台風の前の水災補償の確認案内|ハザードマップと契約を並べて届ける
この記事では、保険代理店のAI活用|満期の案内と見直しの提案で契約を守るの「季節の確認は、台風や雪の前に案内する」のうち、火災保険の水災補償の確認を、毎年続けられる手順にして説明します。
一言でいうと、担当が、火災保険の契約から水災補償の有無の一覧を出す。AIが、補償を確かめてもらう案内の文を下書きする。担当が、ハザードマップで所在地の浸水の想定を調べて一言添える。担当がお客さまと話し、補償の中身は保険会社の資料で説明する。補償を変えるかはお客さまが決めるという形です。
経営への効果は、災害のあとの「入っていなかった」を減らすこと
大きな水害のあと、「水災補償を付けていなかった」と知るお客さまがいます。お客さまにとっては大きな損失で、代理店にとっても信頼にかかわります。
台風や大雨の季節の前に、補償の中身を確かめてもらう案内を届ければ、お客さまは自分の契約を見直すきっかけを得られます。補償を変えるかどうかはお客さまが決めることですが、知らずにいる状態を減らすことは、代理店ができる大事な仕事です。案内をきっかけにした面談は、見直しの相談にもつながります。
金融庁の懇談会は、浸水が浅い地域で水災補償を外す傾向を指摘した
金融庁の「火災保険水災料率に関する有識者懇談会」の報告書の概要では、次のような現状と課題が整理されています。
- 水災リスクが上がっている。 台風や豪雨の災害の多発・激甚化で水災リスクが上がり、火災保険の料率の引き上げが続いている
- 水災補償を外す傾向がある。 洪水ハザードマップ上の浸水深が浅い地域のお客さまが、火災保険から水災補償を外す傾向が認められ、万一の大規模な水災のときに予期せぬ補償不足も懸念される
- 保険会社に期待されること。 水災リスクの情報を提供し、細分化した料率の考え方などをお客さまに丁寧に説明すること
報告書では、地域のリスクに応じて水災の料率を細分化することが、社会にとって望ましい方向とされています。料率や区分の細かな中身は、所属する保険会社の資料で確かめてください。
ハザードマップで、所在地の浸水の想定を調べられる
国土交通省と国土地理院の「ハザードマップポータルサイト」では、住所を入力して、その地点の災害のリスクを調べられます。洪水や内水、土砂災害、高潮、津波の情報を地図に重ねて表示でき、市町村が作ったハザードマップへのリンクもあります。
担当者が、お客さまの建物の所在地を調べ、浸水の想定を一言添えて案内すれば、お客さまも自分ごととして読めます。ただし、ハザードマップは想定であり、想定より浅い地域でも被害が出ることはあります。案内では、想定の数字だけで判断しないよう伝えます。
今は、季節の案内を出せず、満期のときしか話していない
小さな代理店では、火災保険の補償の話をするのが、満期のときの一度だけになっていることがあります。満期が冬なら、台風の季節の前に補償を確かめる機会がありません。
契約の一覧から、水災補償の有無を出しておけば、季節の前に、必要な人に絞って案内を届けられます。AIで案内の文を下書きすれば、担当者の手間も小さくて済みます。
一覧には、水災補償の有無のほか、建物の所在地、満期の月、前回話した日を並べておきます。満期が近い人は満期の案内と一緒に、満期が遠い人は季節の案内として、届け方を分けられます。
抜き出し、AIが下書きし、調べて、話す
1 抜き出す(担当)。 保険会社の管理画面から、火災保険の契約と、水災補償の有無の一覧を出します。
2 下書きする(AI)。 補償の中身を確かめてもらうお願いの文を、水災補償がある人とない人に分けて下書きしてもらいます。
3 調べる(担当)。 ハザードマップポータルサイトで、建物の所在地の浸水の想定を調べ、案内に一言添えます。
4 話す(担当)。 問い合わせや面談で、補償の中身を保険会社の資料で説明します。補償を変えるかはお客さまが決めます。
AIへの頼み方と、返ってくる案内はこうなる
AIに渡す指示(見本):
当代理店から、火災保険にご加入のお客さまに、台風や大雨の季節の前に補償の中身を確かめていただくお願いの文を下書きしてください。水災補償が付いていない契約のお客さま向けです。補償を付けることを勧める文ではなく、今の補償の範囲を知っていただくための文にしてください。保険料、支払いの可否、「必ず」という言い切りは書かないでください。「〇〇様」とハザードマップの一言の欄は空けておいてください。
返ってくる案内(見本。内容は架空です):
〇〇様 いつもお世話になっております。台風や大雨の季節を前に、ご加入の火災保険の補償の範囲をご確認いただきたく、ご連絡いたしました。〇〇様のご契約には、現在、水災(洪水や土砂崩れなどによる損害)の補償は含まれておりません。【ハザードマップの一言】ご不明な点や、補償の範囲についてのご相談がございましたら、担当の〇〇までお知らせください。
担当者は、【ハザードマップの一言】に「お住まいの地域は、洪水の浸水想定区域に〇〇と示されています(ハザードマップポータルサイトより)」のように、調べた内容を入れます。
勧め方は、意向を聞いて、不利益も伝える
案内をきっかけに、お客さまが補償を足したいと言うこともあります。そのときは、決まりに沿って進めます。
- 意向を聞き直す。 監督指針では、既存の契約の更新や一部の変更でも、実質的な変更に当たる場合は、変わる部分の意向を把握し確かめることになっています。補償を足すなら、その部分の意向を聞きます
- 保険料の変わり方は保険会社の資料で示す。 補償を足せば保険料が変わります。担当者が資料で示し、AIの文には書かせません
- 言い切らない。 保険業法の第300条では、誤解させるおそれのある比べ方や、不利益を告げずに乗り換えさせることなどが禁止されています
面談の記録の残し方は、保険の面談記録をAIで整える|当初と最終の意向を比べて残すで説明しています。
型をスキルにし、判断はAIの外に置く
型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、「水災補償がある人とない人の案内の型」「ハザードマップの一言の書き方」「書いてはいけないこと(保険料、支払いの可否、勧める言い切り、お客さまの名前)」をスキルにします。
判断は、AIの外に置く。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、補償の有無を管理画面から人が出すこと、ハザードマップを担当者が調べること、保険料を保険会社の資料で示すこと、補償を変えるかをお客さまが決めることがそれに当たります。
費用は、AIの利用料が1回2円ほど
| 費用 | 見込み |
|---|---|
| 案内の文の下書き | 指示(入力3千トークンほど)から案内の文(出力1千トークンほど)を作ると、Claude Sonnet 5.5の料金(入力100万トークンあたり2ドル、出力10ドル、1ドル150円で計算)で1回2円ほど。型を一度作れば毎年使える |
| 法人向けプラン | チャットで使うなら1人あたり月数千円 |
| 担当者の時間 | ハザードマップを調べて一言添えるのに1件数分(想定) |
必要な人は2役で、補償を決めるのはお客さま
- 担当:一覧を出し、ハザードマップを調べて案内を送り、面談で補償の中身を説明する
- 社長(管理する人):案内を送る時期と対象を決め、送れていない契約がないかを確かめる
毎年、台風の季節の前に送る習慣にする見込み
- 季節の前の月:火災保険の契約と水災補償の有無の一覧を出す
- 同じ月:AIで案内の型を作り、担当者が直す
- 次の月:ハザードマップの一言を添えて送り、問い合わせに応じる
- 季節のあと:問い合わせと面談の数を数え、翌年の時期と対象を見直す
補償を外している人を責めると失敗する
よくある失敗は次の3つです。
- 不安をあおる。 「大変なことになります」のような文は、お客さまの判断を急がせます。補償の範囲を知ってもらう文にします
- ハザードマップの想定だけで判断させる。 想定は想定です。想定が浅くても被害が出ることはあると伝えます
- 保険料をAIの文に書く。 保険料は保険会社の資料で、担当者が示します
まとめ
- 金融庁の懇談会の報告書の概要では、浸水深が浅い地域で水災補償を外す傾向と、大規模水災のときの補償不足の懸念が示された
- ハザードマップポータルサイトで、住所ごとに浸水などの想定を調べられる
- 契約の一覧から水災補償の有無を出し、AIで確認のお願いの文を下書きし、担当がハザードマップの一言を添える
- 補償を足すときは変わる部分の意向を聞き直し、保険料は保険会社の資料で示す
- 補償を変えるかはお客さまが決め、不安をあおらず、想定だけで判断させない