雇用保険が週10時間から。対象者は表で出し、説明の準備はAIで
この記事で変わる経営指標
この記事では、短い時間で働くパートやアルバイトを雇う会社が、2028年10月の雇用保険の適用拡大に慌てずに備える方法を説明します。一言でいうと、国の資料から、変わる点と自社がすることを、人が1枚の要点にまとめる。新しく対象になる社員は、雇用契約と勤怠の表から計算で出す。AIは、要点をもとに、本人向けの説明と社内の準備の一覧を下書きする。加入の手続きと判断は、担当者と社会保険労務士が行うという話です。
AIの価値は、加入するかどうかを判断することではありません。制度の変わり目に、社員に分かる言葉で早めに伝え、手続きの漏れを防ぎ、短い時間で働く人にとっても安心して働ける職場だと示すことです。
経営への効果は、手続きの漏れを防ぎ、働き手に選ばれること
雇用保険の適用拡大への備えは、AIを使うと次のように変わります。
| 今まで | 対象者は表で、説明はAIで | |
|---|---|---|
| 対象になる社員 | 施行の直前に調べる | 契約と勤怠の表から計算で一覧に |
| 本人への説明 | 給与明細で引かれて初めて気づく | 前もって説明資料を渡す |
| 雇用契約の見直し | 週の時間があいまいなまま | 所定の時間を契約で確かめる |
| 会社の費用 | 加入してから気づく | 対象者の賃金から見通しを計算 |
| 手続き | 慌ててまとめて出す | 予定を表で持ち、社会保険労務士と進める |
経営の効果は2つあります。
- 手続きの漏れを防ぐ。 新しく対象になる社員の加入の手続きが漏れると、あとからさかのぼって手続きをすることになり、本人にも会社にも手間がかかります。対象者を前もって表で出しておけば、漏れを防げます
- 働き手に選ばれる。 雇用保険に入ると、短い時間で働く人も、失業したときや育児で休むときなどに給付を受けられるようになります(社労士ナビ、オフィスステーションの解説による)。早めに分かりやすく伝える会社は、短い時間で働きたい人にとって安心できる勤め先になります
2028年10月から、週10時間以上で雇用保険の対象になる
2024年5月10日に改正雇用保険法が成立し、雇用保険の加入要件のうち、週の所定労働時間の線が20時間以上から10時間以上に下がることになりました。施行は2028年10月1日です(オフィスステーション、社労士ナビ、労務ドットコムの解説による)。
| 項目 | 今 | 2028年10月1日から |
|---|---|---|
| 週の所定労働時間 | 20時間以上 | 10時間以上 |
| 雇用の見込み | 31日以上 | 31日以上(変わらない) |
オフィスステーションの解説は、この改正で雇用保険の被保険者が最大約500万人増える見込みだとしています。社労士ナビの解説も、総務省の労働力調査で、週の就業時間が10時間以上20時間未満の雇用者が2023年に約506万人いたことを紹介しています。社労士ナビによると、短い時間で働く人が不利にならないよう、被保険者期間の数え方などの見直しも行われます。
細かい要件や手続き、保険料の扱いは、厚生労働省とハローワークの最新の資料で確かめ、社会保険労務士に見てもらってください。2026年10月時点の情報です。
小さな会社ほど、週の時間が契約であいまいになっている
雇用保険の適用拡大への備えで、小さな会社が困るのは次の3つです。
- 週の所定の時間が契約に書かれていない。 「シフトによる」とだけ書いた契約では、週10時間以上かどうかが判断しにくくなります
- 対象になる社員をすぐに出せない。 週に1〜2日だけ入る学生や、短い時間のパートが多い会社ほど、一覧を作るのに手間がかかります
- 本人への説明が後回しになる。 給与から保険料が引かれ始めてから、「聞いていない」と言われることがあります
制度の中身は決まっているので、説明の中身は前もって作れます。対象者は表で出せます。ここは、表とAIで手伝いやすい仕事です。
対象者は表で出し、AIは要点から説明と準備の一覧を書く
人がすること(最初に)。 担当者が、厚生労働省とハローワークの資料から、変わる点(週の所定労働時間の線、雇用の見込み、保険料が給与から引かれること、受けられる給付の種類)と、自社がすることを1枚の要点にまとめます。社会保険労務士に確かめてもらいます。
計算で行うこと。 雇用契約と勤怠の表から、社員ごとに、契約上の週の所定の時間と、最近数か月の週の働いた時間を出します。所定の時間が10時間以上20時間未満の人を「新しく対象」、契約があいまいな人や、所定と実際がずれている人を「確かめる」として一覧にします。対象者の賃金から、会社が負担する保険料の見通しも表で計算します。
AIに頼むこと。 要点をもとに、次のものを下書きしてもらいます。
- 本人向けの説明資料:何が変わるか、いつから、保険料が給与から引かれること、受けられる給付の種類を、A4で1枚、分かりやすい言葉で
- 社内の準備の一覧:雇用契約の見直し、対象者の確認、本人への説明、手続きの予定、給与の設定の変更を、時期ごとに並べた一覧
- よくある質問と答え:要点にあることだけで。個人の手取りや給付の額は書かず、「担当者に相談を」と書く
人がすること(そのあと)。 担当者が、説明資料を確かめて渡し、契約があいまいな人とは所定の時間を話し合って契約を見直します。加入の手続きは、担当者と社会保険労務士が行います。
AIへの頼み方と、返ってくる説明資料はこんな形になる
AIに渡す指示(見本。内容は架空です):
下は、社会保険労務士に確かめてもらった、雇用保険の適用拡大の要点です。週に10時間以上20時間未満で働くパートとアルバイトの方に向けた説明資料を、A4で1枚、分かりやすい言葉で下書きしてください。要点に書かれていないことは書かず、個人の手取りや給付の額は「担当者に相談してください」と書いてください。
返ってくる説明資料(見本の一部):
雇用保険の加入のしくみが変わります
- 2028年10月から、週に10時間以上働く方も、雇用保険の加入の対象になります
- 加入すると、保険料が給与から引かれます
- 仕事を離れたときや、育児で休むときなどに、給付を受けられるようになります
- あなたの場合にどうなるかは、担当の○○にお聞きください
担当者は、要点と照らして中身を確かめ、説明会や面談の日を入れて渡します。
要点と対象者の計算はAIの外に置き、説明の型はスキルにする
ここまでの使い方は、そのつどAIのチャットに頼む場合です。施行までの準備を続けるなら、もう一段の工夫をしておくと安定します。作る側から見ると、ここが「AIを使う」と「使いこなす」の差です。
説明資料と準備の一覧の型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、「本人向けの説明資料の型」「社内の準備の一覧の型」「よくある質問の型」「書いてはいけないこと(要点にないこと、個人の手取りや給付の額、加入するかどうかの判断、働く時間を減らすようすすめる言い方)」をスキルにします。
要点と対象者の計算は、AIの外に置く。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、国の資料から人がまとめ、社会保険労務士が確かめた要点だけをAIに渡すこと、雇用契約と勤怠の表から対象者を計算すること、保険料の見通しを給与ソフトや表で計算することがそれに当たります。AIは要件の細かい条件を取り違えることがあるので、判断と計算はさせません。
明日からは、雇用契約の「週の所定の時間」を確かめる
- パートとアルバイトの雇用契約を集め、週の所定の時間が書かれているかを確かめる。契約書から表にそろえる作り方は、パートの契約の週の時間を表にそろえる。読み取りはAI、区分は計算でで説明しています
- 勤怠の表から、社員ごとに最近数か月の週の働いた時間を出し、所定の時間と並べる
- 所定の時間が10時間以上20時間未満の人と、契約があいまいな人を一覧にする
- 厚生労働省とハローワークの資料から要点をまとめ、会社で契約した、入力をAIの学習に使わないプランに渡して、上の見本の指示で説明資料を下書きさせる
- 社会保険労務士に要点と準備の一覧を見てもらい、施行の半年前までに本人への説明を始める予定を立てる
本格的にやるなら、社会保険の加入拡大とまとめて備える
一度できたら、次の形に育てます。
- 社会保険の加入拡大とそろえる。 週20時間以上の社会保険の加入拡大も、2026年10月から段階的に進んでいます。週の時間で区切る点が似ているので、同じ表で備えられます。考え方はパートの社会保険の加入拡大に慌てない。対象者は表で出し、本人への説明はAIでで説明しています
- 働き方の希望を早めに聞く。 週の時間を増やしたい人、今のままがよい人の希望を面談で聞き、シフトの見通しを立てます。進め方はパートの希望を先に聞き、来年のシフトに穴を開けない。面談の準備と記録をAIでで説明しています
- 施行の日を表で持つ。 説明、契約の見直し、手続きの予定を、施行の日から逆算して表に置きます。期限を表で管理する考え方は、許可や資格の期限切れで仕事を止めない。更新の期限は表で持ち、準備はAIでで説明しています
- 単発で働く人の扱いを確かめる。 単発・短時間の働き手を受け入れている会社は、雇用の見込みの期間と週の時間の扱いを、社会保険労務士に確かめます
加入の判断と手続き、個人の手取りの計算はAIに任せない
- 加入の判断と手続きは人が行う。 要件に当たるかの判断と、ハローワークへの届け出は、担当者と社会保険労務士が行います
- 個人の手取りや給付の額は計算しない。 AIに個人の金額を計算させません。必要なら給与ソフトと専門家で計算します
- 働く時間を減らすよう、すすめない。 本人の希望を聞き、本人が決められるように情報を伝えます
- 社員の情報に気をつける。 賃金や働く時間は、大事な個人の情報です。AIに渡すのは要点だけにし、対象者の一覧は社内の表で持ちます。決め方は社員が安心してAIを使える会社にする、A4で1枚の社内ルールにまとめています
まとめ
- 2024年5月に成立した改正雇用保険法で、2028年10月1日から、雇用保険の加入の線が週の所定労働時間20時間以上から10時間以上に下がる。31日以上の雇用の見込みの要件は変わらない
- 新しく対象になる社員は、雇用契約と勤怠の表から計算で出す。契約があいまいな人は、所定の時間を話し合って見直す
- AIは、国の資料から人がまとめ専門家が確かめた要点から、本人向けの説明資料と社内の準備の一覧を下書きする
- 加入の判断と手続き、個人の手取りの計算は、担当者と社会保険労務士が行う
- 社会保険の加入拡大とあわせて、同じ表で備える