中古車販売店のAI活用|支払総額の表示を守り、問い合わせと見積を早くする
この記事では、小さな中古車販売店を営む社長に向けて、AIが効く業務を4つ挙げ、どう使うかを説明します。一言でいうと、問い合わせへの返事、掲載文と支払総額の表示の点検、見積書の費用の点検、納車後の点検や車検の案内の4つで、在庫の表や表示の決まりの表をもとにAIが下書きと点検をする。車の状態の判断と、価格の決定は人が行うという話です。
AIの価値は、車を売ることではありません。問い合わせの返事や掲載文、見積書の点検のように、毎日くり返す文章と確認の仕事を下書きし、社長と営業の時間を、お客さまと話すことと車を仕入れることに使えるようにすることです。
経営への効果は、問い合わせを逃さず、表示と見積の信頼を守ること
小さな中古車販売店では、社長や数人の営業が、仕入れ、掲載、問い合わせ、商談、納車、アフターまでを受け持っています。AIが効くのは、この中の文章と確認の仕事です。
| 業務 | 今まで | AIを入れたあと | 経営効果 |
|---|---|---|---|
| 問い合わせ | 手が空いたときに返す | 在庫の表から返事を下書き | 売上 |
| 掲載文 | 車ごとに一から書く | 車の情報から下書きし、表示を点検 | 違反を防ぐ |
| 見積書 | 作った人の判断で費用を入れる | 費用の項目を決まりの表と照らす | 違反を防ぐ |
| 納車後の案内 | 思い出したときに連絡 | 点検や車検の時期から案内を下書き | 売上 |
中古車は、同じ車種がほかの店にも並んでいて、お客さまは何店かに問い合わせることがあります。返事が早い店ほど、商談に進みやすくなります。表示と見積が決まりどおりなら、お客さまとのトラブルを防ぎ、紹介や次の買い替えにつながります。
2023年10月から、中古車の価格は支払総額で表示する
くるまのニュースとベストカーWebの記事によると、自動車公正取引協議会の新しい自動車公正競争規約・施行規則が2023年10月1日に施行され、中古車の価格は「支払総額」を表示することが求められるようになりました。店頭のプライスボード、広告、ウェブの中古車情報サイトの表示が対象です。
ベストカーWebの記事による、主な決まりは次のとおりです。
- 支払総額は、車両価格と諸費用の合計。 諸費用は、保険料、税金、登録などに伴う費用です。これらを含まない支払総額は表示できません
- 点検整備と保証は車両価格に含める。 定期点検整備や保証を付けて売る場合、その費用は車両価格に含めて表示します
- 支払総額のほかに別の費用を求めるのは規約違反。 ローンの手数料は別です
くるまのニュースによると、背景には、商談で整備や有償の保証の購入を強いられた、「納車準備費用」など用途の分からない費用を請求された、というお客さまからのトラブルがありました。
細かな表示の基準は、自動車公正取引協議会の最新の資料で確かめてください。2026年10月時点の情報です。
問い合わせは、在庫の表から返事を下書きする
人がすること(最初に)。 在庫の表を整えます。車種、年式、走行距離、色、修復歴の有無、車検の残り、車両価格、支払総額、保証の内容、展示している場所です。
AIに頼むこと。 中古車情報サイトやLINE、メールで届いた問い合わせと在庫の表を渡し、返事を下書きしてもらいます。
下は、お客さまからの問い合わせと、当店の在庫の表です。返事を下書きしてください。在庫の表にある情報だけで答え、表にないことは「確認してご連絡します」と書いてください。値引きや下取りの金額、ローンの審査の見込みは書かないでください。来店の日時の候補を2つ挙げてもらうよう、最後に書いてください。
人がすること(そのあと)。 営業が、在庫がまだあるかと、表の内容が正しいかを確かめてから送ります。
LINEで届く問い合わせへの返し方は、LINEの問い合わせにAIで返す|夜と休みの日の取りこぼしを防ぐ仕組みで説明しています。
掲載文は、車の情報から下書きし、表示の決まりで点検する
人がすること(最初に)。 社長が、表示の決まりを1枚の表にします。支払総額に含めるもの、車両価格に含めるもの(点検整備、保証を付けて売る場合)、書いてはいけない言い方(車の状態を実際より良く見せる言い方など)です。
AIに頼むこと。 車の情報(在庫の表の1行と、点検で分かったこと)から、掲載文を下書きしてもらいます。そのあと、掲載文と価格の表示を表示の決まりの表と照らし、外れていそうな点に印を付けてもらいます。
人がすること(そのあと)。 社長が、車の状態の書き方が実際と合っているか、支払総額が正しいかを確かめて載せます。
見積書は、費用の項目を決まりの表と照らす
AIに頼むこと。 見積書の項目の一覧と、表示した支払総額をAIに渡し、次の点に印を付けてもらいます。
- 見積の合計が、表示した支払総額と違う
- 「納車準備費用」など、決まりの表にない名前の費用が入っている
- 点検整備や保証の費用が、車両価格とは別に入っている
人がすること(そのあと)。 社長が印の付いた点を確かめ、直してからお客さまに出します。決まりの表の作り方と、月に1回のまとめ方は、中古車の見積書は出す前に点検|支払総額と費用の項目をAIで照らすで説明しています。お客さまの希望で付けたものなど、支払総額と違う理由があるときは、その理由を見積書に書き、表示の決まりに合うかを自動車公正取引協議会の資料で確かめます。
納車後の案内は、点検と車検の時期から下書きする
人がすること(最初に)。 売った車の表に、納車の日、次の点検の時期、車検の満了の日を入れます。
AIに頼むこと。 毎月、翌月に点検や車検の時期を迎えるお客さまの一覧と、案内の型を渡し、一人ずつの案内の文を下書きしてもらいます。
人がすること(そのあと)。 営業が確かめて送ります。自社で整備をしていない場合は、提携先の工場の案内を入れます。整備の工場でのAIの使い方は、自動車整備工場のAI活用|整備士の事務を減らす4つの業務と始め方で説明しています。
車の状態の判断と価格の決定は、AIに任せない
- 車の状態は人が見る。 修復歴、傷、機関の調子は、人が見て判断します。AIに車の状態を書き足させません
- 価格は人が決める。 車両価格、支払総額、値引き、下取りの金額は、社長か営業が決めます
- 表示の最終判断は人が行う。 AIの点検は、気づくための下書きです。迷う表示は自動車公正取引協議会の資料で確かめます
- お客さまの情報を入れすぎない。 名前、住所、電話番号は、会社で契約した、入力をAIの学習に使わないプランで扱うか、AIに渡さないようにします
在庫の表と決まりの表をスキルにし、価格はAIの外に置く
ここまでの使い方は、そのつどAIのチャットに頼む場合です。毎日同じように使うなら、もう一段の工夫をしておくと安定します。作る側から見ると、ここが「AIを使う」と「使いこなす」の差です。
型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、「問い合わせの返事の型」「掲載文の型」「表示の決まりの表」「見積書の点検の項目」「納車後の案内の型」「書いてはいけないこと(表にない車の状態、値引きや下取りの金額、ローンの審査の見込み)」をスキルにします。
価格は、AIの外に置く。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、支払総額を在庫の表と計算の表で出すこと、見積書を出す前に社長が確かめること、載せる前に車の状態を人が確かめることがそれに当たります。
費用は、法人向けプランの月数千円から始められる
最初は、会社で契約した、入力をAIの学習に使わない法人向けのプランで、チャットに貼って使うところから始めます。費用は1人あたり月数千円です。中古車情報サイトの問い合わせから返事の下書きが自動で届くといった仕組みにする場合は、作る費用が加わります。費用の考え方は中小企業のAI導入費用はいくら?3つの内訳と元が取れるかの計算式にまとめています。
効果は、返事の速さと、見積の直しの数で測る
効果を確かめるには、次の3つを始める前と後で比べます。
- 問い合わせから返事までの時間:受けた時刻から数えます
- 問い合わせから来店につながった割合:月ごとに数えます
- 出す前の点検で直した見積書の数と、お客さまからの費用の問い合わせの数:月ごとに数えます
最初の1か月は、在庫の表と問い合わせの返事から始める
- 在庫の表の列をそろえる
- 上の見本の指示で、問い合わせの返事を下書きさせる
- 表示の決まりの表を作り、今の掲載文と見積書の型を点検させる
- 2か月目から、納車後の案内に広げる
まとめ
- 中古車販売店でAIが効くのは、問い合わせへの返事、掲載文と支払総額の表示の点検、見積書の費用の点検、納車後の案内の4つ
- 2023年10月から、中古車の価格は支払総額の表示が求められ、支払総額のほかに別の費用を求めるのは規約違反になった
- AIには在庫の表と表示の決まりの表をもとに下書きと点検をさせ、価格は計算の表で出す
- 車の状態の判断と価格の決定は人が行う
- 最初の1か月は、在庫の表と問い合わせの返事から始める