AI×業種

小さな賃貸管理会社の事務をAIで減らす。入居者の対応とオーナー報告を速く

この記事で変わる経営指標

この記事では、小さな賃貸管理会社がAIを使うと、どの業務がどう変わるかを説明します。一言でいうと、入居者の問い合わせと修繕の手配、オーナーへの定期報告、退去の報告、空室の募集の文の4つにAIを入れ、書きものと連絡の手間を減らす。原状回復の費用を誰が負担するか、契約や法律の判断は、担当者と社長が決まりと専門家で確かめて行うという話です。

AIの価値は、管理の判断を代わりにすることではありません。入居者とオーナーへの返事と報告を早く丁寧に出し、「この会社に任せていてよかった」と思ってもらえる時間を増やすことです。

経営への効果は、入居者とオーナーに選ばれ続けること

小さな賃貸管理会社の仕事は、AIを入れると次のように変わります。

業務 今まで AIを入れたあと 効く経営効果
入居者の対応 電話とメールに追われ、返事が遅れる 問い合わせから返事と修繕の手配の下書き 売上(解約を防ぐ)
オーナーへの報告 月末に台帳と記録を集めて書く 台帳と対応の記録から報告の下書き 業務の無駄
退去の報告 立会いの写真とメモを夜に整理する 写真とメモから報告と説明の下書き 業務の無駄
空室の募集 物件の紹介文を一から書く 物件の情報から紹介文の下書き 売上(空室を早く埋める)
小さな賃貸管理会社でAIが効く4つの業務と経営効果。入居者の問い合わせと修繕の手配は売上、オーナーへの定期報告と退去の報告は業務の無駄、空室の募集の文は売上に効く。原状回復の費用負担の判断は後回し
小さな賃貸管理会社でAIが効く4つの業務と経営効果。入居者の問い合わせと修繕の手配は売上、オーナーへの定期報告と退去の報告は業務の無駄、空室の募集の文は売上に効く。原状回復の費用負担の判断は後回し

効果の大きさは、前提を置いて考えます。仮に、担当者が入居者への返事、オーナーへの報告、退去の報告、募集の文に合わせて1日2時間かけていたものが、下書きを確かめて直す1時間になれば、1日1時間、月20日で月20時間が浮きます。1時間あたりの人件費を仮に2,500円とすると、月5万円分です。

ただ、大きいのは時間ではありません。入居者の困りごとに早く応えれば、住み続けてもらいやすくなります。オーナーへの報告が分かりやすく決まった時期に届けば、管理を任せ続けてもらいやすくなります。管理会社の売上は、管理している戸数と、入居が続くことで成り立っています。

200戸以上は登録が必要で、オーナーへの定期報告もいる

国土交通省によると、賃貸住宅管理業法に基づき、管理戸数(自己所有の物件を除く)が200戸以上の賃貸住宅管理業者は、登録が必要です。国土交通省の制度解説では、登録した業者の義務として、営業所や事務所ごとに業務管理者を1名以上置くこと、業務の実施状況などを管理を任されたオーナーに定期的に報告することなどが挙げられています(法律事務所の解説も同じ内容を説明しています)。

つまり、オーナーへの報告は、よいサービスであるだけでなく、決まりとして求められている仕事です。管理する戸数が増えるほど、報告の書きものも増えます。報告の中身と時期は、決まりの原本で確かめたうえで、書く手間をAIで減らします。

入居者の問い合わせには、返事と修繕の手配をAIが下書きする

AIに頼むこと。 入居者からのメールやメッセージ、電話のあとのメモ(「台所の水の出が悪い」「隣の部屋の音がうるさい」)から、入居者への返事と、修繕の業者への依頼の下書きを作ってもらいます。返事には、確かめたいこと(いつから、どの場所、写真があれば)と、次に何をするかを書きます。

人がすること。 担当者が、内容と言い回しを確かめて送ります。修繕を誰の費用で行うか、業者に頼むかは、契約と決まりで確かめて担当者が決めます。騒音や近隣のトラブルは、担当者が自分で対応します。

何が変わるか。 入居者への返事が早くなり、「対応してもらえている」と感じてもらえます。業者への依頼も、必要なことがそろった形で出せます。

修理の依頼に候補日を返す考え方は、工事店の例ですが修理の依頼に当日中に候補日を返す。問い合わせからAIが返事を下書きで説明しています。

オーナーへの定期報告は、台帳と対応の記録からAIが下書きする

計算で行うこと。 物件ごとの入居と空室、家賃の入金と滞納、修繕にかかった金額は、管理の台帳から表計算で出します。

AIに頼むこと。 計算した数字の表と、その月の対応の記録(入居者の問い合わせ、修繕、退去、募集)から、オーナーごとの報告の文章を下書きしてもらいます。数字は表から差し込み、AIには書かせません。

人がすること。 担当者が、内容と数字を確かめて送ります。

何が変わるか。 月末に台帳と記録を集めて書いていた報告が、確かめて直す仕事になります。報告の書き方がそろい、オーナーが読みやすくなります。

台帳と記録を集めて報告書を下書きする仕組みの作り方は、オーナー報告を月末の夜に書かない。台帳と対応の記録からAIが下書きで説明しています。毎月の便りで取引先とのつながりを保つ考え方は、毎月の便りで注文を思い出してもらう。取引先ごとの一言をAIで書く方法で説明しています。

退去の報告は、立会いの写真とメモからAIが下書きする

AIに頼むこと。 退去の立会いで撮った写真と、担当者が話したメモ(「洋室の壁紙に家具の跡。台所の床に焦げ跡1か所」)から、オーナーへの報告と、入居者への説明の下書きを作ってもらいます。

人がすること。 原状回復の費用を、入居者とオーナーのどちらが負担するかは、契約と国のガイドラインを確かめて、担当者と社長が決めます。金額は見積から入れます。

何が変わるか。 夜に整理していた立会いの記録が、写真とメモから報告の形になります。入居者への説明がそろい、行き違いが減ります。

写真とメモから報告を作る考え方は、工務店の例ですが現場写真からAIが施主への報告を書き、監督の残業を減らす方法で説明しています。

空室の募集の文は、物件の情報からAIが下書きする

AIに頼むこと。 物件の情報(間取り、広さ、駅からの距離、設備、周りの環境)と、担当者が知っている物件の良いところのメモから、募集の紹介文を下書きしてもらいます。

人がすること。 担当者が、内容が本当かを確かめます。駅からの徒歩の時間や広さなど、広告の決まりがある表示は、決まりに沿って人が確かめます。

何が変わるか。 紹介文を一から書く時間が減り、空室が出たときに早く募集を始められます。

物件の紹介文の書き方は、仲介の例ですが小さな不動産会社の反響を逃さない。AIで物件紹介文と返事を速くする方法で説明しています。

原状回復の費用負担と契約の判断は、AIに任せない

AIで何でもできそうに見えても、次のことはAIに任せません。

  • 原状回復の費用を誰が負担するか。 契約の中身と国のガイドラインを確かめ、担当者と社長が決めます。AIの答えをそのまま入居者やオーナーに伝えません
  • 契約や法律の判断。 契約の解除、家賃の滞納への対応、近隣のトラブルなどは、決まりの原本と専門家で確かめます
  • 広告の表示の正しさ。 徒歩の時間や広さなどは、決まりに沿って人が確かめます

まずは、間違えても人がすぐに気づけて直せる、返事と報告と紹介文の下書きから始めます。

物件の情報と報告の型をスキルにし、数字は台帳から入れる

ここまでの使い方は、そのつどAIのチャットに頼む場合です。毎日同じように使うなら、もう一段の工夫をしておくと安定します。作る側から見ると、ここが「AIを使う」と「使いこなす」の差です。

物件と報告の型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、「物件ごとの基本の情報」「オーナー報告の型」「入居者への返事の型」「書いてはいけないこと(費用負担の決めつけ、契約の解釈、近隣の個人の情報)」をスキルにします。

数字と名前は、AIの外で持つ。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、入居と空室、家賃の入金と滞納、修繕の金額を台帳から表計算で出すこと、それを報告の決まった場所に差し込むこと、報告に台帳と違う数字が混ざっていないかを確かめることがそれに当たります。

費用は、法人向けプランの月数千円から始められる

最初は、会社で契約した、入力をAIの学習に使わない法人向けのプランで、チャットに貼って使うところから始めます。費用は1人あたり月数千円です。オーナー報告を台帳から自動で下書きする、入居者の問い合わせを1か所に集めて返事を下書きするといった仕組みにする場合は、作る費用が加わります。費用の考え方はAI導入にいくらかかる?月数千円から試せて、元が取れるかも先に分かるにまとめています。

効果は、返事の速さとオーナーの解約の数で測る

効果を確かめるには、次の3つを始める前と後で比べます。

  • 入居者の問い合わせに返事をするまでの時間:送った時刻から数えます
  • オーナー報告にかかる時間:月末の作業の時間を記録します
  • 入居者の退去の数と、オーナーの管理の解約の数:1年ほどで比べます

最初の1か月は、入居者への返事とオーナー報告を1棟で試す

  1. 担当者1人が受け持つ1棟について、入居者の問い合わせへの返事を、会社で契約したAIのチャットで下書きする
  2. 担当者が確かめて送り、返事までの時間を記録する
  3. その棟のオーナーへの月の報告を、台帳から出した数字の表と対応の記録で下書きする
  4. 1か月後、返事と報告の型を見直し、ほかの棟にも広げる

入居者とオーナーの情報は、大事な個人の情報です。社内ルールの決め方は社員が安心してAIを使える会社にする、A4で1枚の社内ルールにまとめています。

まとめ

  • 管理戸数200戸以上の賃貸住宅管理業者は登録が必要で、オーナーへの定期報告が求められる(国土交通省)
  • 入居者の問い合わせと修繕の手配、オーナーへの定期報告、退去の報告、空室の募集の文の4つにAIを入れる
  • 原状回復の費用負担、契約や法律の判断、広告の表示の正しさは、AIに任せず人が決まりと専門家で確かめる
  • 報告の数字は台帳から表計算で出し、AIには書かせない
  • 最初の1か月は、1棟で入居者への返事とオーナー報告を試す

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