AI×業種

動物病院のAI活用|説明の紙と予防の案内で飼い主の信頼を深める

この記事で変わる経営指標

この記事では、小さな動物病院の院長に向けて、AIが効く業務を4つ挙げ、どう使うかを説明します。一言でいうと、予約と問い合わせの返事、診療の記録の整理、診療のあとに渡す家でのケアの説明の紙、予防の時期の案内を、AIに下書きさせる。案内やSNSの投稿は獣医療法の広告の決まりに沿って書き、診断と治療と薬の判断は獣医師が行うという話です。

AIの価値は、診察の代わりをすることではありません。診療のあとの書きものや案内のように、獣医師と看護師が診療の合間や閉院後にこなしている仕事を減らし、動物と飼い主に向き合う時間を増やすことです。

経営への効果は、飼い主が説明に納得し、また来てくれること

飼い主は、診察室で聞いた説明を家に帰ると忘れてしまうことがあります。薬の飲ませ方や、様子を見るときの目安が分からないと、不安になって電話をかけてきたり、ほかの病院に移ったりします。

診療のあとに、家でのケアを短くまとめた紙を渡せば、飼い主は家で読み返せます。予防の時期に合わせて案内を送れば、来院のきっかけになります。説明と案内を丁寧に続けることが、かかりつけとして選ばれ続けることにつながります。

小さな動物病院でAIが効く4つの業務と経営効果。予約と問い合わせの返事、診療のあとの説明の紙、予防の時期の案内は売上、診療の記録の整理は業務の無駄に効く。診断と治療と薬の判断は獣医師が行う
小さな動物病院でAIが効く4つの業務と経営効果。予約と問い合わせの返事、診療のあとの説明の紙、予防の時期の案内は売上、診療の記録の整理は業務の無駄に効く。診断と治療と薬の判断は獣医師が行う

動物病院の広告には、獣医療法の制限がある

e-Gov法令検索で確かめると、獣医療法の第17条では、獣医師や診療施設の業務について、専門科名と学位・称号のほかは、技能、療法、経歴を広告してはならないとされています。農林水産省令で定めるものは広告できます。

農林水産省のページ(令和8年5月25日更新)によると、この規制は、飼い主を誇大な広告から守るためのもので、令和4年度から5年度にかけて見直されました。北海道の案内では、見直しの中身が次のように説明されています。

  • 広告に当たるもの:飼い主を誘う意図があり、病院の名前が分かり、誰でも見られるもの。チラシ、看板、バナー広告、検索の広告、不特定多数に広がるSNSなどが例に挙がっています
  • 技能や療法の広告:令和6年4月1日からは、問い合わせ先、通常必要な診療内容、主なリスクと副作用、費用をすべて併記すれば、広告できるようになりました
  • 引き続き禁止:ほかと比べて優れているという広告や、実際より誇大な広告は禁止されています
  • 病院のウェブサイト:広告に当たらない場合でも、客観的で正確な情報発信に努め、診療内容を載せるときは同じ事項をすべて表示するよう、ガイドラインで定められています

あわせて、景品表示法や医薬品医療機器等法による規制にも注意が必要です。細かな中身は、農林水産省の獣医療広告ガイドラインとQ&Aで確かめてください。2026年10月時点の情報です。

予約と問い合わせの返事は、受付の決まりから下書きする

電話やメール、SNSで届く問い合わせは、診療時間、予約の空き、初めての来院の持ち物、駐車場など、同じ内容がくり返されます。

  • 受付の決まりを1枚にまとめる。 診療時間、休診日、予約の取り方、初診の持ち物、支払いの方法を書きます
  • AIに、決まりに沿った返事を下書きさせる。 決まりにないことは「受付の担当から改めてお知らせします」と書かせます
  • 症状の相談には答えさせない。 「吐いている」「元気がない」といった相談には、AIの文で答えず、すぐに電話で受付の担当か獣医師が対応します

返事の下書きは、受付の担当が読んで送ります。予約の空きは予約の表から担当が入れ、AIには書かせません。問い合わせが多い時間帯は、型があるだけで返事が早くなり、電話に出られなかった飼い主にも同じ日のうちに返せます。

診療の記録は、獣医師のメモを整える

診療のあと、獣医師は記録を書きます。診療が続く日は、記録が閉院後に回ることがあります。

  • 獣医師のメモを、そのまま渡す。 手書きのメモの写しや、声で入力した文を使います
  • AIに、病院の記録の形に整えさせる。 主訴、所見、検査、処置、処方、次回の予定といった欄に分けます
  • 獣医師が読み、書いていないことが足されていないかを確かめる。 AIが言葉を補って、診ていない所見を書くことがあります

飼い主の名前や連絡先は、記号に置き換えてからAIに渡します。会社で契約した、入力をAIの学習に使わない法人向けのプランで使うことが前提です。

家でのケアの説明の紙は、獣医師が決めた中身から下書きする

診療のあとに渡す紙は、飼い主にとって家での頼りになります。

  • 獣医師が中身を決める。 薬の名前と量、飲ませる回数、食事の注意、様子を見る目安、すぐに来院してほしいときの目安を、獣医師が書きます
  • AIに、飼い主が読んで分かる言葉に直させる。 専門の言葉を言い換え、箇条書きにして、A4で1枚にします
  • 獣医師が読んで渡す。 薬の量と回数は、処方の記録と照らします

AIには、獣医師が決めていない注意を足させません。「様子を見る目安」と「すぐに来院してほしいとき」は、獣医師が書いた言葉を使います。

予防の案内は、時期が来た子に送る

ワクチンや季節の予防、健康診断など、時期が決まっている来院は、案内があると忘れずに来てもらえます。

  • 診療の記録から、時期が来る子の一覧を出す。 前回の接種日や健康診断の日から、来月に時期が来る子を表計算で出します
  • AIに、案内の文の型を作らせる。 動物の名前と時期を差し込める形にします
  • 広告に当たらないかを確かめる。 来院したことのある飼い主に送る案内でも、ほかの病院より優れている、のような書き方はしません

案内を送った子のうち、時期を過ぎても来院していない子は、表で印を付け、次の月にもう一度案内するか、受付の担当が電話をかけます。案内の送り先は、飼い主が案内を受け取ることに同意しているかも確かめておきます。

SNSの投稿は、広告の決まりと照らしてから出す

病院のSNSに、院内の様子や季節の注意を投稿することもあるでしょう。北海道の案内では、不特定多数に広がるSNSは広告に当たりうるとされています。

  • AIの下書きを、ガイドラインの禁止事項と照らす。 ほかと比べて優れている、必ず治る、のような言い方がないかを見ます
  • 治療の方法を載せるなら、決められた事項をすべて書く。 問い合わせ先、通常必要な診療内容、主なリスクと副作用、費用です
  • 飼い主の体験談を勝手に使わない。 載せるときは同意を取り、ガイドラインで確かめます

禁止の言い方の一覧を作り、AIに下書きと照らしをさせる手順は、動物病院のSNS投稿をAIで下書き|獣医療広告の決まりで照らして出すで説明しています。

診断と治療と薬の判断は、AIに任せない

AIに任せないことを、先に決めておきます。

  • 診断と治療の方針。 獣医師が診察して決めます
  • 薬の名前と量。 処方の記録から獣医師が書きます。AIの文に薬の量を書かせません
  • 症状の相談への答え。 電話で受付の担当か獣医師が聞き、来院を勧めるかを決めます
  • 広告に当たるかの判断。 迷ったら、都道府県の獣医療広告の相談窓口に確かめます

返事と説明の型をスキルにし、判断はAIの外に置く

型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、「受付の決まりと返事の型」「記録の欄」「家でのケアの説明の紙の型」「予防の案内の型」「書いてはいけないこと(診断、薬の量、ほかと比べた優劣、必ず治るという言い切り、飼い主の名前)」をスキルにします。

判断は、AIの外に置く。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、説明の紙の中身を獣医師が決めること、薬の量を処方の記録と照らすこと、時期が来る子の一覧を表計算で出すこと、SNSの投稿をガイドラインと照らしてから出すことがそれに当たります。

費用は、法人向けプランの月数千円から始められる

返事と記録と説明の紙の下書きは、会社で契約した、入力をAIの学習に使わない法人向けのプランのチャットで足ります。費用は1人あたり月数千円です。電子カルテや予約の仕組みにつなぐ場合は、その仕組みの会社に、つなげるかと費用を確かめます。

明日からは、家でのケアの説明の紙を1種類作る

  1. よくある診療を1つ選ぶ(例:皮膚の治療のあとの塗り薬)
  2. 獣医師が、家でのケアの中身を箇条書きで書く
  3. AIに飼い主が読んで分かる言葉に直させ、獣医師が読んで、次の診療から渡す

受付の決まりの1枚と、問い合わせの返事の型は、その次に作ります。

効果は、説明についての電話と、予防の来院の数で測る

測るもの 見方
説明についての電話 診療のあとに「薬の飲ませ方が分からない」などの電話が何件あったか
予防の来院 案内を送った子のうち、時期の月に来院した数
記録の時間 閉院後に記録を書いた時間(獣医師が測る)

始める前の1か月を、先に測っておきます。

まとめ

  • 獣医療法で、獣医師と診療施設の技能、療法、経歴の広告は制限されており、令和6年4月からは決められた事項をすべて併記すれば広告できるものが増えた
  • 予約と問い合わせの返事は受付の決まりから下書きさせ、症状の相談には答えさせない
  • 診療の記録と家でのケアの説明の紙は、獣医師が決めた中身からAIに整えさせ、獣医師が読んで確かめる
  • 予防の案内は時期が来る子を表計算で出し、SNSの投稿はガイドラインと照らしてから出す
  • 診断、治療、薬の量、症状の相談への答えはAIに任せない

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