業務への組み込み例

ストレスチェックの委託先を同じ物差しで比べる。提案書の表はAIで

この記事で変わる経営指標

この記事では、50人未満もストレスチェックが義務に。準備の書類と職場の改善をAIでの「委託先の候補を2〜3社選び、提案書をもらって、AIに同じ項目の表にさせる」を、仕組みとして作る方法を説明します。

一言でいうと、国のマニュアルのチェックポイントを、比べる項目として表にしておく。委託先の候補から提案書をもらい、AIが各社の提案書から同じ表に書き写す。書いていない項目は「記載なし」と残し、そこから委託先への質問を下書きする。社員数を入れた年間の費用は表で計算し、社長が決めるという形です。料金の安さだけで選んで、あとから別料金が重なるのを防ぎます。

2028年4月までに、委託先を選んでおく必要がある

2025年5月に公布された改正労働安全衛生法で、社員50人未満の事業場にもストレスチェックが義務になり、施行期日は2028年(令和10年)4月1日に決まりました(徳島労働局、労務ドットコムの解説による)。

厚生労働省の「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」のスタートガイドは、社員のプライバシーを守るため、原則として外部の機関に任せることを推奨しています。委託先の選び方については、次のことを示しています。

  • 委託先の候補から「サービス内容事前説明書」を作って説明してもらい、提案の中身を確かめる
  • 提案の中身(各サービスの内容、料金など)をもとに、委託先を比べて選ぶ
  • ストレスチェックと集団分析をその委託先に任せるか、医師の面接指導をどこに頼むか(委託先の追加のサービス、地域産業保健センター、別に契約する医療機関など)を決める
  • 実施の時期、調査票の項目、紙かウェブかを決める
  • 料金のしくみ(どこまでが標準のサービスで、どこからが追加か、別料金の中身は適切か)を確かめる

マニュアルの本体には、提案の中身を確かめるためのチェックポイントが載っています。細かい手続きは、厚生労働省の最新の資料で確かめてください。2026年10月時点の情報です。

今は、提案書の形がばらばらで、比べられない

委託先を選ぶとき、多くの小さな会社では次のことが起きます。

  1. 2〜3社から提案書やパンフレットをもらう
  2. 各社で書き方も項目の並びも違い、どこが標準でどこが追加なのかが分からない
  3. 1人あたりの料金だけを見て、安いところに決める
  4. 実施のあとに、集団分析や面接指導、紙の調査票が別料金だと分かる

比べる項目を先に決めておけば、各社の提案を同じ物差しで並べられます。書き写す手間を、AIに手伝わせます。

項目をそろえ、AIが表に写し、人が質問して確かめる

担当者が委託先の候補から提案書を集め、国のマニュアルのチェックポイントを比べる項目にそろえておく。AIが各社の提案書を同じ表に書き写して書いていない項目は記載なしと残し、担当者が記載なしの項目を委託先に質問して確かめ、年間の費用は表で計算する
担当者が委託先の候補から提案書を集め、国のマニュアルのチェックポイントを比べる項目にそろえておく。AIが各社の提案書を同じ表に書き写して書いていない項目は記載なしと残し、担当者が記載なしの項目を委託先に質問して確かめ、年間の費用は表で計算する

仕組みは4つの段でできています。

1. 集める:提案書を同じ求め方でもらう。 委託先の候補2〜3社に、同じ内容で提案を頼みます。社員数、事業所の数、紙かウェブかの希望、集団分析と面接指導の希望を、1枚の依頼文にまとめて送ります。依頼文はAIに下書きさせてもかまいません。

2. そろえる:比べる項目を決めておく。 ここは人が最初に1回だけ決めます。マニュアルのチェックポイントをもとに、次のような項目を表の行にします。

  • 標準のサービスに入るもの(調査票の配布と回収、個人の結果の通知、高ストレスの判定、結果の保存)
  • 追加のサービスと、その料金(集団分析、医師の面接指導、紙の調査票、英語などの調査票)
  • 調査票の項目数、紙かウェブか
  • 実施者(医師、保健師など)と、個人の結果の保存の方法
  • 料金のしくみ(1人あたり、基本料金、最低料金)
  • 社員からの問い合わせ窓口

3. 書き写す:AIが提案書から同じ表に写す。 AIに、各社の提案書と比べる項目の表だけを渡し、1社につき1列を書かせます。提案書に書いていない項目は「記載なし」と書かせ、推しはからせません。それぞれの欄に、提案書のどこに書いてあったか(ページ)を添えさせます。

4. 確かめる:記載なしを質問し、費用を計算する。 担当者が、AIの表を提案書と照らして確かめます。「記載なし」の項目は、AIに委託先への質問の文を下書きさせ、担当者が送って答えをもらい、表を埋めます。年間の費用は、社員数と追加のサービスを入れて、表で計算します。

比べる項目をスキルにし、費用の計算はAIの外に置く

この仕組みが毎回同じ質で回るかどうかは、AIに渡す決まりと、AIの外の仕組みで決まります。作る側から見ると、ここが「AIを使う」と「使いこなす」の差です。

比べる項目と書き方を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、次のものをスキルにします。

  • 比べる項目の表:上の項目と、その並び
  • 書き写し方の決まり:提案書の言葉のまま写す、ページを添える、書いていないものは「記載なし」
  • 質問の文の型:「記載なし」の項目を、委託先に失礼のない形で聞く文
  • 書いてはいけないこと:提案書にない料金やサービス、どの会社がよいかのすすめ、ストレスチェックの結果の見方

費用の計算は、AIの外に置く。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、担当者が表を提案書と照らすこと、委託先の答えで表を埋めること、年間の費用を表計算で出すことがそれに当たります。AIは料金の単位(1人あたりか、1回あたりか)を取り違えることがあるので、計算はさせません。

「記載なし」の項目が、あとからの別料金を防ぐ

この仕組みでいちばん効くのは、提案書に書いていない項目を、そのままにしないことです。

  • 1人あたりの料金が安くても、集団分析や面接指導、紙の調査票が別料金なら、年間の費用は変わります
  • 「記載なし」の項目を質問して答えを表に入れると、各社の年間の費用を同じ条件で比べられます
  • 質問への答え方の早さと分かりやすさも、委託先を選ぶ材料になります。社員から問い合わせが来たときの対応の目安になるからです

医師の面接指導は、委託先の追加のサービスを使うほかに、地域産業保健センターに頼む方法もあると、マニュアルは示しています。どちらにするかで年間の費用が変わるので、表に両方の場合を並べておきます。

担当者の仕事は、項目をそろえ、質問して確かめることになる

仕組みが入ると、委託先の選び方は次のように変わります(想定です)。

今まで 仕組みが入ったあと
提案のもらい方 各社にばらばらに頼む 同じ依頼文で頼む
比べ方 パンフレットを見比べる 同じ項目の表に並べる
書いていないこと 気づかない 「記載なし」として質問する
費用 1人あたりの料金だけ 追加のサービスを入れた年間の費用
決める人 何となく安いところ 表を見て社長が決める

経営への効果は、別料金を防ぎ、早く決められること

効果は、前提を置いて考えます。

比べ方で変わる費用 =(選んだ委託先の年間の費用 - 同じ条件で最も合う委託先の年間の費用)× 契約する年数

料金の差は、委託先とサービスの選び方で変わるので、ここでは金額を置きません。大事なのは、追加のサービスを入れた同じ条件で比べることです。義務は毎年続くので、最初の選び方の差は、契約を続ける年数の分だけ積み重なります。

担当者の時間も変わります。仮に3社の提案書を読み比べて表にまとめるのに半日(4時間)かかっていたものが、AIの表を照らす1時間と、質問のやり取りになれば、3時間ほどが浮きます。

費用はほとんど要らず、AIの利用料は1回20円ほど

作る順番と、かかる日数

  1. 比べる項目の表を作る(会社:担当者、2時間)。マニュアルのチェックポイントを見ながら決めます。ここがいちばん大事です
  2. 提案の依頼文を作り、2〜3社に送る(会社:担当者、1時間)
  3. 年間の費用を計算する表を作る(会社:担当者、1時間。表計算で作れます)
  4. 書き写し方と質問の型をスキルにする(作る人、0.5人日。会社で契約したAIのチャットに型を保存して使うなら不要)

作る費用

作る費用 = 作る人の日数(人日)× 1日あたりの単価

スキルにする場合で、作る側の目安は0.5人日です。

毎月の費用

費用 中身 想定の会社での目安
AIの利用料 提案書3社の書き写しと質問の下書き 1回約20円(下の計算)
表計算 すでに使っているもの 追加0円の想定
保守 契約を見直す年に、項目を見直す 数年に1回

AIの利用料は、読ませた量と書かせた量で決まります。2026年10月7日時点のAnthropic社のClaude(Sonnet 5.5)の公式料金は、読ませる量100万トークン(AIが文字を数える単位)あたり2ドル、書かせる量100万トークンあたり10ドルです。提案書1社の書き写しに、提案書とスキルで9,000トークンを読ませ、1,500トークンを書かせると約5円、3社で約15円です。質問の下書きに2,500トークンを読ませ、600トークンを書かせると1社約1.7円、3社で約5円、合わせて約20円です(1ドル150円で計算)。

何か月で取り戻せるか

委託先を選ぶのは、最初と契約を見直すときだけです。浮く時間は1回3時間ほどなので、スキルを作り込むと、その手間を取り戻すのに時間がかかります。初めて選ぶ会社なら、スキルにせず、会社で契約したAIのチャットに比べる項目の表を貼って頼むだけで十分です。効果の大きさは、時間よりも、追加の料金を見落とさないことにあります。

必要な人は3役で、決めるのは社長

役 誰が すること 時間
まとめる人 実施の担当者(衛生推進者など) 依頼文を送り、AIの表を照らし、質問して表を埋める 1回3〜4時間
決める人 社長 表を見て委託先と、面接指導の頼み先を決める 30分
相談先 産業保健総合支援センター、サポートダイヤル 迷ったときに、選び方や進め方を聞く 必要なとき

マニュアルは、社内の実施の担当者に、衛生推進者などを選ぶことが望ましいとしています。

1か月で選び終え、施行の前に1回試す見込み

どこまでいけるかは、提案をそろえる早さで決まります。目安は次のとおりです。

時期 見込み
最初の2週間 比べる項目を決め、2〜3社に提案を頼む
1か月後 表がそろい、質問の答えも入り、委託先を決める
施行の前 一度試しに実施し、社員の声を聞いて進め方を直す

効果を確かめるには、次の3つを記録します。

  • 「記載なし」だった項目の数と、質問で分かったこと:次に選ぶときの項目に足します
  • 契約のあとに出た追加の料金:表で見込んだ費用と比べます
  • 選ぶのにかかった時間:次の見直しのときと比べます

1人あたりの料金だけで比べると失敗する

作る側から見て、よくある失敗は次の4つです。

  • 1人あたりの料金だけで比べる。 集団分析、面接指導、紙の調査票を入れた年間の費用で比べます
  • AIの表を照らさずに使う。 写し間違いや単位の取り違えがあります。提案書のページと照らします
  • 「記載なし」をそのままにする。 委託先に質問し、答えで表を埋めます
  • AIにどこがよいかを決めさせる。 AIは表を作るまでです。決めるのは社長です

提案書には、自社の社員数や事業所の情報が入ります。AIに渡すのは会社で契約した、入力をAIの学習に使わないプランだけにします。社員一人ひとりの情報や、ストレスチェックの結果は、そもそもAIに渡しません。決め方は社員が安心してAIを使える会社にする、A4で1枚の社内ルールにまとめています。

まとめ

  • 国のマニュアルのチェックポイントをもとに、比べる項目の表を先に作る
  • 2〜3社に同じ依頼文で提案を頼み、AIが提案書から同じ表に書き写す。書いていない項目は「記載なし」と残し、ページを添える
  • 「記載なし」の項目は、AIが質問の文を下書きし、担当者が委託先に聞いて表を埋める
  • 年間の費用は、社員数と追加のサービスを入れて表で計算する。面接指導は地域産業保健センターに頼む場合も並べる
  • 委託先は、表を見て社長が決める

CONTACT

自社の業務にも、AIを組み込めるか

記事のような組み込みを、御社の業務と予算に合わせて設計・実装しています。何から手を付ければいいか分からない段階でも大丈夫です。

AI活用を相談する