AI×業種

設計事務所のAI活用|打合せの記録と確認申請の書類の手間を減らす

この記事で変わる経営指標

この記事では、小さな建築設計事務所を営む所長に向けて、AIが効く業務を4つ挙げ、どう使うかを説明します。一言でいうと、初回の相談の要望の整理、打合せの記録と決まったことの一覧、確認申請の図書のそろい具合の点検、施主への説明資料の4つで、メモや図書の一覧をもとにAIが下書きと点検をする。構造や法令に適合しているかの判断と、設計そのものの判断は建築士が行うという話です。

AIの価値は、設計をすることではありません。所長とスタッフが図面の外で抱えている、記録と書類と説明の文章の仕事を下書きし、その時間を設計と施主との対話に戻すことです。

経営への効果は、相談を受注につなげ、記録と書類の手戻りを減らす

小さな建築設計事務所でAIが効く4つの業務と経営効果。初回の相談の要望の整理は売上、打合せの記録と決まったことの一覧、確認申請の図書のそろい具合の点検は業務の無駄、施主への説明資料は売上に効く。構造や法令に適合しているかの判断と設計の判断は建築士が行う
小さな建築設計事務所でAIが効く4つの業務と経営効果。初回の相談の要望の整理は売上、打合せの記録と決まったことの一覧、確認申請の図書のそろい具合の点検は業務の無駄、施主への説明資料は売上に効く。構造や法令に適合しているかの判断と設計の判断は建築士が行う

小さな設計事務所では、所長が設計をしながら、施主との打合せ、役所や確認検査機関とのやりとり、工務店との調整まで受け持つことがよくあります。AIが効くのは、この図面の外の文章の仕事です。

業務 今まで AIを入れたあと 経営効果
初回の相談 聞いた要望を所長の頭で覚えておく 相談のメモから要望を1枚に整理 売上
打合せの記録 手書きのメモ、言った言わないが起きる 決まったことと宿題の一覧を下書き 業務の無駄
申請の図書 出す前に所長が一覧と照らす 図書の一覧でそろい具合を点検 業務の無駄
施主への説明 専門用語のまま口頭で説明 やさしい言葉の説明資料を下書き 売上

初回の相談の要望を1枚にまとめて返せば、施主は「話を聞いてもらえた」と感じ、依頼の判断がしやすくなります。打合せの記録がそろえば、設計の変更の経緯が残り、手戻りや行き違いが減ります。

2025年4月の法改正で、確認申請の図書が増えた

契約ウォッチと東急リバブルの解説、国土交通省の資料によると、2025年4月に改正された建築基準法と建築物省エネ法が施行されました。設計事務所の仕事に関わる主な点は次の2つです。

  • 4号特例の縮小。 これまで「4号建築物」として審査の一部が省かれていた木造2階建ての住宅などの区分が見直され、「新2号建築物」と「新3号建築物」になりました。新2号建築物は審査の省略の対象から外れ、確認申請で構造や省エネに関する図書を出す必要があります
  • 省エネ基準への適合の義務化。 原則としてすべての新築の住宅・建築物に、省エネ基準への適合が義務付けられました。建築確認の中で適合しているかが審査され、基準を満たさないと着工できません。増改築した部分も対象です

つまり、小さな木造住宅の設計でも、確認申請に出す図書と、施主への説明が増えています。図書そのものは建築士が作りますが、そろっているかの点検と、施主への説明の文章は、AIに下書きさせられます。自社の案件が新2号・新3号のどちらに当たるか、どの図書が要るかは、国土交通省や確認検査機関の最新の案内で確かめてください。2026年10月時点の情報です。

初回の相談は、メモから要望を1枚に整理する

人がすること(最初に)。 所長が、初回の相談で聞いたことをメモにします。家族の構成、敷地、予算、時期、好きな雰囲気、困っていること。録音する場合は、施主の了解を取ります。

AIに頼むこと。 メモから、施主に返す「ご要望の整理」を1枚に下書きしてもらいます。

下は、初回の相談のメモです。施主に返す「ご要望の整理」を、A4で1枚に下書きしてください。家族の構成、敷地、予算、時期、ご要望(優先の高い順)、まだ決まっていないこと、次回までに当事務所が用意するもの、の順にまとめてください。メモにないことは書かず、設計の提案や金額の見込みは書かないでください。

人がすること(そのあと)。 所長が中身を確かめ、聞き違いがあれば直してから施主に送ります。質問の型と1枚の型、送る期限と施主の返事の扱いまでは、設計事務所の初回相談は要望を1枚で返す|AIで整理し、依頼につなげるで説明しています。

打合せの記録は、決まったことと宿題の一覧にする

人がすること(最初に)。 打合せのメモか録音の書き起こしを用意します。

AIに頼むこと。 メモから、決まったこと、決まっていないこと、宿題(誰が、いつまでに)の一覧を下書きしてもらいます。前回までの一覧も渡し、前に決めたことが変わった項目に印を付けてもらいます。

人がすること(そのあと)。 所長が確かめて施主に送り、確認をもらいます。変更の経緯が一覧に残るので、工事に入ってからの行き違いを減らせます。

申請の図書は、図書の一覧でそろい具合を点検する

人がすること(最初に)。 所長が、建物の区分ごとに確認申請で出す図書の一覧を作ります。確認検査機関の案内をもとに、構造、省エネ、設備などの図書を並べます。

AIに頼むこと。 案件ごとに、用意した図書のファイル名と表紙の一覧を渡し、図書の一覧と照らして、足りない図書や、図面の名前の食い違いに印を付けてもらいます。

人がすること(そのあと)。 所長が足りない図書を作り、中身を確かめてから申請します。図書の中身が法令に適合しているかは、AIに判断させません。

施主への説明は、やさしい言葉で下書きする

省エネ基準への適合の義務化や、断熱の仕様の違いは、施主にとって分かりにくい話です。

AIに頼むこと。 所長が書いた説明の要点(この家の断熱の仕様、省エネ基準に適合させるために選んだこと、費用への影響)を渡し、施主向けにやさしい言葉で1枚の説明資料を下書きしてもらいます。専門用語は言い換え、所長の要点にないことは足さないように指示します。

人がすること(そのあと)。 所長が中身を確かめて、打合せで使います。

構造と法令の判断は、AIに任せない

  • 構造と法令の判断は建築士が行う。 構造の安全、省エネ基準への適合、法令に合っているかは、AIに判断させません
  • 設計そのものは建築士が行う。 AIの下書きは、要望の整理や記録、説明の文章までです
  • 施主の情報を入れすぎない。 施主の名前、住所、敷地の地番などは、会社で契約した、入力をAIの学習に使わないプランで扱うか、記号に置き換えます
  • 録音は了解を取る。 打合せを録音するときは、施主の了解を取ります

文の型と図書の一覧をスキルにし、判断はAIの外に置く

ここまでの使い方は、そのつどAIのチャットに頼む場合です。毎回同じように使うなら、もう一段の工夫をしておくと安定します。作る側から見ると、ここが「AIを使う」と「使いこなす」の差です。

文の型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、「ご要望の整理の型」「打合せの記録の型(決まったこと、決まっていないこと、宿題)」「建物の区分ごとの図書の一覧」「施主向けの言い換えの一覧(専門用語とやさしい言葉)」「書いてはいけないこと(設計の提案、金額の見込み、法令に適合していると言い切ること)」をスキルにします。

判断は、AIの外に置く。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、図書の一覧を所長が確認検査機関の案内で更新すること、送る前に所長が中身を確かめること、法令の判断を建築士が行うことがそれに当たります。

費用は、法人向けプランの月数千円から始められる

最初は、会社で契約した、入力をAIの学習に使わない法人向けのプランで、チャットに貼って使うところから始めます。費用は1人あたり月数千円です。打合せの録音から記録の下書きが自動で届くといった仕組みにする場合は、作る費用が加わります。費用の考え方は中小企業のAI導入費用はいくら?3つの内訳と元が取れるかの計算式にまとめています。

効果は、相談から依頼までの割合と、図書の差し戻しの数で測る

効果を確かめるには、次の3つを始める前と後で比べます。

  • 初回の相談のうち、依頼につながった割合:半年ごとに数えます
  • 打合せの記録を送るまでの日数:打合せの日から数えます
  • 確認申請の図書の不足で、確認検査機関から問い合わせや差し戻しを受けた数:案件ごとに数えます

最初の1か月は、打合せの記録と要望の整理から始める

  1. 次の打合せから、メモをAIに渡して決まったことと宿題の一覧を下書きさせる
  2. 初回の相談のあと、ご要望の整理を1枚にして施主に送る
  3. 建物の区分ごとの図書の一覧を作り、次の申請から点検させる
  4. 2か月目から、施主への説明資料に広げる

施主との打合せの記録を、工事の段階まで続ける方法は、議事録をAIで自動作成|施主との「言った言わない」と追加工事の請求漏れを防ぐで説明しています。

まとめ

  • 設計事務所でAIが効くのは、初回の相談の要望の整理、打合せの記録、確認申請の図書のそろい具合の点検、施主への説明資料の4つ
  • 2025年4月の法改正で、4号特例が縮小し、原則すべての新築に省エネ基準への適合が義務付けられ、確認申請の図書と施主への説明が増えた
  • AIには記録や説明の文章、図書の一覧との照らし合わせを下書きさせる
  • 構造と法令の判断、設計そのものは建築士が行う
  • 最初の1か月は、打合せの記録と要望の整理から始める

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