経営課題×AI

年末調整を11月に慌てない。178万円の壁の案内と書類の確認をAIで手伝う

この記事で変わる経営指標

この記事では、2026年の年末調整を、11月に慌てずに終える方法を説明します。一言でいうと、国の資料から、今年の変更点の一覧を人が1枚にまとめる。AIは、その一覧をもとに、社員向けの案内と、よくある質問の答えを下書きする。社員から集めた申告書は、記入漏れと前年との違いを計算で点検する。税額の計算は給与ソフトで行い、迷う判断は税理士に聞くという話です。

AIの価値は、税額を計算することではありません。今年の変更点を社員に分かる言葉で早めに伝え、同じ質問に何度も答える時間と、書類の出し直しを減らすことです。

経営への効果は、担当者の時間を守り、社員の不安を減らすこと

年末調整の準備は、AIを使うと次のように変わります。

今まで 変更点の一覧と、AIの下書き
社員への案内 去年の案内を少し直して配る 今年の変更点を入れた案内を下書き
社員の質問 担当者が一人ずつ答える よくある質問の答えを先に配る
申告書の点検 1枚ずつ目で見る 記入漏れと前年との違いを計算で印
出し直し 締め切りのあとに気づく 回収した日に印が付き、すぐ頼める
迷う判断 その場で調べる 一覧にして税理士にまとめて聞く
年末調整の準備の変化。今までは去年の案内を少し直して配り、社員の質問に一人ずつ答え、申告書を1枚ずつ目で見ていた。国の資料から人が変更点の一覧を作り、AIが案内とよくある質問の答えを下書きし、申告書は計算で点検し、税額は給与ソフトで計算する
年末調整の準備の変化。今までは去年の案内を少し直して配り、社員の質問に一人ずつ答え、申告書を1枚ずつ目で見ていた。国の資料から人が変更点の一覧を作り、AIが案内とよくある質問の答えを下書きし、申告書は計算で点検し、税額は給与ソフトで計算する

年末調整は、小さな会社では、総務や経理の担当者が1人でほかの仕事と一緒に抱えることが多い仕事です。11月から12月にかけて、案内を配り、書類を集め、出し直しを頼み、給与ソフトに入れる。今年は変更点が大きく、社員からの質問も増えそうです。

社員にとっても、手取りや働き方にかかわる話です。とくにパートやアルバイトの社員は、「いくらまで働いていいのか」を気にしています。分かりやすい案内を早めに出せば、社員の不安を減らし、年末の働き控えの相談にも落ち着いて答えられます。

今年は所得税がかからない水準が178万円に上がる

令和8年度の税制改正で、給与の収入について所得税がかからない水準が、160万円から178万円に引き上げられます(SmartHR Mag.とjinjerの解説による)。jinjerの解説によると、関連する法律は2026年3月31日に成立しました。年末調整では、改正後の基準で1年分の所得税を精算します。

改正にともない、年末調整で使う書類の様式も変わる予定だと、国税庁が事前に情報を出しています(SmartHR Mag.の解説による)。配偶者控除などの所得の判定や、生命保険料控除にも見直しがあるとされています。

気をつけたいのは、178万円は所得税の話だということです。社会保険の扶養の基準や、住民税がかかる水準は、別の基準で決まっています(jinjerとSmartHR Mag.の解説による)。所得税の基準だけを見て働き方を決めると、社会保険料がかかって手取りが減ることもあります。

細かい変更点と、今年の書類の様式は、必ず国税庁の最新の資料と、顧問の税理士で確かめてください。2026年10月時点の情報です。

担当者が困るのは、案内と質問と出し直し

年末調整で担当者の時間がかかるのは、税額の計算そのものより、その前後です。

  • 案内を作る。 去年の案内を直して配るが、今年の変更点をどこまで書けばいいか分からない
  • 質問に答える。 「178万円までなら大丈夫ですか」「配偶者の分はどう書くのですか」と、同じ質問が何人からも来る
  • 出し直しを頼む。 記入漏れや、前年から変わったはずの家族の欄が古いままの書類を、締め切りのあとに見つけて頼み直す

この3つは、決まりがはっきりしているので、AIと計算で手伝いやすい仕事です。

変更点の一覧を人が作り、AIが案内とよくある質問を下書きする

人がすること(最初に)。 国税庁の今年の資料(年末調整のしかた、源泉所得税の改正のあらまし)から、今年の変更点を1枚の一覧にまとめます。顧問の税理士に見てもらうと確かです。この一覧が、AIに渡す唯一の材料です。

AIに頼むこと。 変更点の一覧をもとに、次のものを下書きしてもらいます。

  • 社員向けの案内:今年変わること、提出する書類と締め切り、書くときに気をつけるところを、A4で1枚に
  • よくある質問と答え:「178万円の意味」「社会保険の扶養とは別であること」「家族の状況が変わったときの書き方」などを、一覧にあることだけで
  • パートの社員向けの説明:所得税、社会保険、住民税の基準が別々であることを、図にしやすい形で。個別の判断はせず、「人によって違うので担当者に相談を」と書く

計算で行うこと。 回収した申告書の内容を表に入れ、次のものに印を付けます。

  • 書くべき欄が空いているもの
  • 前年の申告書と比べて、扶養の家族の人数や名前が変わっているもの(変わったなら書類がそろっているか、変わっていないのに古い情報のままでないか)
  • 社員の一覧の情報(住所、家族)と食い違うもの

何が変わるか。 案内とよくある質問が早く出せるので、質問が減ります。申告書は回収した日に点検でき、出し直しを早めに頼めます。点検の表と依頼文の作り方は、年末調整の申告書を回収した日に点検。空欄と前年との違いは表、依頼文はAIでで説明しています。

AIへの頼み方と、返ってくる案内はこんな形になる

AIに渡す指示(見本。内容は架空です):

下は、税理士に確かめてもらった、今年の年末調整の変更点の一覧と、当社の提出の締め切りです。これをもとに、社員向けの案内をA4で1枚、分かりやすい言葉で下書きしてください。一覧に書かれていないことは書かず、税額や個人の判断にかかわることは「担当者に相談を」と書いてください。そのあとに、よくある質問と答えを5つ、一覧にあることだけで作ってください。

返ってくる案内(見本の一部):

今年の年末調整で変わること

  • 所得税がかからない給与の水準が、今年から上がりました(くわしくは下の質問1)
  • 申告書の様式が新しくなりました。去年の用紙は使わず、配った用紙に書いてください
  • 提出の締め切りは11月○日です

質問1:178万円までなら、税金や保険料はかかりませんか? 178万円は所得税の話です。社会保険や住民税は別の基準です。働き方を考えるときは、担当者に相談してください。

担当者は、変更点の一覧と照らして中身を確かめ、締め切りを入れて配ります。

変更点の一覧と点検は表で持ち、案内の型はスキルにする

ここまでの使い方は、そのつどAIのチャットに頼む場合です。毎年の年末調整で続けるなら、もう一段の工夫をしておくと安定します。作る側から見ると、ここが「AIを使う」と「使いこなす」の差です。

案内とよくある質問の型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、「社員向けの案内の型」「よくある質問の型」「会社の言葉(提出の方法、担当者の名前)」「書いてはいけないこと(変更点の一覧にないこと、税額の計算、個人の働き方や扶養の判断、年によって変わる金額を確かめずに書くこと)」をスキルにします。

変更点の一覧と、申告書の点検は、AIの外に置く。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、国の資料から人が作り、税理士が確かめた変更点の一覧だけをAIに渡すこと、申告書の空欄と前年との違いを表の計算で出すこと、税額の計算を給与ソフトで行うことがそれに当たります。AIは税制の細かい金額や条件を間違えることがあるので、案内に書く数字は一覧から差し込みます。

明日からは、今年の変更点を1枚にまとめる

  1. 国税庁の今年の年末調整の資料を集め、変更点を1枚の一覧にまとめる。顧問の税理士に確かめてもらう
  2. 会社で契約した、入力をAIの学習に使わないプランに一覧を渡し、上の見本の指示で案内とよくある質問を下書きさせる
  3. 担当者が一覧と照らして直し、10月中に配る
  4. 去年の申告書の内容を表にしておき、今年の申告書を回収したら同じ表に入れて、空欄と前年との違いに印を付ける
  5. 迷う判断は一覧にまとめ、税理士にまとめて聞く

本格的にやるなら、毎年の変更点の一覧と点検の表を引き継ぐ

1年目ができたら、次の形に育てます。

  • 変更点の一覧を毎年作り直す。 税制は毎年のように変わります。去年の一覧を元に、今年の資料と照らして作り直します
  • よくある質問を育てる。 社員から実際に来た質問を記録し、翌年の質問と答えに足します
  • 点検の表を引き継ぐ。 前年の申告書の内容を残しておけば、翌年は違いが自動で出ます
  • 働き方の相談に備える。 パートの社員の働き方の相談には、所得税、社会保険、住民税の基準をまとめた社内の資料で答え、個別の判断は社会保険労務士や税理士に聞きます

書類の点検にAIと計算を組み合わせる考え方は、送る前の書類のミスを止める。AIを「二人目の確認者」にする方法で説明しています。

税額の計算と、個人の判断はAIに任せない

  • 税額の計算は給与ソフトで行う。 AIに税額を計算させません
  • 変更点の一覧は人が作り、税理士が確かめる。 AIに税制を調べさせて案内を作ると、古い情報や間違いが混ざることがあります
  • 個人の判断はしない。 扶養に入れるか、働き方をどうするかは、本人と担当者、必要なら社会保険労務士や税理士で決めます
  • 社員の情報に気をつける。 家族の名前、収入、マイナンバーは、とても大事な個人の情報です。AIには渡さず、点検は社内の表で行います。案内とよくある質問の下書きには、個人の情報は要りません。決め方は社員が安心してAIを使える会社にする、A4で1枚の社内ルールにまとめています

まとめ

  • 2026年は、令和8年度の税制改正で、所得税がかからない給与の水準が160万円から178万円に上がり、年末調整で精算する
  • 178万円は所得税の話で、社会保険の扶養や住民税は別の基準。社員への案内で分けて伝える
  • 国の資料から人が変更点の一覧を作り、税理士が確かめる。AIはその一覧から、社員向けの案内とよくある質問を下書きする
  • 申告書の空欄と前年との違いは、表の計算で印を付け、出し直しを早めに頼む
  • 税額の計算は給与ソフト、個人の判断は本人と専門家。家族の情報やマイナンバーはAIに渡さない

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