返事のない見積が毎週並ぶ。見積の一覧からAIが連絡を下書きする仕組み
この記事で変わる経営指標
この記事では、出した見積を放っておかない。返事のない見積をAIで追いかけて受注を増やすの「返事のない見積は、計算で毎週拾い出す」と「確認の連絡は、見積の中身とメモからAIが下書きする」を、仕組みとして作る方法を説明します。
一言でいうと、見積の一覧から、出して7日・14日たっても返事のない見積を毎週月曜に計算で拾い、金額の大きい順に並べる。AIが見積の中身と打ち合わせのメモから確認の連絡を下書きして担当の営業に届け、営業が確かめて送る。断られた理由は一覧に残し、月に一度AIが分類してまとめるという形です。忙しい週でも、返事のない見積が忘れられずに目の前に並びます。
今は見積のその後が、営業一人ひとりの記憶に任されている
親の記事でも触れたとおり、米国の調査では、ネットからの問い合わせに1時間以内に連絡した会社は、それより遅い会社に比べて決裁者と話せた割合が約7倍だったと報告されています(Harvard Business Review、2011年。数字はCustomerThinkなどの紹介による)。問い合わせの段階の調査ですが、相手の関心が高いうちに連絡するほど話が進みやすいという考え方は、見積のあとにも当てはまります。
親の記事のやり方で、見積の一覧に「状態」と「最後に連絡した日」を足し、手で拾って連絡し始めると、次の壁に当たります。
- 毎週一覧を見直して、返事のない見積を拾う作業が続かない
- 営業ごとに見積の書き方やメモの置き場所がばらばらで、AIに渡す材料を集めるのに手間がかかる
- 2回目の連絡を忘れたり、逆に3回目を送ってしまったりする
- 断られた理由が、営業の頭の中やメールに散らばって集まらない
拾うこと、材料を集めること、回数を守ることは、毎週の決まった作業です。ここを仕組みにします。
毎週計算で拾い、AIが下書きし、営業が送る
仕組みは4つの段でできています。
1. 集める:見積の一覧に、出した日と状態と連絡した日を残す。 見積を出すたびに、見積の一覧に次のことを残します。販売管理や見積のソフトから書き出せるなら、それを使います。
- 見積番号、お客様、担当の営業、金額、出した日、有効期限
- 状態(返事待ち、受注、失注、保留)
- 1回目・2回目の連絡をした日
- 打ち合わせのメモの置き場所
- 断られた理由(失注のとき)
2. 計算する:返事のない見積を拾い、並べる。 ここはすべて計算です。毎週月曜の朝に、一覧から次のものを拾います。
- 状態が「返事待ち」で、出してから7日以上たち、1回目の連絡をしていない見積
- 1回目の連絡から7日以上たち、2回目の連絡をしていない見積
- 有効期限まで7日を切った見積
2回目の連絡をした見積は、それ以上拾いません。拾った見積は、担当の営業ごとに分け、金額の大きい順に並べます。
3. 準備する:AIが確認の連絡を下書きする。 拾った見積ごとに、見積の中身と打ち合わせのメモをAIに渡し、確認の連絡を下書きしてもらいます。1回目は「分かりにくい点はないか」「条件を変えた案が要るか」を聞く形、2回目は「今の検討の状況」を聞き、断る場合も気軽に知らせてほしいと添える形にします。金額は書かず、「お送りした見積」と書きます。
4. 連絡する:営業が確かめて送り、一覧に記録する。 月曜の朝、担当の営業に、自分の見積の一覧と下書きが届きます。営業は、事情が分かっている見積を除き、下書きを直して送ります。送ったら、一覧の「連絡した日」に記録します。
連絡の型をスキルにし、日数と回数と金額はAIの外で持つ
この仕組みが毎週正しく回るかどうかは、AIに渡す決まりと、AIの外の計算で決まります。作る側から見ると、ここが「AIを使う」と「使いこなす」の差です。
連絡の型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、次のものをスキルにします。
- 1回目と2回目の連絡の型:聞くこと、締めくくり方
- お客様の業種ごとの言葉づかい:工場、工務店、店舗などで変える言い回し
- 書いてはいけないこと:値引きや納期の約束、ほかの会社の悪口、急かす言い方、金額
- 返事をもらえた連絡の見本:営業が「これで返事が来た」と残したもの
日数、回数、金額は、AIの外で持つ。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、出した日からの日数を計算すること、追いかけを2回で止めること、連絡した日を一覧に記録すること、下書きに金額や「値引き」「必ず」などの約束の言葉が混ざっていないかを機械的に確かめることがそれに当たります。何回連絡したかをAIに覚えさせることはしません。
断られた理由は、一覧に残し、月に一度AIが分類する
失注になった見積には、営業が聞いた理由を一言で残します。月の初めに、前の月の失注の見積と理由をまとめてAIに渡し、「値段」「納期」「仕様」「説明」「そのほか」に分けてもらいます。理由ごとの件数と金額の合計は、表計算で数えて添えます。
社長と営業は、このまとめを月に一度、30分ほどで見ます。「値段で負けている見積が多い」なら原価と値決めを、「説明で負けている」なら見積の説明の仕方を見直すきっかけになります。
営業の仕事は、月曜の朝に届く一覧を見て送ることになる
仕組みが入ると、見積のあとの動きは次のように変わります(想定です)。
| 今まで(親の記事のやり方) | 仕組みが入ったあと | |
|---|---|---|
| 返事のない見積を拾う | 気づいた人が一覧を見直す | 毎週月曜に計算で届く |
| 材料を集める | 見積とメモを探す | 見積とメモがそろった下書きが届く |
| 回数を守る | 営業の記憶 | 2回で止まる |
| 断られた理由 | 散らばる | 一覧に残り、月に一度まとまる |
経営への効果は、取りこぼしを減らし、負け方を見て手を打てること
効果は、時間よりも受注で考えます。仮に、月に30件の見積のうち10件が返事のないまま終わっていた会社で、仕組みによって毎月必ず追いかけられるようになり、そのうち月1件が受注につながれば、1件の粗利がそのまま上乗せされます。1件の粗利が30万円なら、月30万円です。
もう一つの効果は、断られた理由が件数で見えることです。値段で負けているのか、説明で負けているのかが分かれば、次の見積の出し方を変えられます。
費用は作る費用が中心で、AIの利用料は月数十円
作る順番と、かかる日数
- 見積の一覧の項目を決め、今の見積を埋める(社内:営業と事務、1日)。状態、連絡した日、メモの置き場所の欄を足します。ここがいちばん大事です
- 連絡の型と、書いてはいけないことを決める(社内:社長と営業、半日)
- 毎週の拾い出しと、営業ごとの並べ替えを作る(作る人、1人日)
- AIの下書き、点検、営業への届け方、月の理由のまとめを作る(作る人、1.5人日)
- 1か月、実際の見積で試して直す(作る人、0.5人日)
作る費用
作る費用 = 作る人の日数(人日)× 1日あたりの単価
上の手順3〜5で、作る側の目安は合計3人日です。見積のソフトが一覧を書き出せれば、読み込みは早く作れます。
毎月の費用
| 費用 | 中身 | 想定の会社での目安 |
|---|---|---|
| AIの利用料 | 連絡の下書きと、月の理由のまとめ | 月20件で数十円(下の計算) |
| 見積のソフト・表計算 | すでに使っているもの | 追加0円の想定 |
| 保守 | 型とスキルの見直し | 月1時間 |
AIの利用料は、読ませた量と書かせた量で決まります。2026年10月7日時点のAnthropic社のClaude(Sonnet 5.5)の公式料金は、読ませる量100万トークン(AIが文字を数える単位)あたり2ドル、書かせる量100万トークンあたり10ドルです。1件あたり見積の中身とメモとスキルで1,500トークンを読ませ、500トークンを書かせると見積もると、約0.008ドル、1ドル150円で約1.2円です。月20件の連絡で24円ほど、月の理由のまとめを足しても数十円です。
何で元を取るか
取り戻すまでの月数 = 作る費用 ÷(月に増える粗利 − 毎月の費用)
この仕組みは、浮く時間では元が取れません。拾い出しと下書きで浮く時間は、月に数時間ほどです。仮に作る費用が20万円でも、粗利30万円の受注が1件増えれば、その月で取り戻せます。見積が月に10件ほどの会社なら、親の記事のやり方(表計算の一覧とAIのチャット)で十分なことが多いはずです。
必要な人は3役で、送るのは担当の営業
| 役 | 誰が | すること | 時間 |
|---|---|---|---|
| 送る人 | 担当の営業 | 月曜に届いた一覧を見て、下書きを直して送り、記録する | 1件3分 |
| 一覧を守る人 | 事務 | 見積を出したら一覧に足す。受注・失注を更新する | 1件2分 |
| 作る人 | 社内の詳しい人か、外の作り手 | 拾い出し、下書き、点検、まとめを作る | 最初の3人日 |
いちばん大事なのは、一覧の「状態」を正しく保つことです。受注や失注を更新し忘れると、決まった見積に連絡が届いてしまいます。
1か月で漏れがなくなり、半年で負け方の傾向が分かる見込み
どこまでいけるかは、一覧がどれだけ正しく保たれるかで決まります。目安は次のとおりです。
| 時期 | 見込み |
|---|---|
| 最初の1か月 | 毎週の拾い出しが回る。状態の更新漏れを見つけて直す |
| 3か月 | 返事のない見積への連絡が漏れなくなる。返事が来た割合が分かる |
| 半年 | 断られた理由の件数がたまり、値段・納期・説明のどこで負けているかが見える |
効果を確かめるには、次の3つを導入の前と後で比べます。
- 返事のないまま終わった見積の数:一覧から数えます
- 追いかけの連絡のあとに受注した見積の数と金額:一覧から数えます
- 断られた理由の内訳:月のまとめから見ます
回数を守らなかったり、約束を書いたりすると失敗する
作る側から見て、よくある失敗は次の4つです。
- 3回、4回と追いかける。 しつこい連絡は、次の見積の依頼を遠ざけます。2回で止めるのは計算で守ります
- 下書きに値引きや納期の約束が入る。 営業が勝手に約束したことになります。約束の言葉は機械的に探して止め、値段や条件の変更は社長か責任者が決めます
- 状態を更新しない。 受注した見積に「その後いかがでしょうか」が届くと、信頼を失います
- 確かめずに自動で送る。 相手の事情は、営業しか知らないことがあります。送るのは営業です
お客様の情報と見積の金額は、会社の大事な情報です。会社で契約した、入力をAIの学習に使わないプランで扱い、社内ルールに書いておきます。決め方は社員が安心してAIを使える会社にする、A4で1枚の社内ルールにまとめています。見積を送る前の点検は、見積書と請求書を送る前に自動で点検する。AIと計算で確かめる仕組みで説明しています。
まとめ
- 見積の一覧に、出した日、状態、連絡した日、メモの置き場所、断られた理由を残す
- 毎週月曜に、7日・14日たっても返事のない見積を計算で拾い、営業ごとに金額の大きい順に並べる。追いかけは2回まで
- AIが見積の中身とメモから確認の連絡を下書きし、営業が確かめて送り、記録する
- 断られた理由は月に一度AIが分類し、件数と金額は表計算で数える
- 元は浮く時間ではなく増える受注で取る。見積が少ない会社は表計算とチャットで十分