単価の表の作り方|いつからの値段かを残し、見積と請求の食い違いを防ぐ
この記事では、AI導入の準備は取引先・商品・単価の3つから|どの業務でも間違いが減るの「単価の表は、いつからの値段かを残す」を、実際の表と毎月の点検として形にする方法を説明します。
一言でいうと、値上げや値下げのたびに単価を上書きせず、新しい行を足して「いつからの値段か」と理由を残す。見積や請求書を送る前に、AIが単価を表と照らして違う行に印を付ける。担当が元のやり取りと見比べて直してから送る。単価そのものを決めるのは社長と営業という形です。
経営への効果は、値上げの月の請求漏れと、言った言わないを防ぐこと
値上げをしたのに、古い単価のまま請求書を出してしまうと、その差額は会社の損になります。逆に、まだ前の単価のはずの注文に新しい単価で請求すると、取引先との信頼を損ねます。
単価の表に「いつからの値段か」が残っていれば、注文の日付から、どの単価を使うべきかが分かります。あとで取引先から「この請求は前の単価のはずでは」と言われても、表を見て答えられます。
データの誤りは、入るときに防ぐほど安くつく
MarTech と Power Retail は、データの品質について「1-10-100」という考え方を紹介しています。誤りを入力のときに防げば1、あとで見つけて直すと10、放置して問題が起きてから対処すると100の費用がかかる、という考え方です。数字は目安を表すもので、どの会社でもこの比になるわけではありません。
単価も同じです。表に正しい単価が「いつから」と一緒に入っていれば、見積や請求の段階で間違いを止められます。請求書を送ったあとに気づくと、取り消しと出し直し、取引先への説明が要ります。
今は、単価の表を上書きしている
小さな会社では、単価の表を1つ持っていても、値上げのたびに古い単価を新しい単価で上書きしていることがあります。上書きすると、前の単価がいくらで、いつ変わったかが分からなくなります。
値上げの前に受けた注文を、値上げのあとに請求するときに、どちらの単価を使うべきか迷います。取引先ごとに値上げの時期が違うと、さらに分かりにくくなります。担当者の記憶に頼っていると、担当が替わったときに分からなくなります。
足し、AIが照らし、確かめて、送る
1 足す(担当)。 値上げや値下げが決まったら、古い行は消さず、新しい行を足します。いつからの値段かと、理由を書きます。
2 照らす(AI)。 見積や請求書を送る前に、その明細と単価の表をAIに渡し、注文の日付の時点の単価と違う行に印を付けてもらいます。
3 確かめる(担当)。 印の付いた行を、取引先との元のやり取り(注文書、値上げの合意の記録)と見比べます。
4 送る(担当)。 直してから送ります。値上げの月は、特に丁寧に確かめます。
単価の表は、この6つの列で作る
| 列 | 中身の例(想定) |
|---|---|
| 品番 | A-100 |
| 取引先 | 全取引先共通なら「共通」、取引先ごとなら取引先の正式名 |
| 単価 | 1,200 |
| いつから | 2026/10/01 |
| いつまで | 空欄(今の単価)、または次の単価の前日 |
| 理由 | 原材料の値上がり、取引先との合意の日付など |
同じ品番・同じ取引先で、いつからの違う行が並ぶ形になります。今の単価は「いつまで」が空欄の行です。表の中で並べ替えれば、その品番の値段の移り変わりが一目で分かります。
AIへの頼み方と、返ってくる印はこうなる
AIに渡す指示(見本):
下は、今月送る請求書の明細(注文日、取引先、品番、数量、単価)と、当社の単価の表(品番、取引先、単価、いつから、いつまで)です。明細の各行について、注文日の時点で使うべき単価を表から探し、明細の単価と違う行に印を付けてください。表に当てはまる行がないときは「表になし」と書いてください。どちらの単価が正しいかの判断は書かないでください。
返ってくる表(見本の一部。内容は架空です):
注文日 取引先 品番 明細の単価 表の単価 印 9/28 A社 A-100 1,200 1,100(9/30まで) 違う 10/03 A社 A-100 1,200 1,200(10/1から) 10/05 B社 C-300 800 表になし 表になし
9月28日の注文に新しい単価が入っている、という食い違いが見つかります。どちらが正しいかは、取引先との合意の記録で担当が確かめます。
見積を作るときも、同じ表から単価を引く
請求だけでなく、見積を作るときも同じ単価の表を使います。見積と請求で別の表を見ていると、見積の単価と請求の単価が食い違います。
- 見積には、いつまで有効かを書く。 値上げが決まっているなら、見積の有効期限を値上げの前日までにするか、値上げ後の単価も並べて書きます
- 見積の単価にも「いつから」を書き添える。 社内の控えに、どの行の単価を使ったかを残しておくと、受注したときに迷いません
- AIに見積の説明文を頼むときも、表を渡す。 「この表の今の単価だけを使い、表にない値段は書かないでください」と頼みます
取引先ごとの値段は、合意の記録とつなげておく
取引先ごとに単価が違う場合は、なぜその単価になったかが後から分かるようにしておきます。
- 理由の欄に、合意の日と方法を書く。 「2026/9/15 メールで合意」のように書きます
- 合意のメールや書面を、決まった場所に保存する。 単価の表の行から、その記録を探せるようにします
- 合意のない単価は、表に足さない。 口頭で決まった値段は、記録を残してから表に足します
記録とつながっていれば、取引先の担当者が替わっても、単価の理由を説明できます。
表で照らせる所は、AIではなく式で照らす
明細と単価の表が表計算のソフトにあるなら、照らす作業そのものを式にすることもできます。
- 注文日と品番から、その時点の単価を引く式を作る。 この式は、AIに列の名前を伝えて作ってもらえます
- 明細の単価と、式で引いた単価を並べる。 違う行に色が付くようにしておけば、毎月見るだけで済みます
- AIには、式で拾えない所を頼む。 「表になし」の行の理由や、取引先との合意の記録の読み込みなど、文章を読む仕事をAIに頼みます
式の作り方は、毎月の集計を式にする|取引先別の売上表をAIに作ってもらう手順と同じ進め方で、手で確かめられる数行で確かめます。
型をスキルにし、単価を決めることはAIの外に置く
型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、「単価の表の6つの列」「照らし方の決まり(注文日の時点の単価を使う)」「書いてはいけないこと(どちらが正しいかの判断、表にない単価の推測)」をスキルにします。
単価を決めることは、AIの外に置く。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、単価を社長と営業が決めること、表に足すのを担当が行うこと、印の行を元のやり取りで確かめること、照らせる所は式で照らすことがそれに当たります。
費用はAIの利用料が1回4円ほど
| 費用 | 見込み |
|---|---|
| 請求の明細の照らし | 明細と単価の表(入力6千トークンほど)から印の付いた表(出力1,500トークンほど)を作ると、Claude Sonnet 5.5の料金(入力100万トークンあたり2ドル、出力10ドル、1ドル150円で計算)で1回4円ほど |
| 法人向けプラン | チャットで使うなら1人あたり月数千円 |
| 担当の時間 | 表に行を足すのに数分、印の行の確かめに月に30分ほど(想定) |
必要な人は2役で、単価を決めるのは社長と営業
- 社長・営業:取引先と単価を話し合って決め、決まったことを担当に伝える
- 事務の担当:単価の表に行を足し、請求の前にAIで照らし、印の行を確かめて直す
値上げを取引先にお願いするときの資料と依頼文の作り方は、取引先との値上げ交渉|受け入れてもらえる根拠の資料の作り方で説明しています。
1か月で表が整い、値上げの月の請求漏れが減る見込み
- 1週目:今の単価の表を、6つの列の形に直す。分かる範囲で、過去の値上げの行も足す
- 2週目:今月の請求書の明細をAIで照らし、印の行を確かめる
- 3〜4週目:照らせる所を式にし、AIには「表になし」の行の確かめを頼む
- 次の値上げの月:新しい行を足し、その月の請求を特に丁寧に照らす
まとめ
- 単価は上書きせず、新しい行を足して「いつから」と理由を残す
- 見積や請求書を送る前に、AIが注文日の時点の単価と照らし、違う行に印を付ける
- 印の行は、担当が取引先との元のやり取りと見比べて直す
- 表計算で照らせる所は式にし、AIには文章を読む仕事を頼む
- 単価を決めるのは社長と営業で、AIにどちらが正しいかを判断させない