中古車の見積書は出す前に点検|支払総額と費用の項目をAIで照らす
この記事では、中古車販売店のAI活用|支払総額の表示を守り、問い合わせと見積を早くするの「見積書は、費用の項目を決まりの表と照らす」を、実際に組んで続ける方法を説明します。
一言でいうと、社長が費用の項目の決まりを表にする。営業が見積書を作ったら、AIが見積の項目と、その車に表示した支払総額を決まりの表と照らし、合計の違い、表にない名前の費用、車両価格とは別に入った点検整備や保証の費用に印を付ける。社長が印を確かめて直してから、お客さまに出す。月に1回、印の数と理由をまとめ、見積の型と営業の説明を直すという形です。
見積の合計が支払総額と違うと、お客さまの信頼を失う
くるまのニュースとベストカーWebの記事によると、2023年10月1日から、自動車公正取引協議会の自動車公正競争規約・施行規則により、中古車の価格は支払総額で表示することが求められています。
ベストカーWebの記事による、見積に関わる主な決まりは次のとおりです。
- 支払総額は、車両価格と諸費用の合計。 諸費用は、保険料、税金、登録などに伴う費用です
- 点検整備と保証は車両価格に含める。 定期点検整備や保証を付けて売る場合、その費用は車両価格に含めて表示します
- 支払総額のほかに別の費用を求めるのは規約違反。 ローンの手数料は別です
くるまのニュースによると、自動車公正取引協議会の調査では、中古車サイトで「保証なし・整備なし」と表示しながら、見積書で保証や整備、納車準備費用を上乗せし、「これらの費用は除外できない」と説明する販売店があったといいます。
お客さまは、サイトで見た支払総額を持って来店します。見積の合計がその額と違えば、理由を聞かれ、説明できなければ信頼を失います。見積書を出す前の点検は、トラブルを防ぐと同時に、店の信頼を守る仕事です。細かな基準は、自動車公正取引協議会の最新の資料で確かめてください。2026年10月時点の情報です。
今は、見積書の中身を作った営業しか見ていない
小さな販売店では、営業がその場で見積書を作り、そのままお客さまに出すことがよくあります。忙しい週末ほど、社長が全部の見積書に目を通すのは難しくなります。
見積の型が古いままで、以前の名前の費用が残っていたり、営業ごとに費用の入れ方が違っていたりすることもあります。悪意がなくても、決まりから外れた見積書が出てしまうことがあります。
決まりを表にし、AIが照らし、社長が直す
1 決める(人)。 社長が、費用の項目の決まりを表にします。
2 照らす(AI)。 営業が見積書を作ったら、見積の項目の一覧と、その車に表示した支払総額をAIに渡し、決まりの表と照らして印を付けてもらいます。
3 直す(人)。 社長が印を確かめ、直してからお客さまに出します。
4 まとめる(AI)。 月に1回、その月に印の付いた見積の一覧をAIに渡し、印の数と理由をまとめてもらいます。社長はそれを見て、見積の型や営業の説明を直します。
決まりの表と、AIへの頼み方はこうなる
決まりの表(見本。自社の扱いに合わせて、自動車公正取引協議会の資料で確かめて作ります):
| 項目 | 扱い |
|---|---|
| 車両価格 | 表示した車両価格と同じか |
| 点検整備の費用 | 付けて売る場合は車両価格に含める。別の行にしない |
| 保証の費用 | 付けて売る場合は車両価格に含める。別の行にしない |
| 保険料・税金 | 諸費用。支払総額に含める |
| 登録などに伴う費用 | 諸費用。支払総額に含める |
| 表にない名前の費用 | 印を付け、社長が確かめる |
| お客さまの希望で付けたもの | 理由を見積書に書き、社長が確かめる |
| ローンの手数料 | 支払総額とは別 |
AIに渡す指示(見本。内容は架空です):
下は、当店の見積書の項目の一覧と、その車に表示した支払総額と、費用の項目の決まりの表です。見積を決まりの表と照らし、次の点に印を付けて理由を書いてください。1 見積の合計(ローンの手数料を除く)が表示した支払総額と違う。2 決まりの表にない名前の費用がある。3 点検整備や保証の費用が、車両価格と別の行に入っている。4 お客さまの希望で付けたものに理由が書いていない。直した見積は作らず、印と理由だけを返してください。
返ってくる点検(見本):
- 合計が表示した支払総額より3万3,000円多い(下の2つの行の分)
- 「納車準備費用 22,000円」…決まりの表にない名前の費用です
- 「保証料 11,000円」…保証の費用が、車両価格と別の行に入っています
お客さまへの費用の説明も、点検のあとに下書きする
点検を通った見積書でも、お客さまから「この費用は何ですか」と聞かれることがあります。保険料、税金、登録などに伴う費用は、お客さまにとって分かりにくい項目です。
点検のあとに、見積の項目ごとの説明をAIに下書きしてもらうと、営業の説明がそろいます。
- 諸費用の中身:税金、保険料、登録などに伴う費用を、1行ずつやさしい言葉で書く
- 車両価格に含めたもの:点検整備や保証を付けて売る車は、その内容(点検の項目、保証の期間)を書く
- お客さまの希望で付けたもの:何を、なぜ付けたかを書く
説明の文は、社長が決めた言い方で書くよう、スキルに型を入れておきます。金額は見積書の数字をそのまま使い、AIに書き換えさせません。
決まりの表をスキルにし、直す判断はAIの外に置く
決まりの表を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、「費用の項目の決まりの表」「印の付け方と理由の書き方」「月のまとめの型(印の種類ごとの数、営業ごとの数、よく出る費用の名前)」「書いてはいけないこと(直した見積、金額の判断、値引きの提案)」をスキルにします。
直す判断は、AIの外に置く。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、社長が決まりの表を作って更新すること、印を社長が確かめて直すこと、見積の合計の計算を見積の仕組みや表で行うこと、点検を通っていない見積書を出さない決まりがそれに当たります。
社長の仕事は、表を作り、印を確かめ、型を直すこと
社長がすることは、次の3つです。
- 決まりの表を作り、更新する。 自動車公正取引協議会の資料で確かめて作り、資料が変わったら更新します
- 印を確かめて直す。 1件数分で確かめられる量です。印がなければ、そのまま出します
- 月に1回、型を直す。 同じ印が何度も出るなら、見積の型から古い項目を消し、営業に説明の仕方を伝えます
経営への効果は、トラブルを防ぎ、信頼を守ること
- お客さまとのトラブルを防ぐ。 サイトで見た支払総額と見積の合計の違いを、出す前に見つけます
- 営業ごとのばらつきが減る。 同じ決まりの表で点検するので、見積の作り方がそろいます
- 見積の型が整う。 月のまとめで、古い項目や説明の抜けに気づけます
効果を確かめるには、出す前の点検で印の付いた見積の数と、お客さまからの費用の問い合わせの数を、月ごとに数えます。
費用はAIの利用料が1件3円ほど
| 費用 | 見込み |
|---|---|
| AIの利用料 | 見積の項目と決まりの表(入力4千トークン・出力1千トークンほど)の点検が、Claude Sonnet 5.5の料金(入力100万トークンあたり2ドル、出力10ドル、1ドル150円で計算)で1件3円ほど |
| 法人向けプラン | チャットで使うなら1人あたり月数千円 |
| 社長の時間 | 表づくりに1〜2時間、印の確認に1件数分 |
必要な人は2役で、出すかを決めるのは社長
- 営業:見積書を作り、AIに点検させ、社長に回す
- 社長:決まりの表を作り、印を確かめて直し、月に1回、型を直す
1か月で表が固まり、3か月で印の数が減る見込み
- 1週目:決まりの表を作り、今の見積の型を点検させて、古い項目を消す
- 2〜4週目:すべての見積書を、出す前に点検する
- 2か月目から:月に1回、印の数と理由をまとめ、型と説明を直す
- 3か月目:印の付いた見積の数が、始めたころより減っているかを数える
AIに直した見積を作らせると失敗する
よくある失敗は次の3つです。
- AIに直した見積を作らせる。 AIが金額を書き直すと、計算の間違いが混ざることがあります。AIには印と理由だけを返させ、直すのは人が行います
- 決まりの表を作らずに頼む。 「規約に合っているか見て」とだけ頼むと、答えが毎回変わります。自動車公正取引協議会の資料で確かめて作った表を必ず渡します
- 表示した支払総額を渡さない。 見積の合計と比べる元がないと、合計の違いに気づけません。在庫の表の支払総額を一緒に渡します
まとめ
- 2023年10月から、中古車の価格は支払総額で表示し、支払総額のほかに別の費用を求めるのは規約違反になった。見積の合計が表示と違うと、お客さまの信頼を失う
- 社長が費用の項目の決まりを表にし、AIが見積と表示した支払総額を照らして、合計の違い、表にない名前の費用、別の行の点検整備や保証の費用に印を付ける
- 社長が印を確かめて直してから出し、AIには直した見積を作らせない
- 月に1回、印の数と理由をまとめ、見積の型と営業の説明を直す
- 費用はAIの利用料が1件3円ほどで、3か月で印の数が減るかを確かめる