経営課題×AI

お金が足りなくなる月を先に知る。資金繰り表をAIで毎週更新する方法

この記事で変わる経営指標

この記事では、中小企業が資金繰り表をAIを使って毎週更新し、お金が足りなくなる月を数か月前に知る方法を説明します。一言でいうと、月に一度、経理が時間をかけて作っていた資金繰り表を、AIに入出金の分類と見通しの下書きを任せて毎週更新できるようにし、社長が「足りなくなる月」を早く知って手を打てるようにするという話です。その結果、急な借り入れや支払いの遅れを避けられ、取引先や金融機関からの信用を守れます。

AIの価値は、お金の計算をすることではありません。合計の計算は表計算の式でできます。通帳と請求書と支払いの予定という、ばらばらの記録を毎週つなぎ合わせ、社長が見るべき数字を「先の月」の形で並べることです。

経営への効果は、足りなくなる前に手を打てること

資金繰りで困るのは、お金が足りないことそのものより、足りないと分かるのが遅いことです。

月に一度、経理が作る AIで毎週更新する
足りなくなる月に気づく時点 前の月の終わりごろ 2〜3か月前
打てる手 急な借り入れ、支払いを待ってもらうお願い 金融機関への早めの相談、支払いの条件の見直し、入金を早めるお願い
入金の遅れに気づく時点 月末に通帳と照らしたとき 毎週
経理の手間 月末に数時間 毎週の確認が30分ほど

効果の大きさは、次の式で考えます。

早く気づく価値 = 足りなくなる前に打てる手の数 × それぞれの手で避けられる損

たとえば、足りなくなると3か月前に分かれば、金融機関に相談して借り入れの手続きを進める時間があります。1週間前に分かれば、条件の悪い借り方か、取引先に支払いを待ってもらうお願いしかありません。支払いを待ってもらえば、取引先からの信用が下がり、次の取引の条件に響きます。

入金の遅れにも同じことが言えます。仮に、月に1件、50万円の入金が2か月遅れて気づくとすると、その間、50万円は手元にないまま、ほかの支払いに回せません。毎週気づけば、遅れの翌週に確認の連絡ができます。

AIの費用は、法人向けのプランで1人あたり月数千円です。

2025年度の企業倒産は1万505件、2年続けて1万件を超えた

東京商工リサーチの集計では、2025年度(2025年4月〜2026年3月)の全国の企業倒産は1万505件で、前の年度より3.55%増え、2年続けて1万件を超えました。報道によれば、物価の上昇を原因とする倒産、人手不足による倒産も増えています。

材料や仕入れの値段が上がり、人件費も上がる中で、売上が同じなら、手元に残るお金は減っていきます。値上げが追いつくまでの数か月、お金が足りない月が出てくる会社は少なくありません(値上げの進め方は取引先に値上げを受け入れてもらう方法。根拠の資料をAIで作るで説明しています)。

帳簿の上では利益が出ていても、入金より支払いが先に来れば、手元のお金は足りなくなります。だからこそ、利益の数字とは別に、お金の出入りを先の月まで見ておくことが要ります。それが資金繰り表です。

資金繰り表が大事だと分かっていても、毎月作るのが精一杯

資金繰り表が大事なことは、多くの社長が分かっています。それでも、先の月まで見られている会社は多くありません。

  • 作るのに時間がかかる。 通帳の入出金を、売上の入金、仕入れの支払い、給料、税金などに分けて表に入れるのは、経理の方が月末に数時間かけてやる仕事です。毎週やる余裕はありません
  • 先の月の予定がばらばら。 売掛金の入金予定は請求書に、支払いの予定は仕入先の請求書に、税金や借り入れの返済は別の書類にあります。1つの表にまとめるのが大変です
  • 入金の遅れに気づかない。 請求書を出したきりで、期日に入金されたかを毎回照らしていないと、遅れに気づくのが月末になります
  • 表を見ても、何をすればいいか分からない。 数字が並んでいても、どの月が危ないのか、何をすればいいのかが読み取れなければ、表は使われません

AIに頼めるのは、分類と入金の確認と見通しの下書き

資金繰り表の作り方。今までは月末に経理が時間をかけて作り、足りなくなる月に気づくのが遅かった。AIが毎週、通帳の入出金を分類し、入金の遅れと3か月先の見通しを下書きし、合計は表計算の式で出して、社長が打つ手を決める
資金繰り表の作り方。今までは月末に経理が時間をかけて作り、足りなくなる月に気づくのが遅かった。AIが毎週、通帳の入出金を分類し、入金の遅れと3か月先の見通しを下書きし、合計は表計算の式で出して、社長が打つ手を決める

AIに頼めることは、大きく3つです。

1. 通帳の入出金を分類して、資金繰り表に入れる。 AIに頼むこと:ネットバンキングから書き出した1週間分の入出金の明細を渡し、取引先の名前や摘要から「売上の入金」「仕入れの支払い」「給料」「税金・社会保険料」「借り入れの返済」「その他」に分けてもらう。 返ってくるもの:分類した入出金の一覧。分類に迷ったものには印が付く。 人がすること:印の付いたものを経理の方が確かめ、資金繰り表に入れる。合計と残高は、表計算の式で出す。 何が変わるか:月末の数時間の作業が、毎週の30分ほどの確認になります。

2. 入金の遅れを一覧にして、確認の連絡を下書きする。 AIに頼むこと:出した請求書の一覧(取引先、金額、期日)と、1の入金の一覧を渡し、期日を過ぎても入金されていないものを一覧にしてもらう。取引先ごとに、ていねいな確認の連絡の下書きも作ってもらう。 返ってくるもの:入金が遅れている請求書の一覧と、確認の連絡の下書き。 人がすること:担当の営業か経理が一覧を見て、行き違い(入金の名前が違う、まとめて払われている)がないかを確かめてから連絡する。 何が変わるか:入金の遅れに、遅れた翌週に気づいて確かめられます。

3. 3か月先までの見通しを下書きし、足りなくなる月を知らせる。 AIに頼むこと:入金の予定(出した請求書、毎月の決まった売上)、支払いの予定(仕入先の請求書、給料、税金、返済)を渡し、3か月先までの月ごとの入出金の見通しを表の形にしてもらう。 返ってくるもの:月ごとの見通しと、残高が決めた額を下回りそうな月の印、その理由(大きな支払いが重なる、入金が遅れている取引先がある)。 人がすること:月ごとの合計と残高は、表計算の式で計算し直す。社長が見て、打つ手を決める。 何が変わるか:足りなくなる月が、2〜3か月前に分かります。

AIへの頼み方と、返ってくる見通しはこんな形になる

AIに渡す指示(見本。内容は架空です):

添付は、来月から3か月分の入金の予定と支払いの予定の一覧です。月ごとに、入金の合計、支払いの合計、差し引きを表にしてください。今月末の残高は〇〇円です。月末の残高が△△円を下回る月があれば、その月に印を付け、理由として大きな支払いと遅れている入金を挙げてください。一覧にない入金や支払いは足さないでください。打つ手の提案はせず、数字と理由だけを書いてください。

返ってくる見通しの一部(見本):

月 入金の合計 支払いの合計 差し引き 月末の残高
11月 〇〇円 〇〇円 〇〇円 〇〇円
12月 〇〇円 〇〇円 〇〇円 〇〇円 ※
1月 〇〇円 〇〇円 〇〇円 〇〇円

※ 12月:賞与の支払いと、仕入先A社への大口の支払いが重なる。B社の10月分の入金(〇〇円)が期日を過ぎて未入金

見本の〇〇には、自社の数字が入ります。表の合計と残高は、AIの答えをそのまま使わず、表計算の式で計算し直します。

分類の決まりをスキルにし、合計と残高はAIに計算させない

AIに入出金を分類させるだけなら今日からでもできますが、毎週同じ質で続けるには、もう一段の工夫が要ります。作る側から見ると、ここが「AIを使う」と「使いこなす」の差です。

分類の決まりを Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。資金繰りなら、「取引先ごとの通帳での名前(振込名がカタカナや略称になる会社)」「分類の決まり」「毎月決まって出入りするお金の一覧」をスキルにしておきます。経理の方が休んでも、同じ分け方で表ができます。

合計と残高は、AIの外で計算する。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。資金繰りでは、合計と残高をAIに計算させず、表計算の式で出すこと、AIが分類した入出金の合計が通帳の合計と一致するかを照らすことがそれに当たります。AIは、もっともらしい数字を書くことがあります。お金の数字だけは、AIの答えを使わず、決まった計算で出します。

明日からは、先週1週間分の通帳の明細を分類させてみる

  1. ネットバンキングから、先週1週間分の入出金の明細を書き出す
  2. 会社で契約した、入力をAIの学習に使わないプランに明細を渡し、上の6つの分類に分けてもらう
  3. 経理の方が分類を確かめ、間違えたものと、その正しい分類を書き出す(次からの決まりになる)
  4. 出した請求書の一覧を渡し、期日を過ぎて入金されていないものを一覧にしてもらう
  5. 社長が、来月と再来月の大きな支払いを書き出し、残高が足りるかを経理の方と一緒に見る

まずは1か月、毎週続けてみます。月末にまとめて作るより、毎週のほうが1回の手間が小さく、数字に早く気づけることが分かるはずです。

本格的にやるなら、明細と請求書を集めて毎週月曜に届ける

毎週の作業が定着したら、ネットバンキングの明細と、出した請求書・届いた請求書の一覧を自動で集め、毎週月曜の朝に、更新された資金繰り表と「入金の遅れ」「足りなくなりそうな月」の知らせが社長に届く形にできます。届いた請求書を読み取って支払いの予定に入れる仕組みは、請求書の入力を月25時間から8時間に。AIで読み取り、登録番号まで確かめる方法で説明しています。

会計ソフトに、資金繰りの見通しや入金の消し込みの機能が付いていることもあります。付いていれば、まずそれを使い、足りないところをAIで補うのが早道です。仕組みにするときの費用の考え方は、AI導入にいくらかかる?月数千円から試せて、元が取れるかも先に分かるにまとめています。

打つ手は社長が決め、お金の数字はAIの答えを使わない

  • 合計と残高は、AIの答えを使わない。 表計算の式で計算し、通帳の残高と照らします
  • 打つ手は社長が決める。 借り入れをするか、支払いの条件を相談するか、値上げを急ぐかは、AIではなく社長が決めます。借り入れの相談は、顧問の税理士や取引のある金融機関に早めにします
  • 入金の確認の連絡は、行き違いを確かめてから送る。 振込の名前が違う、ほかの請求とまとめて払われている、ということはよくあります。確かめずに催促すると、取引先を不快にさせます
  • お金の情報の扱いを決める。 通帳の明細や取引先の情報は、社外秘です。会社で契約した、入力をAIの学習に使わないプランで扱い、見られる人を決めます。決め方は社員が安心してAIを使える会社にする、A4で1枚の社内ルールにまとめています
  • 見通しは見通しとして扱う。 先の月の数字は、入金の予定が守られる前提です。遅れそうな取引先が分かっているなら、その入金を外した見通しも並べて見ます

まとめ

  • 資金繰りで困るのは、足りないと分かるのが遅いこと。毎週更新して2〜3か月前に分かれば、金融機関への相談や支払いの条件の見直しが間に合う
  • 2025年度の企業倒産は1万505件で、2年続けて1万件を超えた。物価と人件費が上がる中で、利益とは別にお金の出入りを先まで見ておくことが要る
  • AIに、通帳の入出金の分類、入金の遅れの一覧と確認の連絡の下書き、3か月先の見通しの下書きを任せる
  • 分類の決まりはスキルにまとめ、合計と残高はAIに計算させず表計算の式で出す。打つ手は社長が決める
  • まずは、先週1週間分の通帳の明細を分類させ、1か月、毎週続けてみる

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