業務への組み込み例

行事の準備を毎年一から考えない。去年の記録からAIが段取りと案内を下書き

この記事で変わる経営指標

この記事では、小さな保育園の書きものをAIで減らす。保育士が子どもと向き合う時間を守るの「行事の準備は、去年の記録から段取りと案内を下書きする」を、園の仕組みとして作る方法を説明します。

一言でいうと、行事が終わるたびに、段取りと反省を決まった形で残しておく。翌年は、行事の日から逆算した準備の日付を計算で出し、AIが去年の記録から今年の段取りの一覧と保護者への案内を下書きする。職員の配置と、下見や経路などの安全の確認は、園長と担当の保育士が決めるという形です。毎年一から考えていた行事の準備を、去年の続きから始められるようにします。

子どもが減るなかで、保護者に選ばれる行事が大事になる

親の記事で触れたとおり、厚生労働省の人口動態統計(概数)では、2025年の日本人の出生数は67万1,236人で過去最少でした(共同通信の配信を掲載した熊本日日新聞でも同じ数字が報じられています)。子どもが減れば、保護者は園を選ぶようになります。

運動会や発表会は、保護者が園での子どもの姿を見られる数少ない機会です。行事の準備に追われて保育士が疲れ切ってしまえば、毎日の保育にも響きます。準備の手間を減らしながら、行事の質を落とさないことが、保護者に選ばれ、保育士が辞めない園につながります。

今は行事の準備が、毎年担当の保育士の頭の中で一から作られている

多くの小さな保育園では、行事の準備が次のように進みます。

  1. 担当になった保育士が、去年の資料を探す。見つからないこともある
  2. 何をいつまでに準備するかを、思い出しながら一覧にする
  3. 保護者への案内を書き、園長に見てもらう
  4. 行事が終わると、反省会で出た意見はその場で終わり、翌年に残らない

担当が替わると、去年うまくいったことも、失敗したことも引き継がれません。準備は、保育の合間や、子どもが帰ったあとの時間に回ります。

残し、日付を出し、AIが書き、園長が決める

行事が終わるたびに段取りと反省を決まった形で残し、翌年は行事の日から逆算した準備の日付を計算で出す。AIが去年の記録から今年の段取りの一覧と保護者への案内を下書きし、職員の配置と安全の確認は園長と担当の保育士が決める
行事が終わるたびに段取りと反省を決まった形で残し、翌年は行事の日から逆算した準備の日付を計算で出す。AIが去年の記録から今年の段取りの一覧と保護者への案内を下書きし、職員の配置と安全の確認は園長と担当の保育士が決める

仕組みは4つの段でできています。

1. 残す:行事が終わったら、段取りと反省を決まった形で残す。 行事が終わった週のうちに、担当の保育士が次のことを残します。話して録音し、文字にしたものでもかまいません。

  • 準備したことと、それを始めた時期(「招待状は3週間前に配った」)
  • 当日の流れと、職員の配置
  • うまくいったこと(「入場の順番を学年ごとにしたら混乱しなかった」)
  • 困ったこと、来年変えたいこと(「雨の日の連絡が遅れた」「駐車場が足りなかった」)
  • 保護者から寄せられた声

2. 出す:行事の日から逆算した準備の日付を、計算で出す。 ここはAIの仕事ではありません。今年の行事の日を行事予定から入れると、去年の記録の「何週間前に何をしたか」から、今年の準備の日付を表計算で出します。祝日や園の休みと重なる日には印を付けます。

3. 下書きする:AIが段取りの一覧と、保護者への案内を書く。 AIに、去年の記録と反省と、計算で出した日付の表を渡し、次のものを下書きさせます。

  • 今年の段取りの一覧(何を、誰が、いつまでに)。去年の「来年変えたいこと」を反映したもの
  • 保護者への案内(日時、場所、持ち物、駐車場、雨の日の扱い)
  • 職員の打ち合わせで話し合うことの一覧

4. 決める:配置と安全の確認は、園長と担当が決める。 園長と担当の保育士が、段取りの一覧を見て、職員の配置と、安全の確認を決めます。案内を読んで直し、保護者に配ります。

記録の型をスキルにし、日付と安全の確認はAIの外に置く

この仕組みが毎年同じ質で回るかどうかは、AIに渡す決まりと、AIの外の仕組みで決まります。作る側から見ると、ここが「AIを使う」と「使いこなす」の差です。

記録と案内の型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、次のものをスキルにします。

  • 行事の記録の型:準備したことと時期、当日の流れと配置、うまくいったこと、来年変えたいこと、保護者の声
  • 案内の型:日時、場所、持ち物、駐車場、雨の日の扱い、問い合わせ先の順で書く
  • 園の言葉づかい:保護者に向けた案内の見本を3つ
  • 書いてはいけないこと:職員の配置の決定、安全についての約束、子どもの名前や個別の事情、記録にないこと

日付と安全の確認は、AIの外に置く。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、準備の日付を表計算で出すこと、案内の日時と場所が行事予定と一致しているかを照らすこと、安全の確認の項目を園で決めた一覧として持ち、AIの下書きとは別に担当が確かめることが、それに当たります。

園外の行事は、下見と役割分担を園で決める

遠足や散歩のような園外の行事では、安全の確認が欠かせません。文部科学省のサイトに掲載されている「保育所等における園外活動時の安全管理に関する留意事項」では、目的地や経路について事前に安全の確認を行い、職員間で情報を共有するとともに、職員の体制と役割分担、緊急のときの連絡方法などを検討して必要な対策をとることが示されています。東京都の通知でも、園外活動のときも含め、常に園児の行動の把握に努め、職員間の役割分担を確認するよう求められています。

この部分は、AIに考えさせる仕事ではありません。園で安全の確認の一覧(下見の日、経路の危ないところ、人数を数える場面、緊急のときの連絡の順番)を決めておき、担当の保育士が毎回確かめます。AIの下書きには、去年の反省で出た安全のことがらを一覧の形で並べさせ、見落としを防ぐ材料にします。

行事の案内は、クラスだよりと一緒に配ることも多いはずです。クラスだよりの作り方は、クラスだよりを夜に書かない。担任のメモと行事予定からAIが下書きする仕組みで説明しています。

担当の仕事は、去年の続きから始めて確かめることになる

仕組みが入ると、行事の準備は次のように変わります(想定です)。

今まで 仕組みが入ったあと
去年の資料 探しても見つからないことがある 行事ごとに決まった形で残っている
準備の日付 思い出しながら決める 行事の日から計算で出る
去年の反省 反省会で終わる 今年の段取りに入っている
保護者への案内 一から書く 下書きを確かめて直す
担当が替わったとき 準備が止まる 記録から続きを始められる

経営への効果は、担当が替わっても行事が止まらないこと

この仕組みの効果は、時間よりも、担当が替わっても行事の質が落ちないことにあります。保育園では、職員の入れ替わりや配置の変更で、行事の担当が毎年替わることもあります。去年の反省が今年の段取りに入っていれば、同じ失敗を繰り返さずに済みます。

保育士の負担が減ることも大きい点です。子どもが帰ったあとに行事の準備を一から考える時間が減れば、そのぶん保育の準備や休みに回せます。人が足りないなかで保育士が辞めないことは、園を続けるうえで欠かせません。保育日誌の書き方を軽くする仕組みは、保育日誌は一言で残す。保育士の話した様子からAIが日誌を下書きする仕組みで説明しています。

費用はほとんどかからず、AIの利用料は年に100円ほど

行事の準備は、年に十数回です。毎日の書きもののように仕組みを作り込む必要はありません。記録の型と案内の型をスキルにして、園で契約したAIのチャットで進めるのが現実的です。

始める順番

  1. 行事の記録の型と、案内の型と、書いてはいけないことを決める(園:園長と主任、半日)。ここがいちばん大事です
  2. 園の安全の確認の一覧を、園外の行事と園内の行事に分けて決める(園:園長と主任、半日)
  3. 次の行事が終わったら、記録の型で残す(担当の保育士、30分)
  4. 準備の日付を逆算する表計算の表を作る(園:事務か詳しい職員、1時間)

毎月の費用

費用 中身 目安
AIの利用料 1つの行事の段取りと案内の下書きごとにかかる 年12行事で90円ほど(下の計算)
表計算・チャット すでに使っているもの 追加0円の想定
保守 記録と案内の型の見直し 年に一度

AIの利用料は、読ませた量と書かせた量で決まります。2026年10月7日時点のAnthropic社のClaude(Sonnet 5.5)の公式料金は、読ませる量100万トークン(AIが文字を数える単位)あたり2ドル、書かせる量100万トークンあたり10ドルです。1つの行事あたり去年の記録と日付の表とスキルで10,000トークンを読ませ、3,000トークンを書かせると見積もると、0.05ドル、1ドル150円で約7.5円です。年12行事で90円ほどです。園で契約したプランのチャットで使うなら、追加の費用はかかりません。

必要な人は3役で、配置と安全を決めるのは園長

役 誰が すること 時間
残して確かめる人 担当の保育士 行事のあとに記録を残し、翌年は下書きを確かめる 1行事あたり1時間ほど
決める人 園長 職員の配置と安全の確認を決め、案内を確かめる 1行事あたり30分
型を整える人 主任 記録と案内の型と、安全の確認の一覧を見直す 年に一度

いちばん大事なのは、行事が終わった週のうちに記録を残すことです。翌月になると、困ったことの細かいところは忘れてしまいます。

1年で行事の記録がそろい、2年目から楽になる見込み

この仕組みは、記録がたまってから効いてきます。目安は次のとおりです。

時期 見込み
1年目 行事が終わるたびに記録を残す。準備はこれまでどおりでもよい
2年目 去年の記録から段取りと案内を下書きする。反省を反映する
3年目以降 2年分の記録と反省がそろい、担当が替わっても準備が止まらない

効果を確かめるには、次の3つを記録します。

  • 行事の準備にかかった時間:担当の保育士が、おおよその時間を残します
  • 去年の反省が今年の段取りに入った数:反省のうち、いくつ変えられたかを数えます
  • 保護者からの問い合わせの数:案内が分かりやすくなったかを見ます

安全の判断や配置をAIに任せると失敗する

よくある失敗は次の4つです。

  • 職員の配置をAIに決めさせる。 配置は、子どもの人数と職員の状況を知っている園長が決めます
  • 安全の確認をAIの下書きに任せる。 園で決めた安全の確認の一覧を、担当が毎回確かめます
  • 記録を残さない。 記録がなければ、翌年のAIの下書きも作れません
  • 子どもの名前や個別の事情を記録に書く。 行事の記録は段取りと反省に絞り、個人の情報は入れません

保護者や子どもの情報は、外に出してはいけない情報です。園で契約した、入力をAIの学習に使わないプランで扱い、園の決まりに書いておきます。決め方は社員が安心してAIを使える会社にする、A4で1枚の社内ルールにまとめています。

まとめ

  • 行事が終わった週のうちに、準備したことと時期、当日の配置、うまくいったこと、来年変えたいことを決まった形で残す
  • 翌年は、行事の日から逆算した準備の日付を表計算で出す
  • AIが去年の記録から、今年の段取りの一覧と保護者への案内を下書きし、去年の反省を反映する
  • 職員の配置と、下見や経路などの安全の確認は、園で決めた一覧をもとに園長と担当の保育士が決める
  • 行事は年に十数回なので、仕組みを作り込まず、型をスキルにしてチャットで進めれば十分。AIの利用料は年に100円ほど

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