2026年10月に変わった4つの決まり。小さな会社の準備は表とAIで
この記事で変わる経営指標
この記事では、2026年10月前後に変わった、中小企業の事務にかかわる4つの決まりをまとめます。一言でいうと、カスハラ対策と就活生などへのセクハラ対策は、すべての事業主の義務になった。インボイスの経過措置は80%から70%に下がった。社会保険の加入の賃金要件は撤廃の時期を迎えた。どれも、対象や期限や金額は表で持ち、方針や説明や相談の文はAIに下書きさせ、判断は人と専門家で行うという話です。
AIの価値は、法律を判断することではありません。決まりが変わるたびに必要になる書きものを早くそろえ、社員と取引先に分かりやすく伝え、社長が判断に使う時間をつくることです。
経営への効果は、制度の変わり目で慌てないこと
4つの決まりと、会社がすることは次のとおりです。
| 変わった決まり | 会社がすること | 表で持つこと | AIに下書きさせること |
|---|---|---|---|
| カスハラ対策の義務化 | 方針と相談の体制、対応の手順を整える | 起きたことの記録 | 方針、マニュアル、社員への説明 |
| 就活生などへのセクハラ対策の義務化 | 面接官の決まりと相談の窓口を整える | 面接の予定と面接官 | 面接官の決まり、確認の問題 |
| インボイスの経過措置が70%に | 免税の取引先の影響額を出し、取引条件を話し合う | 取引先ごとの影響額 | 相談の文、社内の説明 |
| 社会保険の賃金要件の撤廃 | 新しく対象になるパートを出し、本人に説明する | 対象者と週の時間 | 本人向けの説明資料 |
経営の効果は2つあります。
- 社員を守り、採用で選ばれる。 カスハラや就活の場でのセクハラから人を守る会社は、働く人にも、応募する人にも選ばれやすくなります
- お金の流れを見通す。 インボイスの経過措置や社会保険の加入拡大は、会社の負担に直結します。対象と金額を表で出しておけば、慌てずに手を打てます
カスハラ対策が、すべての事業主の義務になった
2026年10月1日から、カスタマーハラスメント(客などからの、度を越えた言動)を防ぐための措置が、すべての事業主の義務になりました(山口労働局、freeeの解説、労務ドットコムによる)。厚生労働省は、事業主が講じるべき措置を指針で示しています。柱は、方針をはっきりさせて社員に知らせること、相談に応じる体制を整えること、起きたときに早く適切に対応することです。
表とAIの分担。 起きたことの記録は表で持ち、AIは方針とマニュアルの下書き、社員への説明を書きます。対応の判断は、責任者が行います。進め方はクレームには早く応え、カスハラからは社員を守る。義務化とAIの使い方と、カスハラ対策の方針とマニュアルを自社の言葉で作る。指針の例からAIが下書きで説明しています。
就活生などへのセクハラ対策も、義務になった
同じ2026年10月1日から、男女雇用機会均等法の改正により、就活生などの求職者へのセクハラを防ぐ措置も、事業主の義務になりました(労務ドットコム、かいけつ!人事労務による)。面接やインターンシップ、会社説明会など、採用の場が対象になります。
表とAIの分担。 面接の予定と面接官は表で持ち、AIは面接官に渡す決まりと、確認の問題を下書きします。相談への対応と処分の判断は、人が行います。進め方は就活生へのセクハラを防ぐ。面接官の決まりと相談の窓口をAIで整えるで説明しています。
インボイスの経過措置が、80%から70%に下がった
インボイスの登録をしていない免税の取引先からの仕入れについて、消費税の控除ができる割合は、2026年10月1日から80%から70%に下がりました。2028年10月1日からは50%、2030年10月1日からは30%に下がります(弥生、山田&パートナーズの解説による)。
表とAIの分担。 免税の取引先ごとの1年分の支払額と、割合ごとの影響額は表で計算します。AIは、取引先への相談の文と、社長が読む社内の説明を下書きします。取引条件は、相手と十分に話し合って決めます。進め方は免税の外注先との取引を見直す。影響額は表で、相談の文はAIでで説明しています。
社会保険の加入の賃金要件が、撤廃の時期を迎えた
パートやアルバイトの社会保険(健康保険と厚生年金)の加入の要件のうち、月の賃金が8.8万円以上という賃金要件(いわゆる106万円の壁)は、2026年10月に撤廃するとされてきました(厚生労働省の資料、オフィスステーション、マネーフォワードの解説による)。会社の人数の要件も、2027年10月から2035年10月にかけて段階的になくなります。
表とAIの分担。 雇用契約と勤怠の表から、新しく対象になる人を計算で出します。AIは、本人向けの説明資料を下書きします。加入の判断と手続きは、担当者と社会保険労務士が行います。進め方はパートの社会保険の加入拡大に慌てない。対象者は表で出し、本人への説明はAIでで説明しています。
細かい中身と時期は、それぞれ厚生労働省、国税庁、日本年金機構の最新の資料で確かめてください。2026年10月時点の情報です。
小さな会社ほど、変わったことに後から気づく
制度の変わり目で、小さな会社が困るのは次の3つです。
- 変わったことを知らない。 総務の専任がいないと、いつ何が変わったかを追いかける人がいません
- 何をすればよいか分からない。 変わったことは知っていても、自社が何を、いつまでにすればよいかが分かりません
- 書きものが重なる。 方針、マニュアル、社員への説明、取引先への相談と、同じ時期に書きものが重なります
変わったことの一覧と、自社がすることは、表で持てます。書きものは、AIに下書きさせられます。
変わったことは表で持ち、書きものはAIに下書きさせる
人がすること(最初に)。 社長か総務の担当者が、上の4つの決まりについて、自社にかかわるかどうかを確かめます。顧問の社会保険労務士や税理士に、自社がすることを確かめてもらいます。
計算で行うこと。 表に、決まりごとに、自社がすること、担当、期限、終わったかどうかを入れます。インボイスの影響額と、社会保険の新しい対象者は、それぞれの表で計算します。
AIに頼むこと。 決まりごとに、専門家が確かめた要点をもとに、次のものを下書きしてもらいます。
- 方針やマニュアル、面接官の決まり
- 社員やパートに向けた説明
- 取引先への相談の文
人がすること(そのあと)。 担当者が、下書きを要点と照らして確かめてから配ります。判断が必要なことは、社長と専門家が決めます。
AIへの頼み方と、返ってくる一覧はこんな形になる
AIに渡す指示(見本。内容は架空です):
下は、2026年10月前後に変わった4つの決まりの要点と、当社の状況(社員30人、パート12人、免税の外注先5社、店舗で接客あり)です。当社がすることを、決まりごとに3つまで、期限の目安とあわせて一覧にしてください。要点に書かれていないことは書かず、法律の判断はせず、「社会保険労務士に確認」「税理士に確認」と書いてください。
返ってくる一覧(見本の一部):
カスハラ対策
- 方針を決めて社員に知らせる(社会保険労務士に確認)
- 相談の窓口を決める
- 店舗での対応の手順を1枚にまとめる
インボイスの経過措置
- 免税の外注先5社の1年分の支払額を出す
- 70%のときの影響額を表で計算する(税理士に確認)
- 影響額の大きい取引先から話し合いの予定を立てる
担当者は、一覧を表に写し、担当と期限を入れます。
要点の型をスキルにし、判断と期限はAIの外に置く
ここまでの使い方は、そのつどAIのチャットに頼む場合です。制度が変わるたびに同じように使うなら、もう一段の工夫をしておくと安定します。作る側から見ると、ここが「AIを使う」と「使いこなす」の差です。
要点と書きものの型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、「決まりの要点の型(何が、いつから、誰に、会社がすること)」「社員への説明の型」「取引先への相談の型」「書いてはいけないこと(要点にないこと、法律の判断、表にない金額や人数)」をスキルにします。
判断と期限は、AIの外に置く。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、変わったことと自社がすることを表で持つこと、影響額と対象者を表で計算すること、専門家が確かめた要点だけをAIに渡すことがそれに当たります。
明日からは、4つの決まりのうち自社にかかわるものに印を付ける
- 上の4つの決まりについて、自社にかかわるかを確かめ、表に印を付ける
- 印を付けた決まりごとに、自社がすること、担当、期限を表に入れる
- 顧問の社会保険労務士や税理士に、表を見てもらう
- 会社で契約した、入力をAIの学習に使わないプランに要点を渡し、上の見本の指示ですることの一覧を下書きさせる
- 期限の近いものから、それぞれの記事の進め方で始める
本格的にやるなら、制度の変わり目を毎月の表で追う
一度できたら、次の形に育てます。
- これから変わる決まりも表に入れる。 2027年10月からの社会保険の人数の要件の引き下げ、2028年4月からの小さな事業場のストレスチェックの義務化、2028年10月からの雇用保険の週10時間への拡大など、先の予定も表に入れておきます。考え方は雇用保険が週10時間から。対象者は表で出し、説明の準備はAIでや50人未満もストレスチェックが義務に。準備の書類と職場の改善をAIでで説明しています
- 期限を表で持つ。 許可や資格の更新と同じように、制度の期限も表で持ちます。考え方は許可や資格の期限切れで仕事を止めない。更新の期限は表で持ち、準備はAIでで説明しています
法律の判断と、取引条件の決定はAIに任せない
- 法律の判断は専門家と。 自社にかかわるか、何をすれば足りるかは、社会保険労務士や税理士に確かめます
- 金額と人数は表で計算する。 影響額や対象者を、AIに計算させません
- 取引条件は相手と話し合って決める。 一方的に決めたと受け取られない進め方をとります
- 社員と取引先の情報に気をつける。 賃金や取引の情報は、会社で契約した、入力をAIの学習に使わないプランで扱います。決め方は社員が安心してAIを使える会社にする、A4で1枚の社内ルールにまとめています
まとめ
- 2026年10月1日から、カスハラ対策と、就活生などへのセクハラ対策が、すべての事業主の義務になった
- インボイスの経過措置で、免税の取引先からの仕入れの控除できる割合が、2026年10月1日から70%に下がった
- 社会保険の加入の賃金要件(106万円の壁)は、2026年10月に撤廃するとされてきた。人数の要件も2027年10月から段階的に下がる
- 変わったことと自社がすることは表で持ち、影響額と対象者は表で計算し、書きものはAIに下書きさせる
- 法律の判断と取引条件は、AIに任せず人と専門家で決める