整骨院・接骨院のAI活用|広告の決まりを守り、受付と書類の事務を減らす
この記事では、整骨院・接骨院を営む院長に向けて、AIが効く業務を4つ挙げ、どう使うかを説明します。一言でいうと、予約と問い合わせの返事、ホームページやチラシの広告文の点検、療養費の申請の書類の確認、患者への説明文の4つで、受付表や書ける事項の表をもとにAIが下書きと点検をする。施術の判断と、療養費の対象になるかの判断は院長が行うという話です。
AIの価値は、施術の代わりをすることではありません。院長と受付が毎日くり返している文章の仕事を、決まりに沿った形で下書きし、院長の時間を施術と患者との会話に戻すことです。
経営への効果は、予約を逃さず、広告と書類の手戻りを減らすこと
小さな院では、院長が施術をしながら、予約の電話やメッセージ、ホームページの更新、療養費の申請の書類まで受け持つことがよくあります。AIが効くのは、この施術以外の文章の仕事です。
| 業務 | 今まで | AIを入れたあと | 経営効果 |
|---|---|---|---|
| 予約と問い合わせの返事 | 施術の合間に返し、夜にまとめて返す | 受付表と空き枠から返事を下書き | 売上 |
| 広告文の点検 | 書いてよいか分からないまま載せる | 書ける事項の表で下書きを点検 | 違反を防ぐ |
| 療養費の申請の書類 | 月末にまとめて見直す | 項目の表で抜けを洗い出す | 業務の無駄 |
| 患者への説明文 | その場で口頭だけ | 院長の指示から説明の紙を下書き | 売上 |
予約の返事が早くなれば、ほかの院に流れる患者を減らせます。広告と書類は、直しや問い合わせのやり直しを減らせます。説明の紙があれば、患者が家で読み返せ、院への信頼につながります。
整骨院の広告は、書けることが法律で決まっている
整骨院・接骨院の広告は、柔道整復師法第24条で、書けることが決まっています。福岡市と鹿児島市の案内によると、書けるのは次の事項だけで、それ以外は文書その他どんな方法でも広告できません。
- 柔道整復師であることと、氏名・住所
- 施術所の名称、電話番号、所在地
- 施術日、施術時間
- 厚生労働大臣が指定する事項:ほねつぎ(又は接骨)、施術所の届出をした旨、医療保険の療養費の支給申請ができる旨(脱臼・骨折は医師の同意が必要な旨を示す場合に限る)、予約に基づく施術、休日・夜間の施術、出張による施術、駐車設備
書ける事項であっても、柔道整復師の技能、施術の方法、経歴にわたる内容は書けません。厚生労働省は2025年2月18日に「あはき・柔整広告ガイドライン」を公表しています。施術所の名前に「医院」など病院や診療所と紛らわしい名前を付けることも、医療法第3条で禁じられています。
ホームページの扱いは少し違います。ガイドラインによると、院のホームページは、見る人が自分で探して見に来るものなので、原則として法律の広告には当たりません。ただし、バナー広告、検索結果に出す有料の広告(リスティング広告)、施術所の紹介サイト、公開されたSNSの書き込みなどは、条件を満たすと広告として扱われ、そこからつながるホームページも広告と一体として扱われます。広告に当たらないホームページでも、「絶対に治る」のような虚偽の内容、「No.1」のような他の院より優れているとする内容、「〇%の人が効果を実感」のような誇大な内容は、載せるべきでないとされています。
この決まりがあるので、AIにチラシやホームページの文を「魅力的に」書かせると、効果や技術をうたう文が混ざりやすくなります。だからこそ、チラシや看板、ネットの広告は書ける事項の表で、ホームページはガイドラインの載せるべきでない事項の表で点検する使い方が向いています。具体的な表現が当てはまるかは、施術所のある地域の保健所に確かめてください。2026年10月時点の情報です。
予約と問い合わせの返事は、受付表と空き枠から下書きする
人がすること(最初に)。 受付の担当者が、予約の受付表(施術日、時間、空き枠)と、よく聞かれることの答え(駐車場、持ち物、初めての人の流れ)を表にまとめておきます。
AIに頼むこと。 メッセージやメールで届いた問い合わせと、受付表の空き枠を渡し、返事を下書きしてもらいます。
下は、当院への問い合わせと、今週の空き枠の表と、よくある質問の答えの表です。返事を下書きしてください。空き枠は表にある時間だけを示し、症状が良くなるといった約束や、施術の内容の説明は書かないでください。症状の相談には「来院の際に柔道整復師がお話を伺います」と書いてください。
人がすること(そのあと)。 受付が時間を表と照らして送ります。症状の重い相談や、ほかの医療機関を勧めるべき内容は、院長に回します。
広告文の点検は、書ける事項の表で行う
人がすること(最初に)。 院長が、上の書ける事項を1枚の表にします。院の名前、住所、電話番号、施術時間、休日・夜間の施術の有無、駐車場など、自院で書く中身も書き込みます。
AIに頼むこと。 チラシ、看板、ネットの広告などの下書きと、その表を渡し、書ける事項から外れている文を洗い出してもらいます。ホームページは、ガイドラインの載せるべきでない事項(虚偽、他の院との比較、誇大な表現)の表で、同じように点検します。
下は、当院のチラシの文と、柔道整復師法第24条と告示で書ける事項の表です。文を1文ずつ見て、表の事項に当てはまらない文、技能や施術の方法や経歴にわたる文、効果をうたう文に印を付け、理由を書いてください。直した文は提案しないでください。
返ってくる点検(見本。内容は架空です):
- 「骨盤矯正で姿勢改善」…施術の方法と効果にわたるため、書ける事項から外れる可能性があります
- 「院長は施術歴15年」…経歴にわたるため、書ける事項から外れる可能性があります
- 「土曜日も19時まで受付」…施術日・施術時間に当てはまります
人がすること(そのあと)。 院長が印の付いた文を消すか直し、迷う表現は保健所に確かめてから載せます。媒体の分け方と2つの表の作り方、毎月の見直しまでは、接骨院の広告、どこまで書ける?|AIで点検する2つの表の作り方で説明しています。
療養費の申請の書類は、項目の表で抜けを洗い出す
療養費の受領委任を扱う院では、申請の書類の作成と確認が毎月の大きな事務です。東北厚生局と四国厚生支局の案内によると、2024年10月1日から、患者への明細書の無償交付が義務になりました(明細書を出す機能のあるレセプトコンピュータを置いていない施術所は、義務の対象外です)。東北厚生局の案内では、2024年4月から、受領委任を扱う施術所でオンライン資格確認の運用も始まっています。
人がすること(最初に)。 院長が、自院で申請の前に確かめる項目(負傷の日と原因の記載、施術の部位と日数、患者の署名、明細書を渡したかなど)を表にします。項目は、保険者や厚生局の最新の通知に合わせます。
AIに頼むこと。 月末に、申請の一覧(患者の名前を番号に置き換えたもの)と項目の表を渡し、項目が空いている行を洗い出してもらいます。
人がすること(そのあと)。 受付が空いている項目を施術録と照らして埋め、院長が確かめてから出します。負傷の原因などの中身を、AIが書き足すことはさせません。
患者への説明文は、院長の指示から下書きする
人がすること(最初に)。 院長が、施術のあとに患者に伝えていること(家での過ごし方、次に来る目安、療養費の仕組み、明細書の見方)を箇条書きにします。
AIに頼むこと。 その箇条書きから、患者に渡すA4で1枚の説明の紙を、やさしい言葉で下書きしてもらいます。院長の箇条書きにないことを足さないこと、効果を約束しないことを指示に入れます。
人がすること(そのあと)。 院長が中身を確かめて、院内で渡します。ガイドラインでは、院内で患者に渡す紙は広告に当たらないとされています。同じ紙を院の外で配ると広告に当たることがあるので、外で配るときは保健所に確かめます。
施術と療養費の対象かどうかの判断は、AIに任せない
- 施術の判断は院長が行う。 症状の見立て、施術の内容、ほかの医療機関に行くべきかは、AIに聞いて決めません
- 療養費の対象かどうかは院長が判断する。 負傷の原因や、慢性の症状かどうかといった判断を、AIの下書きに任せません
- 患者の健康の情報を入れない。 名前と症状をつなげた形でAIに入れず、番号に置き換えます。会社で契約した、入力をAIの学習に使わないプランを使います
- 広告の最終判断は保健所に確かめる。 AIの点検は、気づくための下書きです
文の型と書ける事項をスキルにし、空き枠と書類は表で持つ
ここまでの使い方は、そのつどAIのチャットに頼む場合です。毎日同じように使うなら、もう一段の工夫をしておくと安定します。作る側から見ると、ここが「AIを使う」と「使いこなす」の差です。
文の型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、「予約の返事の型」「広告の書ける事項の表と点検の手順」「申請の書類の確認の項目」「説明の紙の型」「書いてはいけないこと(効果の約束、技能・施術の方法・経歴の宣伝、表にない空き枠、症状の見立て)」をスキルにします。
空き枠と書類は、AIの外で持つ。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、空き枠を受付表で持つこと、申請の書類の項目を表で持って空きに印を付けること、広告を載せる前に院長が確かめることがそれに当たります。AIは時間を写し間違えることがあるので、送る前に受付表と照らします。
費用は、法人向けプランの月数千円から始められる
最初は、会社で契約した、入力をAIの学習に使わない法人向けのプランで、チャットに貼って使うところから始めます。費用は1人あたり月数千円です。予約のフォームから返事の下書きが届くといった仕組みにする場合は、作る費用が加わります。費用の考え方は中小企業のAI導入費用はいくら?3つの内訳と元が取れるかの計算式にまとめています。
効果は、返事の速さと、広告と書類の直しの数で測る
効果を確かめるには、次の3つを始める前と後で比べます。
- 問い合わせから返事までの時間:受けた時刻から数えます
- 広告や書類で、出したあとに直した数:月ごとに数えます
- 初めて来た患者のうち、2回目の予約を入れた人の数:月ごとに数えます
最初の1か月は、予約の返事と広告の点検から始める
- 受付表と、よくある質問の答えを表にする
- 上の見本の指示で、予約と問い合わせの返事を下書きさせる
- 書ける事項の表と載せるべきでない事項の表を作り、今のチラシとホームページを点検させる
- 印が付いた文を院長が直し、迷う表現は保健所に確かめる
- 2か月目から、申請の書類の確認と、説明の紙に広げる
口コミへの返信の続け方は、口コミは増やす前に返す|選ばれる店になる口コミ返信の続け方にまとめています。返信の文も、書ける事項から外れないよう同じ表で点検します。
まとめ
- 整骨院・接骨院でAIが効くのは、予約の返事、広告文の点検、療養費の申請の書類の確認、患者への説明文の4つ
- チラシや看板、ネットの広告は柔道整復師法第24条で書けることが決まっており、技能・施術の方法・経歴にわたる内容は書けない。ホームページも虚偽・比較・誇大な内容は載せるべきでないとされる。AIの下書きは表で点検する
- 2024年10月から明細書の無償交付が義務になり、書類の確認は項目の表で抜けを洗い出す
- 施術と療養費の対象かどうかの判断は院長が行い、患者の健康の情報はAIに入れない
- 最初の1か月は、予約の返事と広告の点検から始める