子育てや介護の社員を辞めさせない。制度の説明と意向の確認をAIで準備する
この記事で変わる経営指標
この記事では、子育てや家族の介護をしている社員が、辞めずに働き続けられる会社にする方法を説明します。一言でいうと、2025年の育児・介護休業法の改正で義務になった「個別の周知・意向確認」を、漏れなく、その人に合った形で行う。対象になる社員と時期は、社員の一覧から計算で出す。AIは、就業規則の制度の一覧から、社員ごとの説明資料と面談で聞くことを下書きする。制度を使えるかの判断と、面談そのものは社長と担当者が行うという話です。
AIの価値は、制度を説明することそのものではありません。忙しい社長や担当者でも、対象の社員に、使える制度を、その人の状況に合わせて、早めに伝えられるようにすることです。知らないまま辞めてしまう社員を減らします。
経営への効果は、経験のある社員を失わないこと
子育てや介護の社員への対応は、AIを使うと次のように変わります。
| 今まで | 社員の一覧で計算し、説明はAIが下書き | |
|---|---|---|
| 対象の社員 | 申し出があってから気づく | 一覧から、時期が来た人が並ぶ |
| 制度の説明 | 就業規則を渡すだけ | その人に合った説明資料が出る |
| 面談 | 何を聞けばいいか分からない | 聞くことの一覧が出る |
| 記録 | 残らない | 面談の記録と、本人の希望が残る |
| 仕事の分担 | 休みに入ってから慌てる | 早めに引き継ぎの準備ができる |
子育てや介護をしている社員の多くは、仕事にも慣れた、経験のある社員です。辞めてしまえば、その人が持っていたお客様との関係や仕事のやり方が、会社から消えます。代わりの人を採用し、育てるには、時間とお金がかかります。
使える制度を知らないまま、「もう続けられない」と辞めてしまう社員もいます。制度を早めに、分かりやすく伝え、本人の希望を聞いておくことは、こうした離職を防ぐいちばん手前の手です。
2025年の改正で、個別の説明と意向の確認が会社の義務になった
2025年に施行された育児・介護休業法の改正で、会社がすることが増えました(社会保険労務士による解説、かいけつ!人事労務、仙台市雇用労働相談センター、オフィスステーションの記事による)。
介護(2025年4月から)
- 家族の介護に直面したと申し出た社員に、使える制度を個別に知らせ、使う意向を確かめる
- 介護に直面する前の早い段階で、両立の制度について情報を提供する
- 研修や相談の窓口を置くなど、制度を使いやすい環境を整える
子育て(2025年10月から)
- 3歳から小学校に入る前の子を育てる社員のために、始業の時刻の変更、テレワーク、保育施設の設置、新しい休暇、短い時間の勤務、の5つの中から2つ以上を設け、社員が選べるようにする
- 子が3歳になる前の社員に、選べる働き方を個別に説明し、使う意向を確かめる
どの社員に、いつまでに、何を伝えるかの細かい決まりは、厚生労働省の資料と就業規則で確かめます。社会保険労務士に見てもらうと確かです。2026年10月時点の内容です。
小さな会社ほど、担当者が少なく、伝え漏れが起きやすい
大きな会社には人事の部署がありますが、小さな会社では、社長か総務の担当者が1人で、ほかの仕事と一緒に対応しています。次のようなことが起きがちです。
- 誰がいつ対象になるかを、誰も把握していない
- 申し出があっても、何を説明すればいいか分からず、就業規則を渡して終わる
- 面談をしても、記録が残らない。次に何をするかが決まらない
- 制度を使うことになっても、仕事の分担を決めるのが遅れ、周りの社員に負担が集まる
法律で決まったことを守るだけでなく、社員が「この会社なら続けられる」と思えるように伝えることが大事です。
対象と時期は社員の一覧から計算し、AIは説明資料を下書きする
計算で行うこと。 社員の一覧に、子の生年月日(社員が届けた範囲で)、介護の申し出の有無と日付を入れておきます。そこから、次の人を毎月一覧にします。
- 子が3歳になる前の決まった時期に入った社員
- 介護の申し出があり、まだ説明と意向の確認をしていない社員
- 介護に直面する前の情報提供を、まだしていない社員
AIに頼むこと。 対象の社員ごとに、次の2つを下書きしてもらいます。
- 説明資料:会社の制度の一覧(就業規則から人が作ったもの)から、その社員が使える制度、申し出の方法と期限、相談の窓口を、分かりやすい言葉で1〜2枚にまとめる
- 面談で聞くことの一覧:本人の希望(使いたい制度、働き方、時期)、仕事で心配なこと、周りに頼みたいことを聞く質問
面談のあとは、話したメモから、面談の記録と、次にすること(申し出の書類、仕事の分担の相談)を下書きしてもらいます。
人がすること。 社長か担当者が、説明資料を確かめて面談をします。制度を使えるかどうかの判断と、仕事の分担は、社長と本人が話して決めます。
AIへの頼み方と、返ってくる説明資料はこんな形になる
AIに渡す指示(見本。内容は架空です):
下は、当社の就業規則から作った、子育ての両立の制度の一覧です。子が来年3月に3歳になる社員に渡す説明資料を、A4で1枚、分かりやすい言葉で下書きしてください。当社で選べる働き方(一覧の「柔軟な働き方」の欄)と、それぞれの申し出の方法と期限、相談の窓口を書いてください。一覧にない制度は書かず、分からないところは「担当者に確認」と書いてください。
返ってくる説明資料(見本の一部):
お子さんが3歳になったあとも、働き方を選べます
当社では、次の2つから選べます。
- 始業の時刻を早めたり遅らせたりする(申し出は1か月前までに、総務へ)
- 1日6時間の短い時間で働く(申し出は1か月前までに、総務へ)
選ぶかどうか、いつから使うかを、○月の面談でお聞かせください。分からないことは、いつでも総務の○○に聞いてください。
担当者は、制度の一覧と照らして中身を確かめ、面談の日を入れて渡します。
制度の一覧と対象者の計算はAIの外に置き、説明の型はスキルにする
ここまでの使い方は、そのつどAIのチャットに頼む場合です。毎月続けるなら、もう一段の工夫をしておくと安定します。作る側から見ると、ここが「AIを使う」と「使いこなす」の差です。
説明資料と面談の型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、「説明資料の型(子育て用、介護用、介護の前の情報提供用)」「面談で聞くことの型」「面談の記録の型」「書いてはいけないこと(制度の一覧にない制度、給付金の金額や条件の断定、制度を使うと評価が下がるかのような言い方、本人を引き止めるような言い方)」をスキルにします。
制度の一覧と、対象者と時期の計算は、AIの外に置く。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、就業規則から人が作った制度の一覧を持つこと、社員の一覧から対象者と時期を計算すること、説明と面談をした日を記録して、まだの人を一覧にすることがそれに当たります。AIは日付の計算や、法律の細かい条件を間違えることがあります。いつ、誰に、を決めるのは表の計算です。
明日からは、会社の制度の一覧を1枚にまとめる
- 就業規則から、育児と介護の両立の制度を抜き出し、1枚の一覧にする。2025年の改正に合わせて就業規則を直しているか、社会保険労務士に確かめる
- 社員の一覧に、届けてもらっている範囲で、子の生年月日と介護の申し出の欄を足す
- 今年度、説明と意向の確認が要る社員を書き出す
- いちばん時期の近い社員について、会社で契約した、入力をAIの学習に使わないプランに制度の一覧を渡し、上の見本の指示で説明資料を下書きさせる
- 中身を確かめ、面談の日を決めて渡す
本格的にやるなら、毎月の一覧と面談の記録を仕組みにする
一覧ができたら、次の形に育てます。
- 毎月1日に、対象の社員の一覧を出す。 説明と意向の確認がまだの社員を、計算で並べ、担当者と社長に届けます。作り方と費用は、子育てと介護の説明を漏らさない。対象の社員と説明資料が毎月1日に届く仕組みで説明しています
- 面談の記録を残す。 面談のメモから、記録と次にすることをAIに下書きさせ、本人の希望と一緒に残します
- 仕事の分担を早めに考える。 制度を使う予定が分かったら、休みや短い時間の勤務に入る前に、引き継ぎの準備を始めます。引き継ぎの考え方は、社員が休んでも仕事が止まらない会社にする。休む前の引き継ぎをAIで5分にで説明しています
- 介護の前の情報提供を一斉に行う。 対象の年齢の社員に、制度の一覧をもとにした案内を、年に1回まとめて届けます
制度を使えるかの判断と、面談はAIに任せない
- 制度を使えるかの判断は人がする。 法律の細かい条件や、就業規則の解釈は、社会保険労務士や厚生労働省の資料で確かめます
- 面談は人がする。 本人の事情や気持ちを聞くのは、社長か担当者です。AIは、聞くことの準備と記録の下書きまでにとどめます
- 給付金の金額や条件は原本で確かめる。 雇用保険の給付などの条件は、ハローワークや厚生労働省の最新の案内で確かめます
- 社員の家族の情報に気をつける。 子の生年月日や家族の介護の状況は、とても大事な個人の情報です。会社で契約した、入力をAIの学習に使わないプランで扱い、AIに渡すときは名前を伏せ、社内ルールに書いておきます。決め方は社員が安心してAIを使える会社にする、A4で1枚の社内ルールにまとめています
社員の離職を防ぐ考え方は、新人の場合ですが小さな会社の新人の離職を減らす方法。聞きにくい質問はAIが受けるでも説明しています。
まとめ
- 子育てや介護をしている社員は、経験のある社員であることが多い。辞めさせないことが、採用と育成の費用を守る
- 2025年の改正で、介護に直面した社員や子が3歳になる前の社員への、個別の説明と意向の確認が会社の義務になった
- 対象の社員と時期は、社員の一覧から計算で出し、毎月一覧にする
- AIは、就業規則から作った制度の一覧から、社員ごとの説明資料と面談で聞くことを下書きする
- 制度を使えるかの判断と面談は社長と担当者が行い、法律の細かい条件は社会保険労務士と厚生労働省の資料で確かめる