業務への組み込み例

塾の保護者面談の準備を1人10分に。点数は計算で、話す順番はAIで

この記事で変わる経営指標

この記事では、小さな学習塾は保護者への報告で選ばれる。AIで講師の事務を減らす方法の「面談の準備は、成績を計算で出しAIが話す順番を書く」を、仕組みとして作る方法を説明します。

一言でいうと、面談の1週間前に、生徒ごとの点数、出欠、講師のメモ、前回の面談の記録を集める。点数の推移と出席の割合は表計算で出す。AIが面談で話す順番と保護者に見せる資料を下書きし、教室長が確かめる。志望校や進路の話は、教室長が自分で考えて面談に臨むという形です。面談の時期に夜遅くまでかかっていた準備を、確かめて考える仕事にします。

子どもが減るなかで、面談は続けてもらう理由になる

親の記事で触れたとおり、厚生労働省の人口動態統計(概数)によると、2025年に生まれた日本人の子どもは67万1,236人で過去最少でした(共同通信の報道でも同じ数字が報じられています)。塾に通う年齢の子どもの数は、この先も減っていきます。

新しい生徒を集める競争が厳しくなるなかで、今いる生徒に続けてもらうことの重みが増します。保護者面談は、塾が子どものことをどれだけ見ているかを、保護者が直接感じる場です。準備が足りないまま面談に臨むと、その場で点数を探したり、講師の話を思い出せなかったりして、保護者に不安を残します。

今は面談の時期に、教室長が夜まで資料を作っている

多くの小さな塾では、面談の準備が次のように行われています。

  1. 教室長が、生徒ごとに過去のテストの点数を探して書き写す
  2. 担当の講師に、授業での様子を聞いて回る
  3. 前回の面談で何を話したかを、ノートやメモから探す
  4. 話す順番を考え、保護者に見せる紙を作る

1人あたりの準備に時間がかかり、生徒の数だけ繰り返します。面談の時期は授業もあるので、準備は授業のあとの夜になります。

集め、表で数え、AIが順番を書き、教室長が考える

面談の前に、生徒ごとの点数、出欠、講師のメモ、前回の面談の記録を集め、点数の推移は表計算で出す。AIが面談で話す順番と保護者に見せる資料を下書きし、教室長が確かめ、進路の話は自分で組み立てて面談に臨む
面談の前に、生徒ごとの点数、出欠、講師のメモ、前回の面談の記録を集め、点数の推移は表計算で出す。AIが面談で話す順番と保護者に見せる資料を下書きし、教室長が確かめ、進路の話は自分で組み立てて面談に臨む

仕組みは4つの段でできています。

1. 集める:点数と出欠と講師のメモと前回の面談の記録を集める。 面談の1週間前に、生徒ごとに次のものを1つの表にまとめます。

  • 塾のテストと学校の定期テストの点数
  • 出欠の記録
  • 講師のメモ(「英語の長文は時間内に読み切れるようになった」「数学の宿題が出ていない週がある」)
  • 前回の面談の記録(保護者の心配、約束したこと)

2. 計算する:点数の推移と出席の割合を表計算で出す。 ここは計算の仕事です。

  • 科目ごとの点数の推移と、前回の面談からの変化を、表計算の式で出します
  • 出席の割合と、宿題を出した割合を出します
  • 生徒の名前は、AIに渡す前に番号に置き換えます

3. 下書きする:AIが話す順番と見せる資料を書く。 AIが、表と講師のメモから、面談で話す順番と、保護者に見せる資料の下書きを作ります。よくなったこと、気になること、前回の約束のその後、家でお願いしたいことの順番です。点数は表から決まった欄に差し込み、AIには書かせません。

4. 面談する:教室長が確かめ、進路の話は自分で考える。 教室長が下書きを読み、講師のメモと合っているかを確かめます。志望校や進路、クラスの変更のような大事な話は、AIの下書きに頼らず、教室長が自分で考えて面談に臨みます。

塾の話し方をスキルにし、点数と進路の判断はAIの外で持つ

この仕組みが毎回同じ質で回るかどうかは、AIに渡す決まりと、AIの外の仕組みで決まります。作る側から見ると、ここが「AIを使う」と「使いこなす」の差です。

塾の話し方を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、次のものをスキルにします。

  • 面談の型:よくなったこと、気になること、前回の約束、家でのお願いの順番と時間の目安
  • 資料の型:保護者に見せる1枚の紙の項目と並べ方
  • 塾の言葉:できたことから伝える、ほかの生徒と比べない、といった塾の方針
  • 書いてはいけないこと:志望校の合否の見込み、ほかの生徒との比べ、家庭の事情の推測、講師のメモにないこと

点数と、進路の判断は、AIの外で持つ。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、点数の推移と出席の割合を式で出すこと、名前を番号に置き換えること、下書きに表にない点数や講師のメモにない話が入っていないかを確かめることがそれに当たります。合格の見込みや進路の判断を、AIに決めさせることはしません。

教室長の仕事は、準備を確かめて、進路を考えることになる

仕組みが入ると、面談の準備は次のように変わります(想定です)。

今まで 仕組みが入ったあと
点数 テストを探して書き写す 表から推移が出る
講師の話 面談の前に聞いて回る メモが表に集まっている
前回の面談 ノートから探す 前回の約束が資料に入る
話す順番 その場で考える 下書きを見て直す
教室長の時間 資料作りで夜まで 進路の話を考える時間が取れる

経営への効果は、生徒に続けてもらい、保護者の信頼を得ること

効果は、前提を置いて計算します。仮に、1人あたり30分かかっていた面談の準備が、下書きを確かめて直す10分になれば、1人20分が浮きます。生徒60人の塾なら、1回の面談の時期に20時間、1時間あたりの人件費を仮に2,500円として面談の時期ごとに5万円分です。

ただ、この仕組みの価値は時間だけではありません。前回の約束のその後まで準備された面談は、保護者に「この塾は子どものことをよく見ている」と感じてもらう場になります。子どもが減るなかで、生徒に続けてもらい、兄弟や友人に紹介してもらう理由になります。毎月の学習報告の作り方は、塾の保護者への毎月の報告を全員に届ける。講師のメモと点数から下書きする仕組みで説明しています。毎月の報告の記録は、面談の準備の材料にもなります。

費用は作る費用が中心で、AIの利用料は面談1回で230円ほど

作る順番と、かかる日数

  1. 面談の型と資料の型、書いてはいけないことを決める(塾:教室長、半日)。保護者に喜ばれた面談のやり方を書き出します。ここがいちばん大事です
  2. 点数、出欠、講師のメモ、面談の記録の表をそろえる(塾:教室長と事務、半日〜1日)
  3. 表を集め、推移と割合を計算し、名前を置き換える仕組みを作る(作る人、1人日)
  4. AIの話す順番と資料の下書き、教室長への届け方を作る(作る人、1人日)
  5. 次の面談の時期に、1学年で試して直す(作る人、0.5人日)

作る費用

作る費用 = 作る人の日数(人日)× 1日あたりの単価

上の手順3〜5で、作る側の目安は合計2.5人日です。

面談の時期ごとの費用

費用 中身 想定の塾での目安
AIの利用料 1人の準備の下書きごとにかかる 60人で230円ほど(下の計算)
表計算 すでに使っているもの 追加0円の想定
保守 型と表の更新 面談の時期ごとに2時間

AIの利用料は、読ませた量と書かせた量で決まります。2026年10月7日時点のAnthropic社のClaude(Sonnet 5.5)の公式料金は、読ませる量100万トークン(AIが文字を数える単位)あたり2ドル、書かせる量100万トークンあたり10ドルです。1人あたり表と講師のメモとスキルで5,000トークンを読ませ、1,500トークンを書かせると見積もると、0.025ドル、1ドル150円で約3.8円です。60人で230円ほどです。

何回の面談の時期で取り戻せるか

取り戻すまでの回数 = 作る費用 ÷(1回の時期に浮く金額 − 1回の時期の費用)

仮に作る費用が15万円、1回の面談の時期の費用(利用料と保守の時間)を5,200円とすると、1回の時期に5万円分が浮く塾でおよそ3.4回、面談が年3回の塾ならおよそ1年強です。生徒が20人ほどの塾なら、面談の型と資料の型だけ作り、教室長が会社で契約したAIのチャットに、名前を番号に置き換えた表を貼って下書きするやり方で十分です。

必要な人は3役で、進路を考えるのは教室長

役 誰が すること 時間
メモを残す人 講師 授業のあとに、気づいたことを一言残す 1回1分
確かめて面談する人 教室長 下書きを確かめ、進路の話を考えて面談する 1人10分
作る人 塾の詳しい人か、外の作り手 集める、計算、下書き、届け方を作る 最初の2.5人日

いちばん大事なのは、講師が日々のメモを残すことです。メモがなければ、面談で話せることが点数だけになります。

1回目の面談で型がそろい、1年で続ける生徒の変化が分かる見込み

どこまでいけるかは、講師のメモがどれだけ残るかと、型がどれだけ育つかで決まります。目安は次のとおりです。

時期 見込み
1回目の面談の時期 1学年で試す。教室長が直したところを型に足す
2回目の面談の時期 全学年に広がる。面談の記録が次の準備の材料になる
1年 続けてくれた生徒の割合と、紹介で入った生徒の数を、仕組みの前と比べられる

効果を確かめるには、次の3つを導入の前と後で比べます。

  • 1人あたりの準備の時間:教室長の時間を記録します
  • 続けてくれた生徒の割合:面談のあとの学期に、やめた生徒の数を数えます
  • 紹介で入った生徒の数:入塾のときに「何で知ったか」を聞きます

合否の見込みや比べる言葉をAIに書かせると失敗する

作る側から見て、よくある失敗は次の4つです。

  • 合否の見込みをAIに書かせる。 志望校の話は、教室長が自分で考えます。AIの下書きには入れません
  • ほかの生徒と比べる書き方になる。 「クラスで何番目」のような比べ方は、塾の方針で決めます。決めていないなら書かせません
  • 点数をAIに書かせる。 点数は表から入れます。AIは数字を写し間違えることがあります
  • 生徒の名前をそのままAIに渡す。 番号に置き換えてから渡します

子どもと家庭の情報は、とても大事な個人の情報です。塾で契約した、入力をAIの学習に使わないプランで扱い、塾の決まりに書いておきます。決め方は社員が安心してAIを使える会社にする、A4で1枚の社内ルールにまとめています。

まとめ

  • 面談の1週間前に、生徒ごとの点数、出欠、講師のメモ、前回の面談の記録を集める
  • 点数の推移と出席の割合は表計算で出し、名前は番号に置き換えてから渡す
  • AIが話す順番と保護者に見せる資料を下書きし、教室長が確かめる。進路の話は教室長が自分で考える
  • 費用は作る費用が中心で、作る側の目安は2.5人日。AIの利用料は60人で230円ほど。小さな塾は型とチャットで十分
  • 効果は、準備の時間、続けてくれた生徒の割合、紹介で入った生徒の数で確かめる

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