当者しか知らない 取引先ごと、しくみごとに表に
取引先の予定 聞いていない 確認の文を一斉に送って表に残す
切り替えの順番 決まっていない 期限と影響の大きさで表で決める
社内への説明 口頭で 1枚の説明を下書きして配る
遅れや止まり 起きてから気づく 前もって予定を立てる
古い電話回線の受発注の切り替えの変化。今までは使っている回線やしくみを担当者しか知らず、取引先の予定も聞いていなかった。取引先ごとの受発注の方法と切り替えの期限を表で一覧にし、AIが取引先への確認と相談の文を下書きし、どの方法に切り替えるかは社長が取引先と業者と決める
古い電話回線の受発注の切り替えの変化。今までは使っている回線やしくみを担当者しか知らず、取引先の予定も聞いていなかった。取引先ごとの受発注の方法と切り替えの期限を表で一覧にし、AIが取引先への確認と相談の文を下書きし、どの方法に切り替えるかは社長が取引先と業者と決める

経営の効果は2つあります。

  • 受注と支払いを止めない。 受発注のしくみが止まれば、注文が受けられず、出荷が遅れます。銀行の振込のしくみが止まれば、支払いが遅れます。前もって切り替えておけば、こうした事態を避けられます
  • 取引先と足並みをそろえる。 受発注のしくみは、相手があって初めて動きます。大口の取引先がいつ、どの方法に切り替えるのかを早く知れば、自社の準備も無駄なく進められます

2024年1月に終わり、補完策も2027年ごろまでが目安

NTT東日本と西日本は、固定電話の網をIP網へ移すのに合わせて、INSネットのディジタル通信モードの提供を、2024年1月2日から地域ごとに段階的に終え、1月31日までにすべての都道府県で終えました。終了までに切り替えが間に合わない利用者には、当面の対応として「補完策」を提供しており、提供は2027年ごろまでをめどとされています(INTERNET Watch、BUSINESS NETWORKの記事による)。

BUSINESS NETWORKの記事によると、補完策はINSネットと同じ品質にはならず、信号の変換に伴う遅れが出ます。また、銀行とつなぐ振込のしくみ(EB、FB)や、受発注のしくみ(EDI)は、まだ多くの利用者が残っているとされています。

補完策がいつまで使えるか、自社の機器やしくみが補完策でどう動くかは、NTT東西、取引先、システムの業者の最新の案内で確かめてください。2026年10月時点の情報です。

小さな会社ほど、何がINSネットにつながっているか分からない

古い回線の受発注の切り替えで、小さな会社が困るのは次の3つです。

  • 何がつながっているか分からない。 受発注の専用の端末、銀行の振込のソフト、警備の機器など、INSネットを使っているしくみが、導入したときのまま置かれていることがあります
  • 取引先の予定が分からない。 受発注のしくみは、大口の取引先が決めた方法に合わせていることが多く、相手がいつ、どの方法に切り替えるかを聞いていないと、準備ができません
  • 担当者しか知らない。 毎朝、受発注の端末を操作している担当者が辞めたり休んだりすると、誰も分からなくなります

使っているしくみと取引先の予定は、表にまとめられます。取引先への確認と相談の文は、前もって作れます。ここは、表とAIで手伝いやすい仕事です。

一覧と期限は表で作り、AIは確認と相談の文を書く

人がすること(最初に)。 社長と担当者が、システムの業者と一緒に、INSネットや電話回線を使っているしくみを書き出します。受発注の端末、銀行の振込のソフト、警備の機器、ファクスなどです。

計算で行うこと。 表に、しくみごと、取引先ごとに、今の回線と方法、月の受発注の件数や金額、取引先の切り替えの予定、自社の期限を入れます。受発注の金額が大きく、期限が近いものから順に並べ、切り替えの順番を決めます。

AIに頼むこと。 表の内容をもとに、次のものを下書きしてもらいます。

  • 取引先への確認の文:今の受発注の方法を確かめ、切り替えの予定と、新しい方法の案内があるかを尋ねる文
  • 取引先への相談の文:自社が切り替えたい時期と方法を伝え、試しの日程を相談する文
  • 社内向けの説明:何が変わるか、いつから、担当者の作業がどう変わるかを、1枚に

人がすること(そのあと)。 社長と担当者が、取引先の返事を表に入れ、システムの業者と一緒に、切り替えの方法と日程を決めます。新しい方法での試しの受発注を、取引先と一緒に行ってから切り替えます。

AIへの頼み方と、返ってくる確認の文はこんな形になる

AIに渡す指示(見本。内容は架空です):

下は、当社がINSネットの受発注のしくみで取引している取引先の一覧と、それぞれの今の方法です(取引先の名前は伏せてあります)。取引先に送る確認の文を、丁寧で短い文で下書きしてください。今の受発注の方法を確かめること、切り替えの予定と新しい方法の案内があるかを尋ねること、返事の期限をお願いすることを書いてください。技術的な方法を当社から決めつける書き方はしないでください。

返ってくる確認の文(見本の一部):

いつもお取引いただき、ありがとうございます。 現在、貴社との受発注は、電話回線(INSネット)を使ったしくみで行っております。INSネットのディジタル通信モードは終了しており、当面の補完策も2027年ごろまでの見込みと伺っております。 つきましては、貴社での切り替えのご予定と、新しい受発注の方法のご案内がございましたら、○月○日までにお知らせいただけますでしょうか。

社長と担当者は、取引先との関係に合わせて言い回しを直し、取引先ごとに送ります。

一覧と期限はAIの外に置き、確認と相談の文の型はスキルにする

ここまでの使い方は、そのつどAIのチャットに頼む場合です。取引先が多いなら、もう一段の工夫をしておくと安定します。作る側から見ると、ここが「AIを使う」と「使いこなす」の差です。

確認と相談の文の型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、「取引先への確認の文の型」「相談の文の型」「社内向けの説明の型」「書いてはいけないこと(表にない日付や方法、補完策の終了日の断定、取引先の予定の決めつけ、技術的な方法の断定)」をスキルにします。

一覧と期限は、AIの外に置く。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、しくみと取引先の一覧を表で持つこと、受発注の件数と金額、期限から順番を表で決めること、取引先の返事を表に残すことがそれに当たります。どの方法に切り替えるかの判断は、システムの業者と取引先と決めることで、AIにはさせません。

明日からは、INSネットにつながっている機器を書き出す

  1. 受発注の端末、銀行の振込のソフト、警備の機器、ファクスなど、電話回線につながっている機器を書き出す
  2. システムの業者に、どれがINSネットのディジタル通信モード(今は補完策)を使っているかを確かめてもらう
  3. 受発注のしくみごとに、取引先、月の件数と金額を表に入れる
  4. 会社で契約した、入力をAIの学習に使わないプランに、取引先の名前を伏せた一覧を渡し、上の見本の指示で確認の文を下書きさせる
  5. 金額の大きい取引先から確認の文を送り、返事を表に残す。取引先が多いときの表と返事の整理の仕方は、取引先の切り替え予定を表に集める。確認の文と返事の整理はAIでで説明しています

本格的にやるなら、ファクスの受注もまとめて見直す

一度できたら、次の形に育てます。

切り替えの方法と、取引先との約束はAIに任せない

  • 方法は人が決める。 どの方法に切り替えるかは、取引先の方針、費用、使い勝手を見て、社長がシステムの業者と決めます
  • 補完策の期限は公式の案内で確かめる。 「2027年ごろ」は目安です。正確な日付は、NTT東西と取引先の最新の案内で確かめます
  • 試しの受発注をしてから切り替える。 新しい方法で、取引先と一緒に試しの受発注をしてから本番に移ります
  • 取引先の情報に気をつける。 取引先の名前や取引の金額は、大事な取引の情報です。AIに渡すときは名前を伏せ、会社で契約した、入力をAIの学習に使わないプランで扱います。決め方は社員が安心してAIを使える会社にする、A4で1枚の社内ルールにまとめています

まとめ

  • INSネットのディジタル通信モードは2024年1月に終わり、つなぎの補完策も2027年ごろまでが目安とされている。補完策では遅れが出ることがある
  • 受発注のしくみ(EDI)や銀行の振込のしくみを使っている会社は、何がつながっているかを書き出す
  • 取引先ごとの受発注の方法、件数と金額、切り替えの予定と期限を表で一覧にし、順番を決める
  • AIは、取引先への確認と相談の文、社内向けの説明を下書きする
  • 切り替えの方法は、社長が取引先とシステムの業者と決め、試しの受発注をしてから切り替える

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