業務への組み込み例

つまずいた問題の類題を次の授業で出す。AIが下書きし講師が解いて確かめる

この記事で変わる経営指標

この記事では、小さな学習塾は保護者への報告で選ばれる。AIで講師の事務を減らす方法の「小テストと類題は、AIが下書きし、講師が解いて確かめる」を、塾の仕組みとして作る方法を説明します。

一言でいうと、授業で生徒がつまずいた問題を、講師が単元と考え方と一緒に一言で残す。AIがその考え方を使う類題と小テストを、塾のオリジナルの問題として下書きする。講師が自分で解いて、答えと解き方が正しいかを確かめてから、次の授業で出すという形です。つまずきを、その週のうちに練習で埋められるようにします。

子どもが減るなかで、成績が伸びる手応えが塾を選ぶ理由になる

親の記事で触れたとおり、厚生労働省の人口動態統計(概数)では、2025年の日本人の出生数は67万1,236人で過去最少でした(共同通信の配信を掲載した熊本日日新聞でも同じ数字が報じられています)。子どもが減れば、一人ひとりの生徒が塾を続けてくれるかどうかの重みが増します。

保護者と生徒が塾を続けるかを決めるのは、「分からなかったところが分かるようになった」という手応えです。そのためには、生徒がつまずいた問題と同じ考え方の練習を、つまずいた直後に出すのが効きます。ただ、小さな塾の講師は、授業と保護者への連絡で手一杯で、一人ひとりのつまずきに合わせた類題を毎回作る時間がありません。

今は類題探しに時間がかかり、問題集の同じ問題に頼っている

多くの小さな学習塾では、類題や小テストが次のように作られています。

  1. 授業で生徒がつまずいた問題を、講師が覚えておく
  2. 次の授業までに、問題集から似た問題を探す。ぴったりの問題が見つからないこともある
  3. 小テストは、単元ごとに決まった問題を毎年使い回す
  4. 生徒ごとのつまずきに合わせた問題までは手が回らない

1セットの類題を探して作るのに40分ほどかかることもあり、結局「次の単元に進む」で終わってしまいます。

残し、AIが書き、講師が解き、次の授業で出す

授業で生徒がつまずいた問題を講師が単元と考え方と一緒に残し、塾の問題の型と見本をそろえておく。AIがその考え方を使う類題を塾のオリジナルの問題として下書きし、講師が自分で解いて確かめてから次の授業で出す
授業で生徒がつまずいた問題を講師が単元と考え方と一緒に残し、塾の問題の型と見本をそろえておく。AIがその考え方を使う類題を塾のオリジナルの問題として下書きし、講師が自分で解いて確かめてから次の授業で出す

仕組みは4つの段でできています。

1. 残す:つまずいた問題を、単元と考え方と一緒に残す。 授業が終わったら、講師が生徒ごとに一言残します。

  • 学年と単元(「中2数学、連立方程式の文章題」)
  • つまずいた考え方(「速さの問題で、式の立て方が分からない」)
  • 間違え方(「時間と距離を取り違えている」)

2. 下書きする:AIが類題と小テストを、塾のオリジナルの問題として書く。 AIに、講師のメモと、塾の問題の型を渡し、次のものを下書きさせます。

  • 同じ考え方を使う類題を3問(易しいものから少しずつ難しく)
  • それぞれの答えと、解き方の手順
  • 間違えやすいところの一言(「時間の単位をそろえる」)

問題は、教科書や問題集の問題を写したものではなく、数字や場面を変えた塾のオリジナルにさせます。

3. 解いて確かめる:講師が自分で解き、答えと解き方を確かめる。 講師が、AIの答えを見ずに自分で解きます。そのうえで、AIの答えと解き方と照らします。食い違えば、問題か答えを直します。図形の条件や、文章題の数字が成り立つかもここで確かめます。

4. 出す:次の授業で出し、できたかを残す。 次の授業の始めに類題を出し、生徒ができたかを記録します。できなければ、もう一段易しい類題を同じ手順で作ります。

問題の型をスキルにし、答えの確かめはAIの外に置く

この仕組みが毎回同じ質で回るかどうかは、AIに渡す決まりと、AIの外の仕組みで決まります。作る側から見ると、ここが「AIを使う」と「使いこなす」の差です。

問題の型と塾の言葉を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、次のものをスキルにします。

  • 問題の型:学年と単元ごとの、問題の長さ、数字の大きさ、言葉づかい
  • 解き方の書き方:塾で教えている解き方の手順と、使う言葉
  • 良い類題の見本:講師が過去に作った、生徒に効いた類題を単元ごとに3つ
  • 書いてはいけないこと:教科書や問題集の問題の書き写し、答えが1つに決まらない問題、学年で習っていない解き方

答えの確かめは、AIの外に置く。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、講師が自分で解いて照らすこと、計算問題は表計算などで答えを検算すること、講師が「確かめた」と印を付けた問題だけを出す決まりにすることが、それに当たります。AIは、計算の答えや図形の条件を間違えることがあります。講師が解かずに生徒に出すことはしません。

教科書や問題集の問題は写さず、塾のオリジナルにする

類題を作るときに気をつけたいのが、教科書や問題集の問題の扱いです。

著作権法第35条は、学校その他の教育機関で、授業のために必要な限度で、公表された著作物を複製することなどを認めています。ただし、この教育機関からは「営利を目的として設置されているもの」が除かれています(e-Gov法令検索の条文による。教科書会社の帝国書院の解説でも、対象は非営利の教育機関に限るとされています)。多くの学習塾は営利を目的に設置されているので、この定めに頼って問題をコピーして配れると考えないほうが安全です。

AIに頼むときも、「この問題集の問題を写して」とは頼まず、考え方だけを渡して、数字と場面を変えたオリジナルの問題を作らせます。迷う場合は、教材の出版社や専門家に確かめます。

類題の結果は、保護者への毎月の報告の材料にもなります。報告の作り方は、塾の保護者への毎月の報告を全員に届ける。講師のメモと点数から下書きする仕組みで説明しています。

講師の仕事は、探すことから解いて確かめることになる

仕組みが入ると、類題と小テストの準備は次のように変わります(想定です)。

今まで 仕組みが入ったあと
類題の準備 問題集から探す。1セット40分ほど 下書きを解いて確かめる15分ほど
生徒のつまずき 覚えておくが、問題に反映しきれない 一言のメモから類題になる
問題の出どころ 問題集の同じ問題 塾のオリジナル
答えの確かめ 問題集の答えを見る 講師が自分で解いて照らす
出す時期 次の単元に進んで終わる 次の授業の始め

経営への効果は、成績の手応えが続ける理由になること

効果は、前提を置いて計算します。仮に、1セットの類題の準備に40分かかっていたものが、下書きを解いて確かめる15分になれば、1セット25分が浮きます。月40セットを作る塾なら月約17時間、1時間あたりの人件費を仮に2,500円として月約4万2,000円分です。

ただ、大きいのは時間だけではありません。つまずいた問題をその週のうちに練習で埋められれば、生徒は「分かるようになった」と感じやすくなります。その手応えが、保護者と生徒が塾を続ける理由になります。体験授業のあとの報告の作り方は、体験授業の様子をその日のうちに保護者へ。講師のメモからAIが報告を下書きで説明しています。

費用は小さく、AIの利用料は月160円ほど

作る順番と、かかる日数

  1. 学年と単元ごとの問題の型と、解き方の書き方と、書いてはいけないことを決め、見本を選ぶ(塾:塾長と講師、1日)。ここがいちばん大事です
  2. 講師のメモの残し方と、「確かめた」の印の付け方を決める(塾:塾長、1時間)
  3. 講師のメモから類題を下書きし、確かめの印と出した結果を残す仕組みを作る(作る人、1人日)
  4. 1か月、講師1人で試して直す(作る人、0.5人日)

作る費用

作る費用 = 作る人の日数(人日)× 1日あたりの単価

上の手順3〜4で、作る側の目安は合計1.5人日です。

毎月の費用

費用 中身 想定の塾での目安
AIの利用料 1セットの類題の下書きごとにかかる 月40セットで160円ほど(下の計算)
印刷・表計算 すでに使っているもの 追加0円の想定
保守 問題の型と見本の更新 月1時間

AIの利用料は、読ませた量と書かせた量で決まります。2026年10月7日時点のAnthropic社のClaude(Sonnet 5.5)の公式料金は、読ませる量100万トークン(AIが文字を数える単位)あたり2ドル、書かせる量100万トークンあたり10ドルです。1セットあたりメモとスキルで3,000トークンを読ませ、問題と答えと解き方で2,000トークンを書かせると見積もると、0.026ドル、1ドル150円で約3.9円です。月40セットで160円ほどです。

何か月で取り戻せるか

取り戻すまでの月数 = 作る費用 ÷(月に浮く金額 − 毎月の費用)

仮に作る費用が9万円、毎月の費用(利用料と保守の時間)を約2,700円とすると、月約4万2,000円分が浮く塾でおよそ2.3か月です。講師が数人の塾なら、仕組みは作らず、問題の型をスキルにして、塾で契約したAIのチャットにメモを貼って下書きさせるやり方で十分です。そのときも、講師が解いて確かめる決まりは同じです。

必要な人は3役で、確かめるのは講師

役 誰が すること 時間
残して確かめる人 授業をした講師 つまずきを一言残し、類題を自分で解いて確かめ、次の授業で出す 1セット15分
型を決める人 塾長 問題の型と見本を決め、ときどき類題を見て直す 月1時間
作る人 塾の詳しい人か、外の作り手 メモから下書き、確かめの印、結果の記録を作る 最初の1.5人日

いちばん大事なのは、講師が自分で解いてから出すことです。答えの間違った問題を一度出すと、生徒と保護者の信頼を失います。

1か月で型がそろい、半年で成績の変化を比べられる見込み

どこまでいけるかは、問題の型と見本がどれだけそろうかで決まります。目安は次のとおりです。

時期 見込み
最初の1か月 講師1人で試す。講師が直したところを型に足す
3か月 単元ごとの見本がそろい、講師の全員が使える
半年 類題を出した単元の小テストの点数と、続けている生徒の割合を、仕組みの前と比べられる

効果を確かめるには、次の3つを記録します。

  • 類題の準備にかかった時間:講師が1セットごとに残します
  • 類題を出した生徒が、次の小テストでその単元を解けたか:単元ごとに記録します
  • 講師が直した問題の数と中身:型を見直す材料にします

解かずに出したり、問題集を写したりすると失敗する

作る側から見て、よくある失敗は次の4つです。

  • 講師が解かずに出す。 「確かめた」の印が付いた問題だけを出します
  • 教科書や問題集の問題を写させる。 考え方だけを渡し、塾のオリジナルにします
  • 学年で習っていない解き方が混ざる。 書いてはいけないことに入れ、講師が確かめます
  • 答えが1つに決まらない問題を出す。 解いて確かめるときに、条件が足りているかも見ます

生徒の名前や成績は、外に出してはいけない情報です。塾で契約した、入力をAIの学習に使わないプランで扱い、塾の決まりに書いておきます。決め方は社員が安心してAIを使える会社にする、A4で1枚の社内ルールにまとめています。

まとめ

  • 授業で生徒がつまずいた問題を、学年と単元とつまずいた考え方と一緒に一言で残す
  • AIがその考え方を使う類題を3問と、答えと解き方を、塾のオリジナルの問題として下書きする
  • 講師がAIの答えを見ずに自分で解いて照らし、「確かめた」の印が付いた問題だけを次の授業で出す
  • 著作権法第35条の例外は営利の教育機関を除くので、教科書や問題集の問題は写さない
  • 作る側の目安は1.5人日で、AIの利用料は月160円ほど。小さな塾は型をスキルにしてチャットで十分

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