業務への組み込み例

体験授業の様子をその日のうちに保護者へ。講師のメモからAIが報告を下書き

この記事で変わる経営指標

この記事では、小さな学習塾は保護者への報告で選ばれる。AIで講師の事務を減らす方法の「問い合わせと体験授業の返事は、その日のうちに出す」のうち、体験授業のあとの報告を、仕組みとして作る方法を説明します。

一言でいうと、体験授業が終わったら、講師が決まった項目でメモを残す。AIがメモから、保護者への体験の報告と、通うとしたら何から始めるかの案を下書きする。料金と空いている時間は料金表と時間割から入れ、塾長が確かめて、その日のうちに送る。契約の書面は、人が法律に沿って用意するという形です。体験授業の手応えが保護者に伝わるうちに、入塾を考える材料を届けます。

子どもが減るなかで、体験に来た一人が大事になる

親の記事で触れたとおり、厚生労働省の人口動態統計(概数)では、2025年の日本人の出生数は67万1,236人で過去最少、合計特殊出生率は1.14で過去最低でした(共同通信の配信を掲載した熊本日日新聞でも同じ数字が報じられています)。

子どもの数が減れば、塾に問い合わせてくる家庭も減っていきます。体験授業に来てくれた一人ひとりが、これまで以上に大事になります。保護者は、何軒かの塾の体験を比べて決めることもあります。体験の日に子どもが「楽しかった」と話していても、塾からの連絡が数日後になれば、比べている間に気持ちが冷めてしまいます。

今は体験の報告が、迎えのときの立ち話で終わっている

多くの小さな学習塾では、体験授業のあとが次のようになっています。

  1. 講師が体験授業をし、終わったら子どもを送り出す
  2. 迎えに来た保護者と、塾長が数分立ち話をする
  3. パンフレットと料金表を渡し、「ご検討ください」と伝える
  4. 数日たってから電話をかけるが、つながらなかったり、もう別の塾に決まっていたりする

講師が見た子どもの様子(どこでつまずいたか、どこができていたか)は、保護者に十分に伝わりません。立ち話では、保護者も聞いたことを覚えきれません。

メモを残し、AIが書き、表から入れ、塾長が送る

体験授業のあと講師が決まった項目でメモを残し、料金と空いている時間は料金表と時間割から入れる。AIが保護者への体験の報告と、通うとしたら何から始めるかの案を下書きし、塾長が確かめてその日のうちに送る
体験授業のあと講師が決まった項目でメモを残し、料金と空いている時間は料金表と時間割から入れる。AIが保護者への体験の報告と、通うとしたら何から始めるかの案を下書きし、塾長が確かめてその日のうちに送る

仕組みは4つの段でできています。

1. 残す:体験授業のあと、講師が決まった項目でメモを残す。 授業が終わったら、講師が5分でメモを残します。項目は決めておきます。

  • やったこと(「中1数学、正負の数の計算」)
  • できていたこと(「符号のルールはすぐに覚えた」)
  • つまずいたこと(「かっこを外すときの符号でミスが3回」)
  • 本人の様子(「最初は緊張していたが、後半は自分から質問した」)
  • 講師が考える、最初に取り組むとよいこと

2. 下書きする:AIが体験の報告と、始め方の案を書く。 AIに、講師のメモと、問い合わせのときに保護者から聞いたこと(学年、志望、心配していること)を渡し、次のものを下書きさせます。

  • 体験の報告:やったこと、できていたこと、つまずいたこと、本人の様子
  • 通うとしたら、最初の1か月で何から取り組むかの案
  • 保護者が心配していたことへの答え

3. 入れる:料金と空いている時間は、表から入れる。 ここはAIの仕事ではありません。学年とコースに合う料金を料金表から、空いている曜日と時間を時間割から入れます。

4. 送る:塾長が確かめて、その日のうちに送る。 塾長が下書きを読み、講師のメモと合っているかを確かめます。保護者が使っている連絡の方法(メール、LINEなど)で、その日のうちに送ります。

報告の型をスキルにし、料金と契約はAIの外に置く

この仕組みが毎回同じ質で回るかどうかは、AIに渡す決まりと、AIの外の仕組みで決まります。作る側から見ると、ここが「AIを使う」と「使いこなす」の差です。

報告の型と塾の言葉を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、次のものをスキルにします。

  • 報告の型:お礼、やったこと、できていたこと、つまずいたこと、本人の様子、始め方の案、の順で書く
  • 塾の考え方:教え方の方針、宿題の出し方、保護者への報告の頻度
  • 言葉づかいの見本:塾長が過去に書いた、保護者に喜ばれた報告を3つ
  • 書いてはいけないこと:成績が上がる・合格するという約束、他の塾を下げる言い方、入塾を急かす言い方、メモにないこと

料金と契約は、AIの外に置く。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、料金を料金表から、空いている時間を時間割から入れること、AIの下書きに金額や「成績が上がります」といった言葉が入っていないかを機械的に確かめることが、それに当たります。

契約の書面は、特に人が用意します。学習塾は、特定商取引法の「特定継続的役務提供」に当たる場合があります。期間が2か月を超え、入学金や教材費も含めた総額が5万円を超える契約が対象で、契約の前に概要を書いた書面を渡すことなどが決められています(消費者庁の特定商取引法ガイド、同法施行令による)。書面を受け取った日から数えて8日以内なら、保護者は契約を解除できます(同法第48条、いわゆるクーリング・オフ)。体験の報告は入塾を考える材料であって、契約の書面ではありません。書面は、法律に沿って用意したものを、別に渡します。

報告は、つまずいたことと始め方を正直に書く

保護者が知りたいのは、子どもがどこでつまずいていて、塾に通うと何から変わるのかです。

  • できていたことだけでなく、つまずいたことも具体的に書きます
  • 始め方の案は、最初の1か月で取り組むことに絞ります
  • 通うかどうかは保護者と本人が決めることなので、答えを急かしません

入塾したあとの毎月の報告の作り方は、塾の保護者への毎月の報告を全員に届ける。講師のメモと点数から下書きする仕組みで説明しています。体験の報告と同じ型で始めると、保護者は入塾の前と後で、同じ形で子どもの様子を受け取れます。

塾長の仕事は、メモを確かめてその日のうちに送ることになる

仕組みが入ると、体験授業のあとは次のように変わります(想定です)。

今まで 仕組みが入ったあと
保護者に伝わること 迎えのときの立ち話 読み返せる体験の報告
講師の見た様子 塾長が口で伝える 決まった項目のメモから報告になる
料金と時間 パンフレットを渡す 学年とコースに合う料金と空き時間を書く
連絡の時期 数日後の電話 体験の日のうち
契約の書面 入塾のときに渡す 変わらず、法律に沿って人が用意する

経営への効果は、体験から入塾につながる家庭が増えること

この仕組みの効果は、時間よりも、体験に来た家庭が入塾につながることにあります。塾の売上は、通う生徒の数で決まります。子どもの数が減るなかで、体験に来た家庭を一人でも多く入塾につなげることは、広告を増やすより確かな方法です。

時間で見ると、仮に塾長が体験のあとの連絡に1件30分かけていたものが、下書きを確かめる10分になれば、1件20分が浮きます。月15件の体験がある塾なら月5時間、1時間あたりの人件費を仮に2,500円として月約1万2,500円分です。保護者面談の準備の作り方は、塾の保護者面談の準備を1人10分に。点数は計算で、話す順番はAIでで説明しています。

費用は小さく、AIの利用料は月50円ほど

作る順番と、かかる日数

  1. 講師のメモの項目と、報告の型と、書いてはいけないことを決め、見本を選ぶ(塾:塾長、半日)。ここがいちばん大事です
  2. 料金表と時間割を、表から引ける形にする(塾:事務、半日)
  3. 講師のメモを受け取り、AIに下書きさせ、料金と空き時間を差し込む仕組みを作る(作る人、1人日)
  4. 1か月、実際の体験授業で試して直す(作る人、0.5人日)

作る費用

作る費用 = 作る人の日数(人日)× 1日あたりの単価

上の手順3〜4で、作る側の目安は合計1.5人日です。

毎月の費用

費用 中身 想定の会社での目安
AIの利用料 1件の体験の報告の下書きごとにかかる 月15件で50円ほど(下の計算)
連絡の道具・表計算 すでに使っているもの 追加0円の想定
保守 報告の型と見本、料金表の更新 月1時間

AIの利用料は、読ませた量と書かせた量で決まります。2026年10月7日時点のAnthropic社のClaude(Sonnet 5.5)の公式料金は、読ませる量100万トークン(AIが文字を数える単位)あたり2ドル、書かせる量100万トークンあたり10ドルです。1件あたりメモと問い合わせの内容とスキルで5,000トークンを読ませ、1,200トークンを書かせると見積もると、0.022ドル、1ドル150円で約3.3円です。月15件で50円ほどです。

何か月で取り戻せるか

取り戻すまでの月数 = 作る費用 ÷(月に浮く金額 − 毎月の費用)

時間だけで見ると、仮に作る費用が9万円、毎月の費用(利用料と保守の時間)を約2,500円とすると、月約1万2,500円分が浮く塾でおよそ9か月です。ただ、体験に来た家庭が1件でも多く入塾すれば、その月謝で作る費用は早く取り戻せます。体験が月に数件の塾なら、仕組みは作らず、報告の型をスキルにして、塾で契約したAIのチャットにメモを貼って下書きさせるやり方で十分です。

必要な人は3役で、送るのは塾長

役 誰が すること 時間
メモを残す人 体験授業をした講師 決まった項目で5分のメモを残す 1件5分
確かめて送る人 塾長 下書きを読み、料金と時間を確かめて送る。契約の書面を用意する 1件10分
作る人 塾の詳しい人か、外の作り手 受け取り、下書き、差し込みを作る 最初の1.5人日

いちばん大事なのは、体験の日のうちに送ることです。翌日になると、保護者の関心も、講師の記憶も薄れます。

1か月で報告がそろい、半年で入塾の割合の変化が分かる見込み

どこまでいけるかは、講師のメモがどれだけ具体的に残るかで決まります。目安は次のとおりです。

時期 見込み
最初の1か月 実際の体験授業で試す。保護者から聞かれたことを型に足す
3か月 講師の全員がメモの項目に慣れる。報告がそろう
半年 体験から入塾した割合を、仕組みの前と比べられる

効果を確かめるには、次の3つを記録します。

  • 体験から報告を送るまでの時間:件ごとに記録します
  • 体験から入塾した件数と割合:月ごとに数えます
  • 入塾しなかった理由:聞けたものは一覧に残します

約束や料金をAIに書かせると失敗する

作る側から見て、よくある失敗は次の4つです。

  • 成績や合格を約束する言葉が混ざる。 書いてはいけないことに入れ、機械的に確かめます
  • 料金をAIに書かせる。 料金表から入れます
  • 体験の報告を契約の書面の代わりにする。 契約の書面は、法律に沿って別に用意します
  • 入塾を急かす。 「今月中に」などの言い方は使わず、保護者と本人が決めるのを待ちます

生徒と保護者の情報は、外に出してはいけない情報です。塾で契約した、入力をAIの学習に使わないプランで扱い、塾の決まりに書いておきます。決め方は社員が安心してAIを使える会社にする、A4で1枚の社内ルールにまとめています。

まとめ

  • 体験授業のあと、講師がやったこと、できていたこと、つまずいたこと、本人の様子を決まった項目でメモに残す
  • AIがメモから、保護者への体験の報告と、通うとしたら最初の1か月で何から取り組むかの案を下書きする
  • 料金と空いている時間は料金表と時間割から入れ、成績や合格の約束は書かせない
  • 塾長が確かめて、体験の日のうちに送る。契約の書面は特定商取引法に沿って人が別に用意する
  • 作る側の目安は1.5人日で、AIの利用料は月50円ほど。価値は時間より、体験から入塾につながる家庭が増えること

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