業務への組み込み例

会葬礼状と案内文の書き写しの間違いを防ぐ。記録からAIが型どおりに下書き

この記事で変わる経営指標

この記事では、小さな葬儀社の事務をAIで減らす。遺族と向き合う時間と法要の案内を増やすの「会葬礼状と案内文は、決まった型と記録からAIが下書きする」を、仕組みとして作る方法を説明します。

一言でいうと、打ち合わせの記録から、故人と喪主の名前、続き柄、日程、宗派を表に入れる。名前の字は、遺族に確かめた表記を使う。AIが、社内で決めた型と避ける言葉の一覧に沿って、会葬礼状と案内文を下書きする。担当者が名前と日付と言葉づかいを確かめ、遺族に見てもらうという形です。過去の文面を探して書き写していた時間を減らし、何より名前や日付の書き写しの間違いを防ぎます。

一軒一軒の葬儀で、間違いのない文面が信頼を守る

親の記事で触れたとおり、厚生労働省の人口動態統計(概数)によると、2025年の死亡数は158万9,489人で、5年ぶりに減りました(厚生労働省、栃木県の報道資料)。葬儀の件数が大きく伸びるわけではない中で、地域の葬儀社が続けていくには、一軒一軒の家に選ばれ、その後も法要や相談で頼られることが大事になります。

会葬礼状や案内文は、遺族の名前で多くの人に配られる文書です。故人の名前の字が違う、日付や曜日が違う、続き柄が違う。こうした間違いは、遺族にとって取り返しのつかない思いを残し、葬儀社への信頼を大きく損ねます。

今は過去の文面を探し、名前と日付を書き写している

多くの小さな葬儀社では、会葬礼状と案内文が次のように作られています。

  1. 打ち合わせのあと、担当者が過去の似た文面をパソコンから探す
  2. 故人の名前、喪主の名前、日程を、打ち合わせのメモから書き写す
  3. 宗派に合わせて言葉づかいを直す
  4. 夜遅く、急ぎで作るので、書き写しの間違いが起きやすい

葬儀は夜も休日も急に入る仕事です。打ち合わせから通夜までの時間は限られ、担当者は遺族への対応と文書づくりを同時に進めることになります。

記録から入れ、表記を確かめ、AIが書き、遺族に見てもらう

打ち合わせの記録から、故人と喪主の名前、続き柄、日程、宗派を表に入れ、名前の字は遺族に確かめた表記を使う。AIが社内で決めた型と避ける言葉の一覧に沿って、会葬礼状と案内文を下書きし、担当者が名前と日付と言葉づかいを確かめて遺族に見てもらう
打ち合わせの記録から、故人と喪主の名前、続き柄、日程、宗派を表に入れ、名前の字は遺族に確かめた表記を使う。AIが社内で決めた型と避ける言葉の一覧に沿って、会葬礼状と案内文を下書きし、担当者が名前と日付と言葉づかいを確かめて遺族に見てもらう

仕組みは4つの段でできています。

1. 集める:打ち合わせの記録から名前と日程を表に入れる。 打ち合わせの中で、次のことを決まった表に入れます。

  • 故人の名前と読み、享年
  • 喪主の名前と、故人との続き柄
  • 通夜、葬儀・告別式の日時と場所
  • 宗派
  • 遺族から聞いた、故人の人柄や思い出の一言(礼状に添えたい場合)

2. 確かめる:名前の字は遺族に確かめた表記を使う。 ここは決まりと表の仕事です。

  • 名前の字は、遺族に書いてもらったものか、遺族に読み上げて確かめたものを表に入れます。旧字体や異体字に気をつけます
  • 日付と曜日は、表計算で曜日を出し、打ち合わせの記録と合っているかを照らします
  • 宗派ごとに避ける言葉は、社内で決めた一覧から選びます

3. 下書きする:AIが型どおりに文面を書く。 AIが、社内で決めた型と表の情報から、会葬礼状と案内文を下書きします。名前と日付は表から決まった欄に差し込み、AIには書かせません。故人の人柄の一言は、遺族から聞いたメモがあるときだけ、メモの範囲で添えます。

4. 見てもらう:担当者が確かめて、遺族に見てもらう。 担当者が、名前の字、日付と曜日、続き柄、言葉づかいを確かめます。そのうえで遺族に見てもらい、遺族の了承を得てから印刷します。

社内の型と避ける言葉をスキルにし、名前と日付はAIの外で持つ

この仕組みが毎回同じ質で回るかどうかは、AIに渡す決まりと、AIの外の仕組みで決まります。作る側から見ると、ここが「AIを使う」と「使いこなす」の差です。

社内の型と避ける言葉の一覧を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、次のものをスキルにします。

  • 文書ごとの型:会葬礼状、通夜や葬儀の案内、香典返しの挨拶状の順番と長さ
  • 宗派ごとの言葉づかい:社内で、付き合いのある寺院や経験のある担当者に確かめて決めた一覧
  • 避ける言葉の一覧:社内で決めた、弔事の文書で使わない言葉
  • 書いてはいけないこと:遺族から聞いていない故人の話、死因や病名、金額

名前、日付、宗派の判断は、AIの外で持つ。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、名前の字を遺族に確かめた表記で入れること、曜日を表計算で出すこと、宗派に合った言葉づかいを社内の一覧で決めることがそれに当たります。親の記事でも触れたとおり、宗派のしきたりの判断はAIに任せません。

担当者の仕事は、確かめて、遺族と向き合うことになる

仕組みが入ると、文書づくりは次のように変わります(想定です)。

今まで 仕組みが入ったあと
書き始め 過去の文面を探す 型と表から下書きが出る
名前と日付 メモから書き写す 遺族に確かめた表記が表から入る
曜日 手で確かめる 表計算で出る
言葉づかい 担当者の記憶に頼る 社内の一覧に沿う
担当者の時間 夜遅くまで文書づくり 確かめて、遺族と向き合う

経営への効果は、間違いを防ぎ、遺族に頼られ続けること

効果は、前提を置いて計算します。仮に、1件の葬儀の会葬礼状と案内文に45分かかっていたものが、下書きを確かめる15分になれば、1件30分が浮きます。月20件なら月10時間、1時間あたりの人件費を仮に2,500円として月2万5,000円分です。

ただ、この仕組みの価値は時間だけではありません。名前や日付の書き写しの間違いを防ぐことは、遺族の信頼を守ることです。浮いた時間は、遺族の話を聞く時間に回せます。葬儀のあとも、法要や相談で頼ってもらえる葬儀社でいることが、地域で続けていく力になります。法要の案内の作り方は、法要の時期に忘れず声をかける。施行の台帳からAIが案内を下書きする仕組みで説明しています。打ち合わせで表に入れた記録は、法要の案内の台帳にもそのまま使えます。

費用は作る費用が中心で、AIの利用料は月70円ほど

作る順番と、かかる日数

  1. 文書ごとの型と、宗派ごとの言葉づかい、避ける言葉の一覧を決める(会社:社長とベテランの担当者、1日)。これまでの文面の中から、遺族に喜ばれたものを見本に集めます。ここがいちばん大事です
  2. 打ち合わせで入れる表の形を決める(会社:担当者、半日)
  3. 表から名前と日付を差し込み、曜日を出す仕組みを作る(作る人、0.5人日)
  4. AIの下書きと、担当者への届け方を作る(作る人、1人日)
  5. 1か月、会葬礼状だけで試して直す(作る人、0.5人日)

作る費用

作る費用 = 作る人の日数(人日)× 1日あたりの単価

上の手順3〜5で、作る側の目安は合計2人日です。

毎月の費用

費用 中身 想定の会社での目安
AIの利用料 1件の会葬礼状と案内文の下書きごとにかかる 月20件で70円ほど(下の計算)
表計算・印刷 すでに使っているもの 追加0円の想定
保守 型と言葉の一覧の更新 月1時間

AIの利用料は、読ませた量と書かせた量で決まります。2026年10月7日時点のAnthropic社のClaude(Sonnet 5.5)の公式料金は、読ませる量100万トークン(AIが文字を数える単位)あたり2ドル、書かせる量100万トークンあたり10ドルです。1件あたり表とスキルで4,000トークンを読ませ、1,500トークンを書かせると見積もると、0.023ドル、1ドル150円で約3.5円です。月20件で70円ほどです。

何か月で取り戻せるか

取り戻すまでの月数 = 作る費用 ÷(月に浮く金額 − 毎月の費用)

仮に作る費用が12万円、毎月の費用(利用料と保守の時間)を2,600円とすると、月2万5,000円分が浮く会社でおよそ5か月です。件数が少ない会社なら、型と言葉の一覧だけ作り、担当者が会社で契約したAIのチャットに型と表を貼って下書きするやり方で十分です。その場合も、名前と日付は表から写し、AIの下書きの名前は必ず確かめます。

必要な人は3役で、遺族の了承をもらうのは担当者

役 誰が すること 時間
打ち合わせで入れる人 担当者 名前、日程、宗派を表に入れ、名前の字を遺族に確かめる 打ち合わせの中で
確かめて見てもらう人 担当者 下書きを確かめ、遺族に見てもらう 1件15分
作る人 社内の詳しい人か、外の作り手 表、差し込み、下書き、届け方を作る 最初の2人日

いちばん大事なのは、名前の字を遺族に確かめることです。仕組みがどれだけ整っても、入れる字が違えば、間違いはそのまま印刷されます。

1か月で型がそろい、半年で間違いの変化が分かる見込み

どこまでいけるかは、型と言葉の一覧がどれだけ育つかで決まります。目安は次のとおりです。

時期 見込み
最初の1か月 会葬礼状だけで試す。担当者が直したところを型に足す
3か月 通夜や葬儀の案内、香典返しの挨拶状にも広げる
半年 文書づくりの時間と、刷り直しの件数を、仕組みの前と比べられる

効果を確かめるには、次の3つを導入の前と後で比べます。

  • 1件の文書づくりにかかる時間:担当者の時間を記録します
  • 刷り直しの件数:名前や日付の間違いで刷り直した件数を数えます
  • 遺族の声:アンケートや、法要の相談につながった件数を記録します

名前や宗派の言葉をAIに任せると失敗する

作る側から見て、よくある失敗は次の4つです。

  • 名前をAIに書かせる。 AIは似た字に置き換えることがあります。名前は表から差し込み、担当者が遺族に確かめた表記と照らします
  • 宗派の言葉づかいをAIに判断させる。 社内で決めた一覧に沿わせ、迷ったら担当者が寺院や遺族に確かめます
  • 遺族から聞いていない故人の話をAIが足す。 人柄の一言は、遺族から聞いたメモの範囲だけにします
  • 遺族に見てもらわずに印刷する。 必ず遺族の了承を得てから印刷します

故人と遺族の情報は、とても大事な個人の情報です。会社で契約した、入力をAIの学習に使わないプランで扱い、社内の決まりに書いておきます。決め方は社員が安心してAIを使える会社にする、A4で1枚の社内ルールにまとめています。

まとめ

  • 打ち合わせの中で、故人と喪主の名前、続き柄、日程、宗派を決まった表に入れる
  • 名前の字は遺族に確かめた表記を使い、曜日は表計算で出す。宗派の言葉づかいは社内の一覧で決める
  • AIが社内の型と避ける言葉の一覧に沿って、会葬礼状と案内文を下書きする。名前と日付は表から差し込む
  • 担当者が確かめ、遺族に見てもらい、了承を得てから印刷する
  • 費用は作る費用が中心で、作る側の目安は2人日。AIの利用料は月70円ほど。件数が少ない会社は型とチャットで十分

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