生成AI研修に助成金は使える?|経費の75%、8月から汎用の講座は対象外
この記事で変わる経営指標
この記事では、社員に生成AIの研修を受けさせたい社長に向けて、研修の費用に国の助成金が使えるのか、何が対象で何が対象外なのかを説明します。一言でいうと、人材開発支援助成金の「事業展開等リスキリング支援コース」なら、中小企業は研修の経費の75%と、研修中の賃金として1人1時間1,000円が助成の対象になる。ただし2026年8月3日以降に出す計画からは、誰でも同じ汎用のプロンプト講座は対象外。業務ごとに研修の中身を組み、その計画の下書きをAIに手伝わせるという話です。
AIの価値は、研修の代わりになることではありません。社長の頭の中にある「どの業務で、誰に、何ができるようになってほしいか」を、労働局に出せる研修の計画の形に整え、助成の対象になる研修と、ならない研修を事前に見分けることです。
経営への効果は、業務に効く研修を4分の1の費用で受けられること
社員のAI研修の進め方は、次のように変わります。
| よくある研修 | 業務ごとに組んだ研修 | |
|---|---|---|
| 中身 | 全員で同じプロンプトの講座 | 営業は提案書、事務は請求書など業務ごと |
| 助成金 | 2026年8月の計画から対象外 | 経費の75%と1人1時間1,000円が対象 |
| 受ける人 | 社員全員 | その業務の担当者 |
| 研修のあと | 使い方は分かったが業務で使わない | その日から担当の業務で使う |
| 社長の手間 | 講座を申し込むだけ | 業務と担当者を書き出し、計画を出す |
経営の効果は2つあります。
- 研修の費用が下がる。 研修の経費の75%が助成されるので、会社の負担は4分の1ほどになります(受講者1人あたりの上限があります)。研修の時間に払う賃金にも、1人1時間1,000円が出ます
- 研修が業務の成果につながる。 助成の対象になるのは、業務に直結した研修です。対象になる形に組むこと自体が、「研修を受けたが使わない」を防ぐことになります
計算の例です(前提はすべて仮定で、実際の助成額は労働局の審査で決まります)。中小企業で、営業担当3人が、生成AIで提案書を作る通学型の研修を10時間受け、受講料が1人10万円だったとします。経費助成は10万円の75%で1人7.5万円、3人で22.5万円です。賃金助成は10時間×1,000円×3人で3万円です。受講料30万円に対して、会社の負担は7.5万円になり、ほかに賃金助成の3万円が入ります。
助成金は、事業展開等リスキリング支援コースを使う
厚生労働省の人材開発支援助成金には7つのコースがあり、AIの研修に使いやすいのは「事業展開等リスキリング支援コース」です。厚生労働省のご案内によると、会社のデジタル化(DX)を進めるために、その業務で必要になる専門的な知識や技能を身につけさせる研修が対象です。
厚生労働省のご案内と、解説記事(Uravation)で確かめた主な条件は次のとおりです(2026年10月時点)。
| 項目 | 中小企業の場合 |
|---|---|
| 経費助成 | 研修の経費の75% |
| 賃金助成 | 研修の時間1人1時間あたり1,000円 |
| 1人あたりの経費の上限 | 10時間以上100時間未満で30万円、100時間以上200時間未満で40万円、200時間以上で50万円 |
| eラーニング・通信制 | 経費助成のみ(賃金助成なし)。上限は1人15万円 |
| 研修の条件 | 10時間以上、通常の業務と分けて行う研修(OFF-JT) |
| 計画の提出 | 研修を始める日の6か月前から1か月前までに、労働局へ |
| 期限 | 令和8年度末(2027年3月末)までの時限措置 |
使えるのは、雇用保険に入っている会社と、雇用保険に入っている社員です。計画を出す前に研修を始めると、助成の対象になりません。
2026年8月から、誰でも同じプロンプト講座は対象外になった
厚生労働省は、2026年8月3日以降に出す計画から、このコースのデジタル化の研修のうち、次のものを助成の対象外にしました。
- 業務に間接的に必要な知識を学ぶもの
- 職種を問わず、働く人に共通して必要なもの
厚生労働省の案内には、具体的な例が載っています。
- 対象外の例:生成AIを使うための、汎用的なプロンプトの作り方を学ぶ研修。DXの考え方やデジタル技術の概要を学ぶ研修
- 対象の例:生成AIを使って商品提案書の構成案を作り、文章を作って直す方法を学ぶ、営業担当者向けの研修
分かれ目は、特定の業務に直結していて、研修のあとそのまま業務で使える中身かです。厚生労働省の案内では、研修の中身に合った社員を選んでいるかも確かめるとしています。営業の研修を人事の担当者が受けても、対象外になります。
同じ改正で、eラーニングの研修は、同じ社員について年度に1回までになりました。2026年8月2日までに契約や申し込みを済ませた研修には経過措置があります。自社が当てはまるかは、管轄の労働局に確かめてください。
業務と担当者を書き出し、研修の計画をAIで下書きする
人がすること(最初に)。 社長が、AIを使ってほしい業務を2〜3つ書き出します。業務ごとに、担当者が誰で何人か、今どのくらい時間がかかっているか、研修のあと何ができるようになってほしいかをメモにします。研修を頼みたい会社の講座の案内(中身と時間)があれば、それも用意します。
AIに頼むこと。 社長のメモと講座の案内をもとに、次の2つを下書きしてもらいます。
- 研修の計画の骨組み:業務ごとに、研修の目的、受ける社員、研修の中身(時間割)、研修のあと業務でどう使うか
- 対象外に当たりそうな点の洗い出し:中身が汎用的な使い方の説明にとどまっていないか、受ける社員と研修の中身が合っているか、時間が10時間に届いているか
人がすること(そのあと)。 社長が中身を確かめ、研修を頼む会社と時間割を詰めます。労働局に出す書類は所定の様式があるので、AIの下書きはその材料として使います。迷う点は、計画を出す前に労働局に相談します。営業担当者の研修を、時間割と出す書類まで具体的に組む方法は、営業の生成AI研修を助成金の対象で組む|10時間の時間割と出す書類で説明しています。
AIへの頼み方と、返ってくる研修の計画はこんな形になる
AIに渡す指示(見本。内容は架空です):
下は、当社の社長のメモと、研修会社の講座の案内です。人材開発支援助成金の事業展開等リスキリング支援コースに出すための、研修の計画の骨組みを下書きしてください。業務ごとに、目的、受ける社員、研修の中身と時間、研修のあと業務でどう使うかを書いてください。そのあとに、「汎用的なプロンプトの作り方」や「DXの考え方」だけにとどまっていて助成の対象外になりそうな点を挙げてください。メモにないことは書かず、社員の名前は書かないでください。
返ってくる計画(見本の一部):
業務1:見積と提案書の作成(営業担当3人)
- 目的:過去の提案書と商品の資料をもとに、生成AIで提案書の構成案と本文を作り、直す手順を身につける
- 研修の中身:自社の商品資料を使った提案書の作成の演習(6時間)、お客さまの業種ごとの書き分け(4時間)
- 研修のあと:新しい引き合いの提案書は、AIで構成案を作ってから仕上げる
対象外になりそうな点
- 講座の案内の1日目「プロンプトの基本」は、どの職種にも共通する内容に見えます。研修会社に、自社の提案書を使った演習に替えられるか確かめてください
社長は、業務と担当者が合っているか、時間が足りているかを確かめてから研修会社と話します。
研修の計画の型をスキルにし、助成の判断は労働局に置く
ここまでの使い方は、そのつどAIのチャットに頼む場合です。業務ごとに何本か研修を組むなら、もう一段の工夫をしておくと安定します。作る側から見ると、ここが「AIを使う」と「使いこなす」の差です。
研修の計画の型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、「計画の型(目的、受ける社員、中身と時間、研修のあとの使い方)」「対象外の点検の項目(汎用的な中身になっていないか、受ける社員と中身が合っているか、10時間以上か、eラーニングの回数)」「書いてはいけないこと(社員の名前、メモにない数字)」をスキルにします。
助成の判断は、AIの外に置く。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、どの業務の研修にするかを社長が決めること、計画を出す前に労働局に確かめること、研修の日程と計画の提出日を社内の表で管理することがそれに当たります。対象になるかどうかを決めるのは労働局で、AIではありません。
明日からは、AIを使ってほしい業務を3つ書き出す
- AIを使ってほしい業務を3つまで書き出し、担当者と、研修のあと何ができるようになってほしいかをメモする
- 研修を頼めそうな会社の講座の案内を集め、業務に合わせて中身を変えられるかを聞く
- 会社で契約した、入力をAIの学習に使わないプランか、社員の名前を入れない形で、上の見本の指示で研修の計画を下書きさせる
- 研修を始めたい日から逆算し、6か月前から1か月前までの間に計画を出す日を決める
- 計画を出す前に、管轄の労働局に、対象になるかを相談する
本格的にやるなら、研修のあとに使う型を先に配る
一度できたら、次の形に育てます。
- 研修の前に、業務で使う頼み方の見本を配る。 研修だけでは、社員は業務で使い続けません。先に業務ごとの頼み方の見本を配っておく進め方は、生成AIは研修だけでは社員に広がらない|先に配る頼み方の見本で説明しています
- 社内で旗を振る人を決める。 研修を受けた人の中から、社内に広げる担当を決めます。選び方はAI推進の担当者は詳しい若手より業務を知る人|社内に広げる選び方にまとめています
- 道具の費用は補助金で。 研修の費用は助成金、AIの道具やシステムの費用は補助金と、窓口が分かれます。補助金はデジタル化・AI導入補助金で生成AIは対象?使える費用と使えない費用で説明しています
- 何から始めるか迷ったら相談する。 どの業務の研修から始めるかを無料で相談できる窓口は、AI導入の相談はどこへ?|無料で何度でも使える、よろず支援拠点の使い方で紹介しています
助成の判断と、社員の情報はAIに任せない
- 対象になるかは労働局が決める。 AIの点検は、気づくための下書きです。最終の判断は、計画を出す前に管轄の労働局に確かめます
- 計画を出す前に研修を始めない。 研修を始める日の1か月前までに計画を出していないと、助成の対象になりません
- 制度は変わる。 このコースは令和8年度末までの時限措置で、2026年度だけでも4月と8月に改正がありました。申し込む前に、厚生労働省のページで最新の案内を確かめます
- 社員の情報を入れない。 AIに渡すメモに、社員の名前や評価、給与は書きません。社内でAIを使うときの決まりは、生成AIの社内ルールの作り方|A4で1枚、社員が安心して使える3つの決めごとにまとめています
まとめ
- 社員の生成AI研修には、人材開発支援助成金の事業展開等リスキリング支援コースが使え、中小企業は経費の75%と1人1時間1,000円が対象になる
- 2026年8月3日以降に出す計画から、誰でも同じ汎用のプロンプト講座は対象外になり、業務に直結した研修だけが対象になる
- 業務と担当者を書き出し、研修の計画と、対象外になりそうな点の洗い出しをAIで下書きする
- 計画は研修を始める日の6か月前から1か月前までに労働局へ出し、対象になるかは労働局に確かめる
- このコースは令和8年度末までの時限措置なので、使うなら早めに計画を立てる