旅行会社の旅程案づくり|希望からAIで2案を下書きし、施設は公式で確かめる
この記事で変わる経営指標
この記事では、旅行会社のAI活用|旅程の相談と旅のしおりで次の旅も頼まれるの「旅程の相談は、希望から旅程案を下書きする」を、相談のたびに続けられる手順にして説明します。
一言でいうと、担当が、人数と日数と外せない希望を聞く。AIが、1日ごとの流れの案を2つ作る。担当が、施設と営業時間を公式のページで確かめる。料金と空きを手配の仕組みで入れてから、案を渡す。手配と料金は担当が確かめるという形です。
経営への効果は、相談の場で案を見せ、申込みにつなげること
小さな旅行会社の強みは、お客さま一人ひとりの事情に合わせた旅を組めることです。「足の悪い母と一緒に」「子どもが小学生で」といった希望を聞いて、それに合った旅程を出せれば、大手の予約サイトにはない価値になります。
ただ、旅程案を一から作ると時間がかかります。相談から案を出すまでに何日もかかると、その間にお客さまがほかの会社に決めてしまうこともあります。AIで下書きを早く作り、担当が確かめと手配に時間を使えば、相談の場や翌日に案を見せられ、申込みにつながりやすくなります。
旅行の相談も旅行業で、取扱いの料金を掲示する
e-Gov法令検索で旅行業法を確かめると、第2条第1項第9号で、「旅行に関する相談に応ずる行為」は旅行業の行為の1つとされています。第12条では、旅行業者は、企画旅行以外の旅行業務の取扱いの料金を定め、営業所に見やすいように掲示することになっています。
旅行会社の約款には、旅行相談契約の部があります。日本旅行の約款(2020年8月1日改正)では、旅行相談契約を、相談料金を受け取ることを約して、旅行の計画を作るための助言、旅行の計画の作成、旅行に必要な経費の見積り、旅行地や宿・交通の情報提供などを引き受ける契約としています。同じ約款には、作成した旅行の計画に書いた宿や交通について、実際に手配できることを保証するものではないとも書かれています。
旅程案の作成に相談料金をいただくか、申込みがあれば無料にするかは、会社が決めます。決めた料金は掲示し、相談の前にお客さまに伝えます。2026年10月時点の情報です。
今は、担当が一から旅程を組んでいる
小さな旅行会社では、担当が地図と時刻表と宿のページを見比べながら、旅程を一から組んでいます。経験のある担当は早くても、新しい担当は時間がかかります。
担当によって案の出来がばらつくのも、悩みの1つです。聞く項目と案の型をそろえ、AIに下書きを作らせれば、どの担当でも同じ質の案を早く出せます。
聞き取り、AIが下書きし、確かめて、渡す
1 聞き取る(担当)。 人数と年齢、日数、予算の目安、移動の手段、外せない希望、苦手なことを聞きます。
2 下書きする(AI)。 聞き取った内容から、1日ごとの流れの案を2つ作らせます。
3 確かめる(担当)。 案に出てくる施設と営業時間、移動の時間を、公式のページや時刻表で確かめます。
4 渡す(担当)。 料金と空きを手配の仕組みで確かめて入れてから、案を渡します。
聞く項目は、この6つでそろえる
| 項目 | 中身の例(想定) |
|---|---|
| 人数と年齢 | 大人2人、70代の母1人 |
| 日数と時期 | 2泊3日、11月中旬 |
| 予算の目安 | 1人あたりの上限 |
| 移動の手段 | 電車、レンタカーは使わない |
| 外せない希望 | 温泉、部屋で食事 |
| 苦手なこと | 長い階段、乗り換えの多い移動 |
「苦手なこと」を聞いておくと、案に入れてはいけないことがはっきりします。
AIへの頼み方と、返ってくる案はこうなる
AIに渡す指示(見本):
下は、旅行の相談で聞き取った内容です。1日ごとの流れの旅程案を2つ作ってください。各案に、移動の時間の目安と、休む時間を入れてください。苦手なことに当たる行程は入れないでください。宿や交通の料金、空き、施設の営業時間の断定は書かず、「要確認」としてください。
返ってくる案(見本の一部。内容は架空です):
案1(移動を少なく):1日目 〇〇駅から特急で〇〇温泉へ(約2時間)。宿で休み、夕食は部屋で。2日目 宿の近くの〇〇庭園を散策(平らな道、営業時間は要確認)。 案2(観光を少し多く):1日目 〇〇駅から特急で〇〇へ。〇〇美術館(営業時間は要確認)に寄ってから宿へ。
2つの案を並べると、お客さまは比べながら選べます。「移動を少なく」「観光を少し多く」のように、案ごとの違いを一言で添えます。
確かめるときは、施設と時間と移動を見る
AIは、実在しない施設や、変わった営業時間を書くことがあります。案に出てくる施設は、すべて担当が確かめます。
- 施設が実在し、今も営業しているかを公式のページで確かめる
- 営業時間と休みの日を、旅行の日付と照らす
- 移動の時間を、時刻表や路線の案内で確かめる
- 苦手なことに当たる行程が入っていないかを見る
料金と空きを入れ、取引条件は書面で説明する
確かめた案に、手配の仕組みで調べた料金と空きを入れてから渡します。
- 料金と空きは、AIに書かせない。 手配の仕組みで確かめた数字だけを入れます
- 案は手配を約束するものではないと伝える。 満室などで手配できないことがある旨を添えます
- 申込みになったら、取引条件を書面で説明する
取引条件の書面の点検は、旅行の取引条件説明書面の点検|記載事項の一覧とAIで照らすで、旅のしおりの作り方は、旅のしおりをAIで作る|確定した手配と安全の情報だけで1冊にで説明しています。
案を見せたあとの返事を、次の案に生かす
旅程案を渡したら、お客さまの返事を聞いて直します。返事の中に、次のお客さまにも役立つことが入っています。
- 選ばれた案と、選ばれなかった理由を記録する。 「移動が長い」「食事の時間が早い」などの理由を残します
- 直した点を、聞く項目に足す。 よく出る希望は、最初に聞く項目に加えます
- 季節ごとに、よく使う宿や施設の確かめた結果を残す。 次の相談で確かめる手間が減ります
記録には、お客さまの名前を書かず、旅の条件と返事だけを残します。似た条件の相談が来たとき、前の案と返事をAIに渡せば、最初から合った案に近づけられます。
家族や団体の旅は、参加する人ごとの事情を聞く
家族旅行や小さな団体の旅では、参加する人ごとに事情が違います。
- 体の事情は、本人か代表の方から聞く。 歩ける距離、段差、食事の制限などです
- 事情を案に反映したら、どこに配慮したかを書く。 「この日は移動を短くしています」のように添えます
- 体の事情は慎重に扱う。 AIには「歩く距離は短め」のように条件だけを渡し、病名などは渡しません
型をスキルにし、手配と料金はAIの外に置く
型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、「聞く項目の6つの表」「2案の旅程の型」「書いてはいけないこと(料金、空き、営業時間の断定、お客さまの名前と連絡先)」をスキルにします。
手配と料金は、AIの外に置く。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、施設と時間を担当が公式のページで確かめること、料金と空きを手配の仕組みで入れること、取引条件を書面で説明することがそれに当たります。
費用は、AIの利用料が1回4円ほど
| 費用 | 見込み |
|---|---|
| 旅程案の下書き | 聞き取りと指示(入力2千トークンほど)から2案(出力2千トークンほど)を作ると、Claude Sonnet 5.5の料金(入力100万トークンあたり2ドル、出力10ドル、1ドル150円で計算)で1回4円ほど |
| 法人向けプラン | チャットで使うなら1人あたり月数千円 |
| 担当の時間 | 施設と時間の確かめに1件数十分(想定) |
必要な人は2役で、手配の判断は担当が行う
- 担当:希望を聞き、AIに下書きさせ、施設と時間を確かめ、料金と空きを入れて案を渡す
- 旅行業務取扱管理者:相談料金の掲示と、取引条件の説明が決まりどおりかを確かめる
1か月で型ができ、次の相談から使える見込み
- 1週目:聞く項目の6つの表と、2案の旅程の型を決める
- 2週目:最近の相談の数件でAIに下書きさせ、担当が確かめる
- 3週目:型と書いてはいけないことをスキルにまとめ、相談料金の扱いを決めて掲示する
- 4週目以降:相談のたびに使い、申込みにつながった数を数える
施設を確かめずに案を渡すと失敗する
よくある失敗は次の3つです。
- 閉館した施設が案に入る。 お客さまが現地で困ります
- 料金をAIに書かせる。 実際の料金と違う数字が、お客さまの手元に残ります
- 案を手配の約束のように見せる。 満室で手配できないとき、信頼を失います
まとめ
- 旅行業法で、旅行に関する相談に応じることも旅行業の行為で、取扱いの料金を営業所に掲示する
- 旅行相談契約では、旅行の計画の作成や経費の見積りを引き受けるが、手配できることの保証ではない
- 担当が6つの項目で希望を聞き、AIが1日ごとの流れの案を2つ作る
- 施設と営業時間は担当が公式のページで確かめ、料金と空きは手配の仕組みで入れる
- 申込みになったら、取引条件を書面で説明する