熱中症の手順書の作り方|現場ごとの連絡先と救急の基準を1枚に
この記事で変わる経営指標
この記事では、熱中症対策の義務化に夏前に備える|報告の体制と手順を現場ごとに1枚にの「手順は、会社の決めごとと現場の情報から1枚に下書きする」を、現場ごとの手順書として形にする方法を説明します。
一言でいうと、社長が会社として決めること(報告する先、作業から離す判断をする人、救急車を呼ぶ基準)を書き出し、現場の責任者が現場の情報(住所、近くの医療機関、休める場所)を書き出す。AIが2つを合わせて、現場ごとのA4で1枚の手順書と、朝礼で読む文を下書きする。電話番号と住所は責任者が現場で確かめ、夏の前に全員に読み上げて貼る。症状の判断と救急の要請は現場の人が行うという形です。
経営への効果は、倒れた人の前で迷う時間を減らすこと
具合の悪い人が出たとき、その場にいる人が迷うのは「誰に言えばいいか」「どこへ運べばいいか」「救急車を呼んでいいか」です。手順書が現場に貼ってあり、事前に読み上げてあれば、その迷いが減ります。
小さな会社では、1人が倒れると、その人の命と健康だけでなく、現場が止まり、残った人の負担も増えます。早く気づいて早く手を打てる備えは、社員と現場の両方を守ることにつながります。社員にとっても、何かあったときの動き方が決まっている職場は、安心して働ける職場です。
JST サイエンスポータル、freee、日本気象協会の解説によると、2025年6月1日から、WBGT(暑さ指数)28度以上か気温31度以上の環境で一定の時間働く作業がある事業場では、熱中症の報告の体制を整え、作業から離す・体を冷やす・必要に応じて医師の診察を受けさせるなどの手順を決め、作業する人に周知することが義務になりました。手順書は、この義務に沿った準備を、現場で使える形にしたものです。細かな要件は、厚生労働省の通達やリーフレットで確かめてください。2026年10月時点の情報です。
今は、会社の決めごとが現場ごとに書き直されていない
小さな会社では、熱中症の決めごとを1枚の紙にしていても、全部の現場で同じ紙を使っていることがあります。けれども、近くの病院、救急車に伝える住所、休める日陰や部屋は現場ごとに違います。
建設や清掃のように現場が月ごとに変わる仕事では、そのたびに紙を書き直す手間がかかります。結果として、連絡先だけが書かれた紙が貼られ、「どこへ運ぶか」「住所をどう伝えるか」が空欄のままになりがちです。この書き直しの手間を、AIの下書きで減らします。
書き出し、AIが下書きし、確かめて、読み上げる
1 書き出す(社長と責任者)。 社長は会社の決めごとを、現場の責任者は現場の情報を書き出します。
2 下書きする(AI)。 2つをAIに渡し、現場ごとの手順の1枚と、朝礼で読む文を下書きしてもらいます。
3 確かめる(責任者)。 責任者が、電話番号、住所、医療機関、休める場所を、現場で確かめて直します。
4 伝える(責任者)。 暑くなる前に全員に読み上げ、現場の目につく場所に貼ります。
会社の決めごとと現場の情報は、この項目で書き出す
会社の決めごと(社長が書く。全部の現場で同じ):
| 項目 | 中身の例 |
|---|---|
| 報告する先 | 現場の責任者、会社の担当者の名前と電話番号 |
| 作業から離す判断 | 誰が判断するか。迷ったら離す側に倒す |
| 体を冷やす道具 | 何を、どこに置くか |
| 救急車を呼ぶ基準 | 会社が信頼できる資料をもとに決めた基準 |
| 付き添い | 1人にしない。誰が付き添うか |
| 会社への連絡 | 救急車を呼んだあと、誰が会社に知らせるか |
現場の情報(責任者が書く。現場ごとに違う):
| 項目 | 中身の例 |
|---|---|
| 現場の名前と住所 | 救急車に伝える住所と目印 |
| 近くの医療機関 | 名前、電話番号、受付の時間 |
| 休める場所 | 日陰、冷房のある部屋、車 |
| 作業の時間帯 | 暑くなる作業の時間 |
| 1人で作業する時間 | ある場合は、連絡の時刻 |
AIへの頼み方と、返ってくる1枚はこうなる
AIに渡す指示(見本):
下は、当社の熱中症のときの決めごとと、〇〇現場の情報です。作業する人が読む「熱中症のときの手順」を、A4で1枚に下書きしてください。順番は、1 おかしいと思ったら言う(報告する先)、2 作業から離す、3 体を冷やす、4 救急車を呼ぶ基準、5 医療機関と救急車に伝える住所、の順にしてください。決めごとと現場の情報にないことは書かず、空いている項目は「要確認」と書いてください。症状の見分け方や手当ての方法は、決めごとに書いてある範囲だけにしてください。最後に、朝礼で1分で読める文を付けてください。
返ってくる1枚(見本の一部。内容は架空です):
〇〇現場 熱中症のときの手順 1 おかしいと思ったら、自分のことでも人のことでも、すぐに責任者のAさん(電話:要確認)に言う 2 作業をやめて、休憩所(現場事務所の2階)へ移る。1人にしない … 5 救急車に伝える住所:〇〇市〇〇町(要確認)。目印は正門の青い看板
「要確認」が残った項目は、責任者が現場で埋めます。AIが電話番号や住所を補って書かないよう、指示で止めておくのが大事です。
1人で作業する現場と、外国人の社員がいる現場は書き足す
親の記事で書いたとおり、運送や警備、外回りの点検のように1人で作業する時間がある仕事では、決まった時刻の連絡と、連絡がないときの動き方を決めておきます。この決まりは会社の決めごととして社長が決め、手順の1枚の最後に「1人のとき」の欄として書き足させます。
外国人の社員がいる現場では、同じ1枚から、やさしい日本語の版を下書きさせます。母国語の訳を付けるときは、母国語が分かる人に確かめてもらいます。やさしい日本語の書き方は、外国人社員の教育はやさしい日本語で|早く一人で動ける手順書と連絡の作り方で説明しています。
型をスキルにし、判断と確認はAIの外に置く
型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、「会社の決めごと」「手順の1枚の型(言う、離す、冷やす、救急車、医療機関と住所)」「朝礼の文とやさしい日本語の型」「書いてはいけないこと(決めごとにない手当て、確かめていない電話番号と住所)」をスキルにします。現場が変わっても、現場の情報を渡すだけで同じ形の1枚が出てきます。
判断と確認は、AIの外に置く。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、救急車を呼ぶ基準を社長が決めること、空いている項目を「要確認」と書かせて責任者が現場で埋めること、症状の判断と救急の要請を現場の人が行うことがそれに当たります。
費用はAIの利用料が1現場3円ほど
| 費用 | 見込み |
|---|---|
| 手順の1枚と朝礼の文 | 決めごとと現場の情報(入力3千トークン・出力1,500トークンほど)から、Claude Sonnet 5.5の料金(入力100万トークンあたり2ドル、出力10ドル、1ドル150円で計算)で1現場3円ほど |
| やさしい日本語の版 | 1現場2円ほど |
| 法人向けプラン | チャットで使うなら1人あたり月数千円 |
| 人の時間 | 決めごとの書き出しに最初の1回だけ、現場の確かめに1現場30分ほど(想定) |
必要な人は2役で、基準を決めるのは社長
- 社長:報告する先、作業から離す判断をする人、救急車を呼ぶ基準、付き添いの決まりを、会社として決める
- 現場の責任者:現場の情報を書き出し、AIの下書きの電話番号と住所を現場で確かめ、全員に読み上げて貼る
AIは下書きの係です。決めることと確かめることは、この2役が持ちます。
冬のうちに型を決め、春に全現場の1枚がそろう見込み
- 冬のうち:社長が会社の決めごとを書き出し、1つの現場で手順の1枚を試しに作る
- 春の初め:型をスキルにまとめ、夏に作業がある現場ごとに下書きする
- 春の終わり:責任者が現場で確かめ、全員に読み上げて貼る
- 夏の間:新しい現場が始まるたびに、同じ型で1枚を作る
夏の終わりには、報告があった日や作業から離した日を見返し、決めごとを直します。日報に暑さを書く欄の作り方は、親の記事の「暑さの記録は、日報に入れて見返す」で説明しています。
AIに電話番号を補わせると失敗する
よくある失敗は次の3つです。
- 電話番号や住所をAIに補わせる。 AIはそれらしい番号や住所を書くことがあります。現場の情報にないものは「要確認」と書かせ、責任者が埋めます
- 手当ての方法をAIに考えさせる。 手当ての方法は、信頼できる資料をもとに会社が決め、その範囲だけを書かせます
- 貼って終わりにする。 読み上げずに貼るだけでは伝わりません。夏の前に全員に読み上げ、質問を受けます
まとめ
- 熱中症の報告の体制と手順を、現場ごとにA4で1枚の手順書にする
- 社長が会社の決めごとを、責任者が現場の情報を書き出し、AIが手順の1枚と朝礼の文を下書きする
- AIの下書きの電話番号と住所は、責任者が現場で確かめる。空いている項目は「要確認」と書かせる
- 費用はAIの利用料が1現場3円ほどで、冬に型を決めれば春に全現場の1枚がそろう
- 症状の判断と救急の要請は現場の人が行い、迷ったら救急車を呼ぶ