出した見積を放っておかない。返事のない見積をAIで追いかけて受注を増やす
この記事で変わる経営指標
この記事では、出した見積を放っておかず、返事のない見積を追いかけて受注を増やす方法を説明します。一言でいうと、見積の一覧から、出して7日・14日たっても返事のない見積を計算で拾う。AIが見積の中身と打ち合わせのメモから、押しつけにならない確認の連絡を下書きし、営業が確かめて連絡する。断られたら理由を聞いて残し、月に一度AIがまとめるという話です。
AIの価値は、しつこく営業することではありません。忙しさで後回しになっていた「見積のその後」の連絡を、相手に合った言葉で、決まった時期に必ず届けること。そして、断られた理由を次の見積に生かすことです。
経営への効果は、取りこぼした受注を拾い、負けた理由が分かること
見積のあとの動き方は、AIを使うと次のように変わります。
| 今まで | 計算で拾い、AIで連絡を下書き | |
|---|---|---|
| 見積を出したあと | 返事を待つだけ | 7日・14日たった見積が一覧に出る |
| 連絡 | 気になった見積だけ、思い出したときに | 返事のない見積すべてに、決まった時期に |
| 連絡の文面 | 「その後いかがでしょうか」の一行 | 見積の中身と相手の気にしていた点に触れた文面 |
| 断られたとき | 理由を聞かずに終わる | 理由を聞いて残し、月に一度まとめる |
効果の大きさは、前提を置いて考えます。仮に、月に30件の見積を出し、そのうち10件が返事のないまま終わっていたとします。追いかけの連絡で、そのうち月1件でも受注につながれば、1件あたりの粗利がそのまま上乗せされます。1件の粗利が30万円の会社なら、月30万円、年360万円です。自社の数字を当てはめて計算してみてください。
もう一つの効果は、断られた理由が集まることです。「値段が高かった」「納期が合わなかった」「ほかの会社の説明のほうが分かりやすかった」。理由が分かれば、次の見積の出し方を変えられます。
関心が高いうちに連絡するほど、話は進みやすい
米国の調査では、ネットからの問い合わせに1時間以内に連絡した会社は、それより遅く連絡した会社に比べて、相手の決裁者と話せた割合が約7倍だったと報告されています(Harvard Business Review、2011年。数字はCustomerThinkなどの紹介による)。問い合わせの段階の調査ですが、相手の関心が高いうちに連絡するほど話が進みやすい、という考え方は見積のあとにも当てはまります。
見積を出した直後、相手は中身を見比べている最中です。そのときに、疑問に答える連絡が届けば、決めてもらいやすくなります。逆に、何週間もたってから連絡しても、相手はもうほかの会社に決めているか、話そのものが止まっています。
問い合わせへの返事を速くする方法は、問い合わせに1時間以内に返す会社が商談を取る。AIで返事を速くする方法で説明しています。
見積のあとの連絡は、忙しさで後回しになる
多くの小さな会社で、見積のあとの連絡が止まる理由は似ています。
- 新しい見積と目の前の仕事が先になる。 出した見積の連絡は、急ぎではないので後回しになります
- どの見積に連絡したか分からなくなる。 見積の一覧に「連絡した日」を書いていないので、追いかけた見積と、そうでない見積が混ざります
- 何と書けばいいか迷う。 「その後いかがでしょうか」だけでは、催促しているようで気が引けます
- 断られた理由を聞きにくい。 断られると、そのまま終わりにしてしまいます
AIで減らせるのは、文面に迷う時間と、相手ごとに書き分ける手間です。どの見積に連絡するかは、計算で拾います。
返事のない見積は、計算で毎週拾い出す
計算で行うこと。 見積の一覧(見積番号、お客様、金額、出した日、状態、最後に連絡した日)から、毎週月曜日に次のものを拾います。
- 出してから7日たって、返事も連絡もしていない見積
- 1回目の連絡から7日たって、まだ返事のない見積(2回目)
- 見積の有効期限が近い見積
金額の大きい順に並べ、担当の営業ごとに分けます。追いかけは2回までと決めておき、それでも返事がなければ「保留」にします。
人がすること。 営業が、一覧の中で事情が分かっているもの(相手から「来月決める」と言われている、など)に印を付けて除きます。
何が変わるか。 返事のない見積が、忘れられずに毎週目の前に並びます。
拾い出しと連絡の下書きを毎週自動で届ける仕組みの作り方は、返事のない見積が毎週並ぶ。見積の一覧からAIが連絡を下書きする仕組みで説明しています。
確認の連絡は、見積の中身とメモからAIが下書きする
AIに頼むこと。 拾った見積ごとに、見積の中身(品目、数量、納期)と、打ち合わせのメモ(相手が気にしていたこと、比べている会社があるか)を渡し、確認の連絡を下書きしてもらいます。催促ではなく、「分かりにくい点はないか」「条件を変えた案が要るか」を聞く形にします。
人がすること。 営業が、言い回しを直して送ります。電話のほうがよい相手には、下書きを話す内容のメモとして使います。
何が変わるか。 一行の「その後いかがでしょうか」が、相手の気にしていた点に触れた連絡になります。相手が返事をしやすくなります。
見積の説明そのものを分かりやすくする方法は、工事店の例ですが工事の必要性が伝わる見積にする。現地調査の写真からAIで説明書で説明しています。
断られた理由は、聞いて残し、AIが月に一度まとめる
人がすること。 断られたら、営業が一言だけ理由を聞きます(「差し支えなければ、決め手を教えていただけますか」)。聞いた理由を、見積の一覧の「断られた理由」の欄に残します。
AIに頼むこと。 月に一度、その月の断られた理由をまとめて渡し、「値段」「納期」「仕様」「説明」「そのほか」に分けて、多い順に並べてもらいます。似た理由の具体例も添えてもらいます。
計算で行うこと。 理由ごとの件数と、断られた見積の金額の合計は、表計算で数えます。
何が変わるか。 「なぜ取れなかったか」が、勘ではなく件数で見えます。値段で負けているのか、説明で負けているのかが分かれば、手の打ち方が変わります。
AIへの頼み方と、返ってくる下書きはこんな形になる
AIに渡す指示(見本。内容は架空です):
下の見積の中身と打ち合わせのメモから、お客様への確認の連絡を200字ほどで下書きしてください。催促にならないように、見積で分かりにくい点がないか、条件を変えた案が要るかを聞く形にしてください。値引きや納期の短縮を約束する言葉は書かないでください。金額は書かず、「お送りした見積」と書いてください。 見積:配管部品の加工 300個、納期は受注から3週間 メモ:担当の〇〇様は、納期を気にしていた。ほかに1社から見積を取っている
返ってくる下書き(見本):
〇〇様 先日お送りした配管部品の加工のお見積について、ご確認いただけましたでしょうか。打ち合わせの際に納期を気にされていましたので、もし一部を先にお納めする形などがご検討の助けになるようでしたら、分け方の案をお出しすることもできます。お見積の中で分かりにくい点がございましたら、お気軽にお知らせください。
営業は、「分けて納める」が本当にできるかを確かめてから送ります。できないなら、その一文を消します。
連絡の型をスキルにし、日数と金額はAIの外で持つ
ここまでの使い方は、そのつどAIのチャットに頼む場合です。毎週続けるなら、もう一段の工夫をしておくと安定します。作る側から見ると、ここが「AIを使う」と「使いこなす」の差です。
連絡の型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、「1回目と2回目の連絡の型」「断られた理由の聞き方」「書いてはいけないこと(値引きや納期の約束、ほかの会社の悪口、しつこい言い方)」「返事をもらえた連絡の見本」をスキルにします。
日数、金額、連絡した記録は、AIの外で持つ。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、見積を出してからの日数を計算すること、追いかけを2回までに止めること、連絡した日を一覧に記録すること、下書きに金額や約束の言葉が混ざっていないかを確かめることがそれに当たります。
しつこくしない決まりを先に作り、値引きの判断は人がする
追いかけの連絡は、やり方を間違えると嫌がられます。先に次のことを決めておきます。
- 追いかけは2回まで。 2回連絡して返事がなければ、保留にします。相手から連絡が来たら、また動きます
- 断られたら、理由を一言聞いて終わる。 引き留めたり、すぐに値引きを持ち出したりしません
- 値引きや条件の変更は、営業が勝手に決めない。 値段を下げるか、納期を早めるかは、社長か責任者が原価と相談して決めます
- AIに値引きの案を出させない。 値段は原価と利益から計算で決めるものです
値上げや値決めの考え方は、取引先に値上げを受け入れてもらう方法。根拠の資料をAIで作るで説明しています。
明日からは、先月の見積の一覧から返事のないものを拾う
- 先月出した見積を一覧にし、「状態」と「最後に連絡した日」の欄を足す
- 返事のないまま止まっている見積を、金額の大きい順に並べる
- 上から5件について、会社で契約した、入力をAIの学習に使わないプランに、上の見本の指示で確認の連絡を下書きさせる
- 営業が直して送り、送った日を一覧に書く
- 断られたら理由を一言聞き、一覧に残す
1か月続けたら、返事が来た割合と、受注につながった件数を数えます。
まとめ
- 見積を出したあと、返事のないまま終わる見積の中に、取りこぼしている受注がある
- 見積の一覧から、7日・14日たっても返事のない見積を計算で毎週拾い、金額の大きい順に並べる
- AIが見積の中身と打ち合わせのメモから、催促ではなく疑問を聞く形の連絡を下書きし、営業が確かめて送る
- 断られた理由は一言聞いて残し、月に一度AIが分類してまとめる。件数は表計算で数える
- 追いかけは2回まで。値引きや条件の変更は、社長か責任者が原価から決める