預かった物件をその日に掲載する。物件資料からAIが紹介文を下書き
この記事では、小さな不動産会社の反響を逃さない。AIで物件紹介文と返事を速くする方法の「物件紹介文は、物件資料からAIが下書きする」を、仕組みとして作る方法を説明します。
一言でいうと、物件資料(間取り、設備、周りの施設、道路距離)と、営業が現地で気づいたひと言を、決まった形の表に入れる。徒歩の時間は道路距離から計算して差し込み、AIがポータルサイトに載せる紹介文を下書きする。使ってはいけない言葉は一覧と照らし、営業が事実を確かめて掲載するという形です。預かった物件を、その日のうちに掲載できるようにします。
掲載が早いほど、反響を受ける期間が長くなる
小さな不動産会社では、営業が物件の預かり、案内、契約、管理の連絡を少ない人数で回しています。帝国データバンクの2026年4月の調査では、正社員が足りないと答えた企業は50.6%で、4年続けて半数を超えています(PR TIMESと財経新聞に掲載された同社の発表による)。
物件の紹介文は、掲載しなければ反響が始まりません。預かってから掲載までが3日かかれば、その3日間は問い合わせを受ける機会がありません。売主や貸主から見ても、預けてすぐに掲載してくれる会社は頼りになります。紹介文の作成を速くすることは、反響の機会と、次の物件の預かりの両方につながります。
今は紹介文を、営業が忙しい合間に一から書いている
多くの小さな不動産会社では、紹介文が次のように作られています。
- 物件を預かったら、営業が現地を見て、間取り図と設備の一覧をそろえる
- 事務所に戻り、物件資料を見ながら紹介文を考える。1件30分ほどかかる
- 忙しい週は、掲載が数日遅れる
- 書く人によって中身がばらばらで、周りの施設や現地で気づいたよさが書かれないこともある
急いで書くと、徒歩の時間を計算し間違えたり、確かめていない言葉を書いてしまったりするおそれもあります。
表に入れ、徒歩の時間を計算し、AIが書き、営業が確かめる
仕組みは4つの段でできています。
1. 入れる:物件資料と現地のひと言を、決まった形の表に入れる。 物件を預かったら、営業が次のことを表に入れます。
- 所在地、種別、価格か賃料、間取り、面積、築年月
- 設備(給湯、空調、収納、駐車場、宅配ボックスなど)
- 駅やバス停、スーパー、学校、病院などまでの道路距離
- 現地で気づいたこと(「南向きで冬も明るい」「スーパーまで平らな道」「2階でも眺めが開けている」)
2. 計算する:徒歩の時間を、道路距離から計算する。 ここはAIの仕事ではありません。不動産の表示に関する公正競争規約では、徒歩の時間は、道路に沿った距離80mを1分として計算し、80m未満の端数は切り上げて1分とすると決められています(三井住友トラスト不動産と三菱地所の住まいリレーの用語集に同じ説明があります。宅建試験の過去問の解説でも、端数を切り捨てるのは誤りとされています)。道路距離が1,000mなら12.5分なので「徒歩13分」です。表計算の式で計算し、紹介文に差し込みます。
3. 下書きする:AIが紹介文を書く。 AIに、表の内容と、計算した徒歩の時間と、会社の紹介文の型を渡し、紹介文を下書きさせます。
- 最初の一文で、この物件のいちばんのよさ(現地で気づいたことから)
- 間取りと設備の特徴
- 周りの施設と、そこまでの徒歩の時間
- どんな人の暮らしに合いそうか
4. 確かめて掲載する:使ってはいけない言葉を照らし、営業が確かめる。 下書きに、使ってはいけない言葉や、表にない事実が入っていないかを一覧と照らします。営業が事実を確かめて直し、掲載します。
紹介文の型をスキルにし、徒歩の時間と言葉の確かめはAIの外に置く
この仕組みが毎回同じ質で回るかどうかは、AIに渡す決まりと、AIの外の仕組みで決まります。作る側から見ると、ここが「AIを使う」と「使いこなす」の差です。
紹介文の型と会社の言葉を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、次のものをスキルにします。
- 紹介文の型:最初の一文、間取りと設備、周り、合う暮らし、の順と長さ
- 良い紹介文の見本:反響の多かった紹介文を、種別ごとに3つずつ
- 会社の言葉づかい:会社として使う言い方、避ける言い方
- 書いてはいけないこと:表にない設備や施設、確かめていない評価の言葉、徒歩の時間の自分での計算
徒歩の時間と言葉の確かめは、AIの外に置く。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、徒歩の時間を表計算の式で出して差し込むこと、AIの下書きに入った数字(価格、面積、徒歩の時間、築年)が表と一致しているかを機械的に照らすこと、社内で決めた使ってはいけない言葉の一覧と照らすことが、それに当たります。AIは、「駅近」「閑静」のような、確かめていない言葉を足すことがあります。
使ってはいけない言葉は、社内の一覧で照らす
不動産の広告には、業界の決まりがあります。不動産の表示に関する公正競争規約は、公正取引委員会と消費者庁長官が認定した、不動産の広告に関する業界の決まりです(三井住友トラスト不動産の用語集による)。
会社では、この決まりと、加盟している団体の案内をもとに、使ってはいけない言葉や、使うときに根拠が要る言葉の一覧を作っておきます。AIの下書きにその言葉が入っていたら、印を付けて営業に知らせます。判断に迷う言葉は、使わないか、加盟している団体に確かめます。
紹介文で反響が来たあとの返事と追客は、決まらなかったお客様を取り戻す。新着物件をAIで一人ずつ知らせる仕組みで説明しています。
営業の仕事は、現地のひと言を入れて確かめることになる
仕組みが入ると、紹介文の作成は次のように変わります(想定です)。
| 今まで | 仕組みが入ったあと | |
|---|---|---|
| 紹介文 | 営業が一から書く。1件30分ほど | 下書きを確かめて直す。1件10分ほど |
| 徒歩の時間 | 手で計算する | 道路距離から式で計算して差し込む |
| 現地で気づいたこと | 書かれないことがある | 表に入れたことが最初の一文になる |
| 使ってはいけない言葉 | 書いた人の注意次第 | 一覧と照らして印が付く |
| 掲載の時期 | 数日後になることがある | 預かったその日 |
経営への効果は、掲載が早くなり、反響と預かりが増えること
効果は、前提を置いて計算します。仮に、1件の紹介文に30分かかっていたものが、下書きを確かめて直す10分になれば、1件20分が浮きます。月40件の物件を掲載する会社なら月約13時間、1時間あたりの人件費を仮に2,500円として月約3万3,000円分です。
ただ、大きいのは時間だけではありません。預かったその日に掲載できれば、反響を受ける期間が長くなります。現地で気づいたよさが紹介文に入れば、物件の魅力が伝わりやすくなります。売主や貸主にとって、すぐに掲載してくれる会社は、次の物件も預けたい会社です。
費用は作る費用が中心で、AIの利用料は月120円ほど
作る順番と、かかる日数
- 紹介文の型と、使ってはいけない言葉の一覧と、書いてはいけないことを決め、見本を選ぶ(会社:社長と営業、半日〜1日)。ここがいちばん大事です
- 物件資料を入れる表の形を決める(会社:営業、半日)
- 表から徒歩の時間を計算し、AIに紹介文を下書きさせる仕組みを作る(作る人、1人日)
- 数字の照らし合わせと、言葉の一覧との照らし合わせを作る(作る人、0.5人日)
- 1か月、実際の物件で試して直す(作る人、0.5人日)
作る費用
作る費用 = 作る人の日数(人日)× 1日あたりの単価
上の手順3〜5で、作る側の目安は合計2人日です。
毎月の費用
| 費用 | 中身 | 想定の会社での目安 |
|---|---|---|
| AIの利用料 | 1件の紹介文の下書きごとにかかる | 月40件で120円ほど(下の計算) |
| 表計算 | すでに使っているもの | 追加0円の想定 |
| 保守 | 紹介文の型と言葉の一覧の更新 | 月1時間 |
AIの利用料は、読ませた量と書かせた量で決まります。2026年10月7日時点のAnthropic社のClaude(Sonnet 5.5)の公式料金は、読ませる量100万トークン(AIが文字を数える単位)あたり2ドル、書かせる量100万トークンあたり10ドルです。1件あたり表の内容と見本とスキルで6,000トークンを読ませ、800トークンを書かせると見積もると、0.02ドル、1ドル150円で約3円です。月40件で120円ほどです。
何か月で取り戻せるか
取り戻すまでの月数 = 作る費用 ÷(月に浮く金額 − 毎月の費用)
仮に作る費用が12万円、毎月の費用(利用料と保守の時間)を約2,600円とすると、月約3万3,000円分が浮く会社でおよそ3.9か月です。掲載が月に数件の会社なら、紹介文の型と言葉の一覧をスキルにして、会社で契約したAIのチャットに表を貼って下書きさせるやり方で十分です。そのときも、徒歩の時間は自分で計算して入れます。
必要な人は3役で、事実を確かめるのは営業
| 役 | 誰が | すること | 時間 |
|---|---|---|---|
| 入れて確かめる人 | 担当の営業 | 物件資料と現地のひと言を表に入れ、下書きを確かめて掲載する | 1件10分 |
| 決まりを保つ人 | 社長か宅建士 | 使ってはいけない言葉の一覧を保ち、迷う言葉を判断する | 月1時間 |
| 作る人 | 社内の詳しい人か、外の作り手 | 計算、下書き、照らし合わせを作る | 最初の2人日 |
いちばん大事なのは、現地で気づいたことを表に入れることです。物件資料だけでは、どの会社が書いても同じ紹介文になります。
1か月で型がそろい、半年で反響の変化が分かる見込み
どこまでいけるかは、紹介文の見本と現地のひと言がどれだけそろうかで決まります。目安は次のとおりです。
| 時期 | 見込み |
|---|---|
| 最初の1か月 | 実際の物件で試す。営業が直したところを型に足す |
| 3か月 | 種別ごとの見本がそろい、営業の全員が使える |
| 半年 | 預かりから掲載までの日数と、掲載から最初の反響までの日数を、仕組みの前と比べられる |
効果を確かめるには、次の3つを記録します。
- 預かりから掲載までの日数:物件ごとに記録します
- 掲載1件あたりの反響の数:月ごとに比べます
- 言葉の一覧で印が付いた数:一覧と型を見直す材料にします
徒歩の時間や確かめていない言葉をAIに任せると失敗する
作る側から見て、よくある失敗は次の4つです。
- 徒歩の時間をAIに計算させる。 道路距離から式で計算して差し込みます
- 確かめていない言葉を残す。 使ってはいけない言葉の一覧と照らします
- 表にない設備や施設を書かせる。 数字と事実は表と照らします
- 現地のひと言を入れない。 物件資料だけでは、ほかの会社と同じ紹介文になります
売主や貸主の情報は、外に出してはいけない情報です。会社で契約した、入力をAIの学習に使わないプランで扱い、社内の決まりに書いておきます。決め方は社員が安心してAIを使える会社にする、A4で1枚の社内ルールにまとめています。
まとめ
- 物件を預かったら、物件資料と道路距離と、現地で気づいたひと言を決まった形の表に入れる
- 徒歩の時間は、道路距離80mを1分とし端数を切り上げる決まりに沿って、表計算の式で出して差し込む
- AIが会社の型で紹介文を下書きし、最初の一文には現地で気づいたよさを置く
- 数字は表と、言葉は使ってはいけない言葉の一覧と照らし、営業が事実を確かめて掲載する
- 費用は作る費用が中心で、作る側の目安は2人日。AIの利用料は月120円ほど