タクシー運転者への指導の記録|話した内容をAIで整え、特別な指導も漏らさない
この記事で変わる経営指標
この記事では、タクシー会社のAI活用|記録と苦情の返事を整え、運転者を道路に出すの「指導の記録は、話した内容を記録の形に整える」を、毎月続けられる手順にして説明します。
一言でいうと、運行管理者が、運転者に話し、録音かメモを残す。AIが、日時と内容と人の名前を記録の欄に並べる。運行管理者が、話した中身と対象者を確かめる。事務が、特別な指導の漏れを見て、3年残す。何を教えるかは運行管理者が決めるという形です。
経営への効果は、話したことが残り、運転者が育つこと
運行管理者は、点呼のときや、事故や苦情のあとに、運転者に多くのことを話しています。ところが、話したことが記録に残っていないことがよくあります。話した本人は覚えていても、誰に、いつ、何を話したかを、あとから示せません。
記録がないと、新しい運転者に何を教え終わったかが分かりません。同じ注意を何度もくり返したり、大事なことを伝え忘れたりします。運転者が足りない中で、新しい運転者を早く一人で走れるようにするには、教えたことを一覧で見られることが欠かせません。
話した内容を録音やメモで残し、AIに記録の形に整えさせれば、運行管理者は話すことに集中できます。記録の欄を埋める手間が減れば、記録が続きます。
指導の日時と内容と人を記録し、3年残す
e-Gov法令検索で旅客自動車運送事業運輸規則の第38条を確かめると、運転者に対して、営業区域の状態、それに対処できる運転の技術、法令に定める運転に関することについて、国土交通大臣が告示で定めるところにより、適切な指導監督をすることとされています。その指針は、平成13年国土交通省告示第1676号です。
指導監督をしたときは、次のことを記録し、営業所で3年間保存します。
- 日時
- 場所
- 内容
- 指導監督を行った者
- 指導監督を受けた者
近畿運輸局の「運行管理業務について」(2026年)でも、指導及び監督を行い、その記録を営業所に3年間保存することが説明されています。
新しく入った人と65歳以上の人には、特別な指導がいる
第38条第2項では、次の運転者に、運行の安全を確保するための特別な指導を行い、国の認定を受けた適性診断を受けさせることとされています。
- 死者または負傷者が出た事故を起こした人
- 運転者として新しく雇い入れた人
- 乗る車について、会社での乗務の経験がない人
- 65歳以上の人
国土交通省の自動車総合安全情報で公開されている行政処分の情報には、令和4年10月6日の処分で、指導監督が不適切だったこと、指導監督の記録に記載すべき事項が不適切だったこと、高齢の運転者への特別な指導が不適切だったこと、高齢の運転者に適性診断を受けさせていなかったことなどが指摘された例が載っています。
特別な指導の中身と時間は、指針で決まっています。細かな決まりは、営業所のある地方運輸局の案内と指針の原文で確かめてください。2026年10月時点の情報です。
今は、話したことが運行管理者の頭の中にだけある
小さなタクシー会社では、次のような形が多いと思います。
- 点呼のときに注意したことは、点呼の記録に一言だけ残る
- 事故や苦情のあとに個別に話したことは、どこにも書かれない
- 指導の記録簿は、月に1回の全体の集まりの分だけ書いている
- 誰が65歳になったか、誰の適性診断が済んでいないかを、一覧で見ていない
この形だと、話したことの多くが記録に残りません。特別な指導の対象になった人に気づくのも遅れます。
話し、AIが整え、確かめて、残す
1 話す(運行管理者)。 運転者に話すときは、スマホで録音するか、話したあとに3行のメモを残します。日時、場所、相手の名前を最初に言っておくと、あとで迷いません。
2 整える(AI)。 録音を文字にしたものかメモを渡し、記録の欄(日時、場所、内容、行った者、受けた者)に並べてもらいます。内容は、話した言葉を短く整えます。
3 確かめる(運行管理者)。 話した中身が正しく書かれているか、受けた人の名前に漏れがないかを確かめます。
4 残す(事務)。 記録を営業所で3年保管します。あわせて、特別な指導の対象者の一覧を見て、漏れがないかを確かめます。
記録の欄と、特別な指導の一覧はこの形でそろえる
| 欄 | 中身の例(想定) | AIにさせないこと |
|---|---|---|
| 日時 | 〇月〇日〇時〜〇時 | 時刻を推測する |
| 場所 | 本社の休憩室、点呼場 | 場所を補う |
| 内容 | 降車後の発進前に後方を目で確かめること | 話していない内容を足す |
| 行った者 | 運行管理者の〇〇 | 名前を補う |
| 受けた者 | 運転者の〇〇、〇〇 | 名前を補う |
特別な指導の一覧は、表計算で次の欄を持ちます。
| 欄 | 中身 |
|---|---|
| 運転者の名前 | 全員 |
| 雇い入れた日 | 新しく雇い入れた人の特別な指導の対象を見る |
| 生年月日 | 65歳になる日を表の式で出す |
| 死傷事故の有無 | 事故の記録から写す |
| 特別な指導を行った日 | 指導の記録から写す |
| 適性診断を受けた日 | 診断の結果の紙から写す |
65歳になる日や、指導が済んでいない人は、表の式で出します。AIに年齢や日付を数えさせません。
AIへの頼み方と、返ってくる記録はこうなる
AIに渡す指示(見本):
下は、タクシー会社の運行管理者が運転者に話した内容を録音から文字にしたものです。運輸規則第38条の指導監督の記録の欄(日時、場所、内容、指導監督を行った者、受けた者)に並べてください。内容は、話した言葉を短く整え、話していないことは足さないでください。分からない欄は「未記入」と書いてください。
返ってくる記録(見本。内容は架空です):
日時:〇月〇日〇時〇分〜〇時〇分/場所:本社の点呼場/内容:先週の駅前ロータリーでの接触事故を受け、降車後の発進前に左のミラーと目で後方を確かめることを説明した/行った者:運行管理者〇〇/受けた者:運転者〇〇、〇〇、〇〇
確かめるときは、受けた人と中身の言い換えを見る
AIの下書きは、渡した録音やメモをもとにしています。それでも、整える途中で言い換えたり、話していない注意を足したりすることがあります。
- 受けた人の名前を、その場にいた人と照らす。 途中で来た人、先に出た人を確かめます
- 中身が言い換えられていないかを見る。 運行管理者が言った言葉に近い形で残します
- 話していない注意が足されていないかを見る。 「安全運転を心がけること」のような一般論が足されていたら消します
- 「未記入」を埋める。 時刻や場所を運行管理者が書き足します
事故と苦情の記録から、話すことを選ぶ
指導の中身は、運行管理者が決めます。そのときに、事故と苦情の記録が材料になります。
- 事故の記録の再発防止対策を、全員に話す。 話したことを、この記録に残します
- 苦情の記録で多い申し出を、次の指導で取り上げる。 道順や言葉づかいなどです
- ベテランのコツを残す。 乗り場や道のコツを、ベテランが話した録音から手引きにして、新しい運転者に渡します
型をスキルにし、教える中身と年齢の計算はAIの外に置く
型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、「記録の欄」「記録の見本」「させないこと(話していない内容を足す、名前や時刻を補う)」をスキルにします。
教える中身と年齢の計算は、AIの外に置く。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、運行管理者が指針に沿って中身を決めること、特別な指導の一覧を表計算で持つこと、運行管理者が記録を確かめることがそれに当たります。
費用は、AIの利用料が1回2円ほど
| 費用 | 見込み |
|---|---|
| 指導の記録の下書き | 録音の文字かメモ(入力2千トークンほど)から記録(出力1千トークンほど)を作ると、Claude Sonnet 5.5の料金(入力100万トークンあたり2ドル、出力10ドル、1ドル150円で計算)で1回2円ほど |
| 法人向けプラン | チャットで使うなら1人あたり月数千円 |
| 運行管理者の時間 | 記録を確かめるのに1回数分(想定) |
必要な人は2役で、教える中身は運行管理者が決める
- 運行管理者:指針に沿って教える中身を決め、運転者に話し、記録を確かめる
- 事務:録音やメモをAIで記録に整え、特別な指導の一覧を見て漏れを知らせ、3年保管する
事務がいない会社では、運行管理者が両方を受け持ちます。一覧を見る日を月に1回決めておきます。
1か月で記録と一覧がそろう見込み
- 1週目:特別な指導の一覧を表計算で作り、65歳以上の人と新しく入った人に印を付ける
- 2週目:点呼や個別の指導で話したことを、録音かメモで残し始める
- 3週目:AIに記録の欄に並べさせ、運行管理者が確かめる。記録の見本をスキルにまとめる
- 4週目以降:話すたびに記録を残し、月に1回、一覧で特別な指導と適性診断の漏れを見る
年齢の計算をAIに任せると失敗する
よくある失敗は次の3つです。
- 65歳になった人をAIに数えさせる。 誕生日の計算を間違えることがあります。表計算の式で出します
- 全体の集まりの分しか記録しない。 個別に話したことも、指導監督として記録に残します
- AIが足した一般論をそのまま残す。 話していないことは、記録から消します
まとめ
- 運転者への指導監督は、日時・場所・内容・行った者・受けた者を記録し、営業所で3年残す
- 死傷事故を起こした人、新しく雇い入れた人、65歳以上の人などには、特別な指導と適性診断を行う
- 話した内容を録音やメモで残し、AIが記録の欄に並べる
- 特別な指導の対象と済んだ日は、表計算の一覧で持つ
- 何を教えるかは、運行管理者が指針に沿って決める